海うそ

海うそ
あらすじ・内容
昭和の初め,南九州の離島(遅島)に,人文地理学の研究者,秋野が調査にやって来た.かつて修験道の霊山があった,山がちで,雪すら降るその島は,自然が豊かで変化に富み,彼は惹きつけられて行く.50年後,不思議な縁に導かれ,秋野は再び島を訪れる──.歩き続けること,見つめ続けることによってしか,姿を現さない真実がある.著者渾身の書き下ろし小説.

あらすじ・内容をもっと見る
200ページ
2093登録

海うそはこんな本です

海うそを読んだ人はこんな本も読んでいます

夜行
5059登録

海うその感想・レビュー(1157)

まだ4冊ほどしか読んでいないが、「梨木ワールド」と言われるのが分かります。呼吸すら忘れたかのような静謐。美しい文章。もっと心に余裕があるときに、世界に浸って読みたい。今回は勿体ないことをした。いつかまた。
★19 - コメント(0) - 2月8日

遅島の自然とそこに住む人々の営みが神秘的に描かれていて、読んでいて心が浄化されるかんじ。
★4 - コメント(0) - 2月5日

さっきまで見ていた夢の詳細を思い出そうと、その記憶を取り逃がすまいと必死になる朝があるーーそういう焦りや寂しさ、喪失感がある。人文地理学を研究する秋野は、調査のためタツノオトシゴのような形をした遅島を訪れる。影吹、龍目蓋、森肩、紫雲山、波音…。歴史の染み込んだ名が其処此処に残る土地の記録には、稀有な植物の匂いが漂う。場所には、誰かが生きた物語が在る。人はそこに在る確かな過去に、思いを馳せる。時間は、降り積もるものだ。夢を思い出せなくとも、目には眩しい陽の光が映る。その瞬間から、また、新しい日が始まるのだ。
★193 - コメント(3) - 2月2日

☆☆☆☆
- コメント(0) - 1月29日

ゆっくりじっくり読んだ。民間宗教を排除するための神仏分離。何百年も島の人が大切にしていたものが一瞬にして滅ぼされる。でも島々には痕跡が残っている。民家の形状も興味深いし、なぞの防塁も。オニソテツも。全てが繋がりがある。色即是空
★8 - コメント(0) - 1月26日

なにかが起きそうで、特に恐ろしいことは起こらず、しかしなんか目が離せない感じで一気読み。重いテーマなのかもしれない。廃仏毀釈について、あまり知識はないが、興味深い。しかし(私にとっては)残念ながら、気楽に読める作品ではなかった^^;
★38 - コメント(0) - 2016年12月24日

何百年も昔からほんの数十年前まで人々とともにあった自然とそこで育まれた土着の宗教。昔の出来事が言い伝えとして伝承されて、昔住んでいた人の記憶がその土地に残っている。なのにどうして、その地の記憶を無視して、育まれてきたものを破壊するような事が出来るのか。それすらも「人々の営み」であって、失われていく物があれば残る物もあるのだと悟ったとき、感じるのは確かに主人公の言うように、諸行無常では表しきれない気持ち。もしまだ間に合うのなら、今も残る微かな痕跡から昔同じ土地に生きた人々の記憶を探してみたいと思った。
★15 - コメント(0) - 2016年12月12日

日本史で習った単語が出てきて、なるほど…となる場面も多かった。教授と共に旅をしている気分になれて良かった。
★3 - コメント(0) - 2016年11月17日

梨木香歩が仏教思想に寄り添って語ったお話。文体がすでにセピア色で、モノクロームの映画を観ているよう。日本独特の神仏融合文化と民間信仰が島の生活文化に根づいていた歴史の豊かさと、その拠って立つ島の由来が、島の自然を破壊するという逆説的な出来事によって明らかにされていく、というのはなんともやり切れない。
★11 - コメント(0) - 2016年11月13日

南九州沖の遅島をフィールドワークする人文地理学者の若き秋野。むせるような緑の森と蜃気楼が見える海。不思議な地名とそれにまつわる平家の落人伝説。温かな島の人たちとの交流。前半にはられた巧みな伏線が50年後の衝撃となる。最後まで一気にページをめくらす手腕は流石です。震災後の書き下ろし。色即是空、空即是色ってこういう感じなのか…
★10 - コメント(0) - 2016年11月9日

廃仏棄釈により破壊される前は修験道の中心地だった南九州の架空の島が舞台。地理学者の秋野は許嫁に続き両親を喪ったばかりの夏休みにフィールドワークに訪れます。太古の昔から変わらないような島の暮らし。圧倒的な自然の力。長い年月、人々が願いや祈りを託してきた霊山。『海うそ』と呼ばれる蜃気楼。秋野が出会う一つ一つの出来事が胸に染み渡るような気持ちになります。そして50年後再び島を訪れる秋野の目には変わり果てた島の姿が広がります。若かった時の打ちのめされるような喪失感とはまた違う、さみしさ。共感しました。
★52 - コメント(1) - 2016年11月7日

★★★★★
★2 - コメント(0) - 2016年10月28日

前半、ひたひたと胸に迫る、島の情景・廃仏毀釈と重ね合わせられるような主人公の苦しみ。そして、後半のさらなる破壊に、いったいどうなってしまうのかと息をのむようだったが…最後きれいにまとまって…救われた気もするけど、まとまりすぎのような気もしたり、でも、梨木さんにまとめてもらわなかったら、私には整理がつかずに気持ちがさまよってしまったかも。梨木さんの、哀しいこともそれも人間と全て受け入れるような、いつものまなざしなのかな。 (題名見て、(「海うそ」なのに)カワウソの話だと思い込んでいたけど、違った!!)
★13 - コメント(1) - 2016年10月20日

すごくよかった。ある島のカフェで店主にすすめられ読んだ本。九州のとある島のフィールドワークをした情景がついこないだのように感じられる前半と50年後に終戦となり橋が作られ、レジャーランド用に開発され、掘り出された島の姿の落差を秋野の眼を通して描くお話。50年前に知り合った島の廃仏された方の寺の僧の息子との会話が明治時代の廃仏毀釈にまつわる話でついこないだのように感じられる。海うそなど言葉の由来と地名の変化は土地の住人や思いとともに変わることを考えさせられる。梨木香歩さんすごくいいです。
★10 - コメント(1) - 2016年10月10日

Tui
時代は昭和初期。廃仏棄釈の痕も生々しく残る島を若き学究が巡る。ひそかに残る様々な気配に導かれ、退ぞけられながら。いつもの梨木香歩の空気を心地よく楽しめる。しかし今回、そこで物語は閉じられない。50年後の再訪を描く最終章で、幻想的な世界観が一転する。分かってはいる、現代に生きる私も開発と利便性の恩恵に与る側なのだと。廃仏棄釈も観光化も、おなじ人の行いなのだと。梨木香歩を、ちょっと不思議な世界を描く作家というイメージでは捉えきれなくなった。世界への人の干渉と、その名残りを書いたこの本は、著者の新境地だと思う。
★172 - コメント(2) - 2016年10月10日

梨木さんの久しぶりの小説を読みました。日本の南の島にフィールドワークでやってきた主人公のその島の生活とその島の自然更にはそこに残る様々な歴史的な遺物などが描かれています。私自身はこのような設定が好きです。最後に50年後に再訪した状況が描かれていますが、ここには梨木さんが日本の今の状況を凝縮して書いているような気がしました。考えすぎなのでしょうが、このような再開発でどんどん日本の昔の良さが失われているということを書きたかったのかもしれません。梨木さんが海外を訪れて書いたエッセイなどとがダブって思いました。
★191 - コメント(0) - 2016年9月19日

人文地理学者が九州の離島で出会った人々、文化。文化と呼ぶにはあまりにもプリミティブな 信仰や民俗。それらもとても興味深かったが 何より印象的だったのは島の人々の精神性。縁もゆかりもない学者を、贅沢ではないが心尽くしのおもてなしで受け入れる。人のいない小屋を借り、発つ時にはお礼を置いていく、さり気なく大らかな気遣い。そして木々や鳥たちの微妙な変化を繊細に捉えるシーン。当時の人々の何と豊かなことか!多くのモノに恵まれた現代人の失った沢山のコト、切なく深く考えさせられる梨木の最高傑作。
★6 - コメント(0) - 2016年9月17日

いろいろな想いがぽこぽこと浮かんできて…。この本から何を読むのか…もう少し時間がかかるかな。 私にとって梨木香歩の文章は、ものすごくするすると読めるもの、なかなか進まなくて何度も同じところを読み直すもの、両極端でこちらは後者だったので読み終えるのは力技だった。ふぅ~…。 大好きなんだけれども。
★8 - コメント(0) - 2016年9月10日

冒頭の数行の情景描写で、私はこの物語の舞台、遅島へ飛んだ。亡き教授が遺した資料に惹かれ、研究のため遅島へ滞在していた主人公とともに、歴史を背負った住人と交わり、圧倒される島の自然と対峙した。そうして50年後、縁あって再び遅島へ降り立った主人公が見たものは、リゾート地として開発されつつある、変わり果てた姿だった。その脱力感ややるせなさは、読んでいて泣きそうになった。ページをめくっている間、主人公とともに良い時間を過ごせた。ステキな小説だった。
★12 - コメント(0) - 2016年9月9日

昭和の初め、ある離島をフィールドワークする一人の青年。なくなってしまった文化や、溺れそうな程に青く猛々しい山の草木、美しく幻想的な海や湖、川。そしてそこで暮らす人々と動物。何も起こらないけれど、人の温かみや失われゆく伝統への郷愁、それらの魅力に惹きつけられる。そして、その後の出来事の淡々とした報告が涙!50年後も全然蛇足じゃなくって、余韻が素晴らしかった。物凄い早さで変わってしまった、暮らし。もうどこにみない、営み。変わり果て、何も無くなってしまった島に、けれど残るもの。好き!99
★14 - コメント(0) - 2016年8月24日

南九州の島。人文地理学者とともに、何度も巻頭の地図を見返しながら進んでいく。植物、動物、建造物、撤去された寺、岩、山、そして、蜃気楼。50年ののちに再び訪れた島は、観光開発の名のもとに畏れを知らぬ開発がなされていた。あの50年前の姿はあんなにも素晴しく、大切なものだったのか。あまりの喪失感に言葉もない。しかし、海うそによって気付かされた輝かしい喪失の意味を知ることは、老年を生きなければならない人にとって重要なことなのだと思う。
★53 - コメント(0) - 2016年8月23日

S_J
その土地に根付いた歴史、昔話、人情、習わし。特別ではない日常を誰かが記録しなくては残らない。形あるものもないものも、守る人がいなければ朽ちるだけなのだ。50年後にこうなるとは、誰が想像しただろう。誰が悪いわけでもない。被害者加害者もない。それでも切なくてやるせない思いが伝わってくる。半襟を贈られた彼女は元気だろうか。今となってはどこでどうしているかさえわからないだろう。なぜ50年もの間訪ねなかったのか。変わっていく様を見ていることしかできない辛さの中で、主人公に諦め以外の、希望は見えたのだろうか。
★33 - コメント(0) - 2016年8月17日

劇的な展開があるわけではありませんが、良信の防塁が何だったのかとか、恵仁の話とか、心が惹かれます。諸行無常、色即是空、蜃気楼のような人々の営み。その中で良信の防塁の何とも言えない異物感。読み込めてないので何とも言えない読後感
★9 - コメント(0) - 2016年7月29日

明治以降のこの国の歴史の歩みが、小さな南島の経験した廃仏毀釈や戦争やリゾート開発という名の下での"破壊"を通じて、問い直されている。それが、「存在の奥の方で、世界ぜんたいに対する「不信」」が起こり、それにより「自分の精神の奥が蝕まれている」(p59)という語り手の"喪失"からの恢復の一生と重ね合わされているところに希望を感じる。その希望とは「海うそ」という蜃気楼。幻だけど人間の認識の力。それにより世界を変えることができる。でも、それは"自然の力"に支えられていることに留意しよう。ゴルフ場開発されても力強↓
★59 - コメント(3) - 2016年7月10日

カモシカ、ミカドアゲハ、イタヤカエデ、オニソテツ など、普段見ない動植物を身近に感じながら読み進めていきました。50年の時が流れ…時を経るということは そこに生きる人も時代も需要も変わるわけで…あの神々しさと大自然が魅力である島が変わり果てていて胸が痛くなりました。価値のあるものが、時代を経てただの「もの」になるのはあっという間で人々はそれを疑問にも思わない…。人は「喪失」と隣合わせなんですね…。だけど「ハカマンゾウ」や「蜃気楼」がそのままの形で残っていて、全てが失われた訳ではないと安心しました。
★22 - コメント(0) - 2016年6月28日

静かでいながら大きなうねりを持った作品でした。色即是空。喪失もまた存在のひとつ。私がこれを心から理解するにはまだまだ修行が足りないようです。そして、梨木さんの繊細だけれど説明しすぎない情景描写がいつもながら凄い。
★13 - コメント(0) - 2016年6月26日

慈しむように、地名、植物の名前を記録しつつ、島をつぶさに歩く。心に傷を負った若い学者が、村人との交流や、土地そのものが持つ力により癒されてゆく。「良信の防塁」のように、古人の営みが心を揺さぶる。そして、現代日本から逆照射される、失われた「場所」や「時代」。時が流れる、ということ、は生きるということは、どういうことなのだろう、と考えながら読み進めた。読後、たらい舟で湯浴みに出かける老夫婦の姿が、実際に映像で見たような鮮烈な1シーンとなって迫ってきた。既に失われた、至福の時間。生きることの意味がそこにある。
★16 - コメント(0) - 2016年6月24日

森の中とかカモシカとか洞窟の闇とか島の人とかが、見たこともないのにぐっと近くにいるような気持ちにさせてくれる何かが印象的だった。そのまま物語に結論みたいなのがなくても、なんとなく読んでよかったなぁと思えるような不思議な雰囲気をたたえていた。逆に、50年後の次男との行状記が異物感。でも、実際に類似した変化を受け入れた離島はきっとあるのでしょう。見たこともないのだけれど失われた?懐かしさみたいな。
★9 - コメント(0) - 2016年6月24日

畏れ、暗闇、自然、人、他にもたくさんの今までの喪失を想うと言い表せない空虚感が漂う。山を歩き、触れ、感じ、自分の経験と感覚でしか味わえないものや人との時間の共有はどこにも記せない記憶なのだろう。残るもの、なくなるもの、そして生まれるもの、そこに連なる何かに気づき、感じる。読みながら自分も一緒に空想の島をめぐり、深い自然の息吹を感じ、失くしたものを想いながら読み終えた。
★18 - コメント(0) - 2016年6月15日

とある島で静かに時が流れ、濃密な自然の気配とその中で息づく〈ひと〉の強さと弱さが描かれる、美しい物語でした。50年後の島の変わりようと、それでも淡々とひそかに続いていく自然の営みとひとの意識、失われても忘れられても、それでも確かに存在する何かを、大切にしていきたいと思う。何か劇的なことが起こる物語ではないのだけど、なぜか心に染み入る物語でした。
★16 - コメント(0) - 2016年6月11日

人文地理学者が、南九州の離島をフィールドワークする。濃密な自然と、集落ごとに隔絶している人びとの生き様を抑制の効いた筆致で淡々と綴る。ドラマチックな出来事がいつまで待っても起きないのだけれど、最後にはいろんなものがストンと心の底にしまわれる感じ。「いろんなもの」とは、古代から続く民間の信仰であり、遷移を繰り返す動植物であり、排仏毀釈の愚行であり、大自然のディテールに名前を与えそれを記録し続ける人間の営みであり、そして人生の無常さと諦念であろう。万人には薦められぬが、自分の中では星5つ。★★★★★
★25 - コメント(3) - 2016年6月5日

なんというか本当に静かに心に滲みてくる本だった。散文的で淡々と一人称で語られ、どんなに面白くても本読むともれなく睡魔に襲われることの多い私には、とてもむかないであろう本書が、意外にもそんな目にあうこともなく、静かな感動と喜びとともに読み終えることができたのは、この本の素晴らしさか、私との相性が良かったか。
★10 - コメント(0) - 2016年5月31日

自然と人間が切り結ぶ神秘の島の肌にはりつくような湿気の森をただひたすらに歩く歩く。自然には自然の人間には人間の営みがある。それは決して切り離すことのできない二つ家の関係。すべてのものは変わりゆく、それをとめる術はない、ああ時は無情なり。色即是空、空即是色。それでもそのものの本質までは奪えはしない。そのことに気づけた者は新たな世界を識るのだろう、海に浮かぶ蜃気楼、積み重ねてきた時の織りなす虚像の世界を。植物を動物をそして人間をみつめる著者の眼はどこまでも澄んでいて、心地いい温もりとやさしい光にみちていた。
★61 - コメント(0) - 2016年5月22日

昭和の初め、人文地理学者の秋野が恩師のやり残した研究のため、九州の島へ赴き人々の生活に密着するやさしい話。
★5 - コメント(0) - 2016年5月2日

失われること。時が経つこと。悲しいことを越えても、過去になってしまうと寂しいんだな。忘れられてしまうのは。だけど、悲愴感ばかりの話ではないのは登場する人達みんなこの人素敵って思えるからかな。だから、梨木香歩さん好きだ。
★15 - コメント(0) - 2016年4月27日

これは本当に良かった。梨木さんの本で私の好きな部分を濃縮して、でも透明度が増したような素敵な作品でした。何度でも読み直すだろう。植物に覆われた言い伝えと廃仏毀釈の跡をたどりながら、自分もなにかその輪の中を潜り抜けたような島の時間。そして再び訪れたその地で、折りたたまれるもの、再び見出すもの。時間をかけて地名や言葉を楽しみながら読みたい物語。
★28 - コメント(0) - 2016年4月21日

梨木さんのファンタジーな世界が、さらに研ぎ澄まされていった印象。ワタシとしては夢見る少女のような昔の作品も大好きなので、この洗練させた世界がちょっと寂しいような気もしますが・・・。梨木さん自身もまるで、人文地理学の研究者のように、深く広くお勉強されているようで、だからこそ生まれる言葉の奥深さ、美しさを堪能することができました。いい時間をありがとうございました。
★9 - コメント(0) - 2016年4月20日

あらすじから完全に私が梨木さんの著作の中で最も愛する"村田エフェンディ滞土録"をイメージしていました笑 民間信仰には惹かれるものがありますね。「真相を誰も知らないが、確かに知っている気がする」、信仰とは正に海うそであり、"境"なんでしょう。こういった境は至る所にありますが、人は立ち止まってそのことを考えることをしない。私も一度は知らず跪いて頭を垂れてしまうような体験をしてみたいですね~
★16 - コメント(1) - 2016年4月12日

昔、私は山奥に住んでいた。小規模な集落で、車無しでは生活できないような所だ。 この世界はそんな場所に似ている。独自の文化があって、しきたりがあって、 よそ者を遠ざけてきたかのような、古い古いムラ。シメコロシノキとはアコウの木のことだ。 海うそとはアシカのことだ。今でも伝承を大切にしている村がある。 そしてその神秘性は拒まれることを知ってか知らずかよそ者を引き付ける力がある。 ずっと読んでいると村の世界に引きずられて戻ってこれなさそうな、恐怖と幻想性を持った物語だった。
★17 - コメント(0) - 2016年4月12日

読友さんのおかげで知った一冊。初めて梨木香歩さんを読んだが、文章の読みやすさと地名への思い入れが強く印象に残った。南九州ではないが、ちょうど島に旅したばかりなので、自分の見た風景と重なる描写に惹かれる。神仏分離令は寺や仏像だけでなく日本人の宗教的アイデンティティも破壊した。その影響は想像以上に深く大きい。「遅島」で主人公が見て体感した無惨な喪失の描写はそれをまざまざと表現しているのでは。美しい小説だが、それ以上に神仏分離を考える新しい視点を示してくれた貴重な読書体験だった。
★21 - コメント(0) - 2016年3月30日

海うその 評価:80 感想・レビュー:560
ログイン新規登録(無料)