熊 他三篇 (岩波文庫)

熊 他三篇 (岩波文庫)
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熊 他三篇はこんな本です

熊 他三篇の感想・レビュー(115)

「このたぶんこそが人間をここまで生きつづけさせたものなんだ。人の一生のうちで最上の日々というのは、きっととか必ずとか言って過ごす日々ではないのさ。人にとって最上の日々というのはたぶんとしか言えぬような日々なんだ。」248
★3 - コメント(0) - 3月2日

南部の失われていく自然、手触り感のある旧来の生活と異質な新生な知性主義的生活の対立、獲物と猟犬と銃へのフェティシズム、インディアンへの理屈を超えた憧れ、少年時代、そんなものへのノスタルジーを感じる短編集。わかりやすい目鼻立ちがくっきりとしたお話が並ぶ。一方で、やっぱり描写はフォークナー。時系列も逆転するし、省略の多い文章はつっかかる。この分かりづらさは長編を読む限り意図的かと思っていたが、難易に関係なくややこしいところを見るに、実はこの人の素なんじゃないかと思えた。この人に世界はどう見えていたことやら。
★10 - コメント(2) - 2月26日

フォークナー短編集。フォークナーというと今まで読んだ作品のイメージから因習に満ちた憂鬱な南部というイメージだったのであるが、本作は少年の成長や通過儀礼、大自然と狩りの仲間たちと極めて健康で爽やかな読後感を覚えた。むろんフォークナーらしい血と因縁も出てくるのであるが、長編みたいにネガティブな印象は受けない。作中、読み応えがあるのは表題作であるが、個人的に面白かったのは何といっても「熊狩」。フォークナーってこういう愉快な作品も残していたのね。今までと違い、自然と向き合う南部の人々が印象的な読後感であった。
★68 - コメント(0) - 1月30日

久々のフォークナー。狩りを主題とした四作を収めた短編集。おっと、『熊狩り』は狩の話ではないかもしれない。他の作品でおなじみの人物(同姓同名の可能性もあるのだが)もでてきてなんだか懐かしい。この一冊でヨクナパトーファの大自然と、悠久の時間を味わえる。ヘミングウェイ(読んだことないのだけど)とは何か決定的に違うんだろうなあ、と思いながら読んでいたら、ちょうど訳者解説でヘミングウェイについて触れられていて、違いがよくわかりました。
★15 - コメント(0) - 1月21日

森との共存がテーマ。うん、そこは解る。ただ一つ理解できない点。なんでアイクが倒すよう展開にしなかったのか。あれだけ伏線を張っておいて最後「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」と。脇役に倒されるラスボス……。解せぬ。
★8 - コメント(0) - 2016年12月5日

「人の一生のうちで最上の日々というのは、きっととか必ずとか言って過ごす日々ではないのさ。人にとって最上の日々というのは、たぶんとしか言えぬような日々なんだ。なぜって人はそうできるかどうかそれまでは分からんのだし、それまでは本当にそうしたいかどうか分らんのだから」――森で運命的に遭遇する大熊(オールド・ベン)と少年。そして猛犬ライオンとの出会い。これほど完璧なお膳立てをしておきながら、結局大熊と対決するのはアイク少年ではないという衝撃! なんという肩透かし展開……でも、これこそがフォークナー文学なのです。
★53 - コメント(0) - 2016年12月4日

ヘミングウェイの狩猟小説と対比させた解説は秀逸 さすが加島先生です ただ私的には、スタインベックの短篇に似ていると思った 表現の詩的なところなど
★19 - コメント(0) - 2016年9月2日

フォークナーはあまりに難解であり、気持ちもどぉおおおも入り込めなくて敬遠してしまうけれど、この作品は一番好きかもしれない。
★2 - コメント(0) - 2016年6月20日

「八月の光」の流れで図書館で借りました。よかったです。子供の頃に見た映画「グリズリー」と「ディアハンター」を思い出しました。十匹の犬が熊の匂いだけに怯え、小屋の下に潜ってしまう描写はリアルでゾクッとしました。そして、黒人を軽視した表現があちこちにあったので、奴隷問題や差別など、時代かな?と感じましたが、少し違和感を覚えました。短編も含めて、全てくまの話、登場人物も、同じで、少年が老人になって登場するのが大河ドラマみたいで面白い。
★12 - コメント(0) - 2016年4月14日

大熊を追いかける時の空気感の表現が良かった。
★1 - コメント(0) - 2016年2月19日

なんという奥行き!平べったさのかけらも無い中篇ひとつと短篇三つ。『老人と海』ならぬ『少年と森』。
★9 - コメント(0) - 2015年9月25日

狩猟に興味がないせいか、全くと言っていい程、内容に入り込むことができず。殆ど字面を追っていただけというのが正直なところ。そのせいか場面のつながりがちゃんと把握できず、「あれ?」と思いながらも、無理矢理に読み進めていくという塩梅だったから、余計に読むのが苦痛だった。他の人も述べているとおり、二度、三度と読み返せばまた新たな魅力を見出せるのかもしれないけれど。ただ最後に収められた「朝の追跡」の終盤で主人公が養父的存在の男性に教育の重要性を説かれる場面は印象的だった。訳者のいうように父性の意味を考えさせられる。
★3 - コメント(0) - 2015年9月14日

狩猟なんて興味ないので1回目はあまり面白いと思わなかったが、2回目は世界観になじんだためか少し面白く感じた。3回読めばもっと面白くなると思われるがまたの機会に。
★2 - コメント(0) - 2015年8月9日

狩りのメンタリティというのはよくわからない。どちらかと言えば(フォークナーがそうだったように)自分の食べる分だけを仕方なく殺すというのならわかるかもしれない。『熊』は手付かずの大自然とそこに君臨する大熊(=畏怖すべき世界とその神々)への参入を通して少年が大人になる物語で、インディアンの血を引く黒人サムは、少年を導く者として描かれている。一度目通読した時は、何やら文体がゴツゴツした感じがして読みづらかったが、二度目を読んだとき、森の風景や動物たちの声、匂い、木々のざわめきなどが視覚的に見えるような気がした。
★27 - コメント(3) - 2015年6月16日

少年が狩りに出て森の主のような熊がいて、とヘミングウェイやシートンを連想しましたが、登場人物が黒人やインディアンの混血の森と共生しているような老人や南部のうらぶれたような白人が出てきてやっぱりフォークナー的世界でした。
★8 - コメント(0) - 2015年6月9日

また読み返したくなるような本だった。フォークナーというと、理解しにくい難しめの小説を書く作家というイメージがある。でもこの本は予想に反してわりと読みやすかった。少年がはじめて狩りにでて、獲物の大きな熊を探す話。ストーリーだけ見るとありふれた小説に思える。しかし、何よりも文章が素晴らしい!少年が一生懸命に獲物をさがす様子が伝わってくる、緊張感にみちあふれた文章だった。狩りを通して成長していく少年にたくましさを感じた。
★44 - コメント(0) - 2015年4月15日

狩猟という行いの中で、少年が精神的に成長する過程を描くビルドゥングス・ロマンなのだが、狩猟の師であり、人生の師でもある混血のインディアン、サムじいさんが強く印象に残る。誰よりも「大熊」のことを理解していて、誰よりもそれに敬意を持つ。その「場所」における先祖代々の営みを継承し、それを主人公に伝えていく様子が描かれる。その中でも、主人公アイクが初めて殺めた鹿の血を額に塗る儀式の場面が印象深い。ただ、思った以上にロマン主義的で、自然に対する絶対的な信仰の様なものも読み取れた。表題作と地続きの他作も◎。
★19 - コメント(2) - 2015年1月19日

なんだかすごかった。ヘミングウェイを思い出したが、彼とは違うもっとごうごつしていて硬い印象を持った。でも、その中に芯の強さと優しさを感じる。話はそんなに凝ったものではないけど、その言葉の端々にそう言った彼独特の感覚があり、その感覚が深い味わいをもたらしている。自然の大きさ、そこに息づくものたちの神聖さ、そして、人間の強さが極めて正しく描かれている名作だと思った。
★1 - コメント(0) - 2014年12月23日

【ノーベル賞作家を読む】人間と自然の神聖な儀式としての狩り。椋鳩十を思い起こす。「信仰」の救済と苛烈の割合が大きく異なるが。
★20 - コメント(0) - 2014年9月27日

内容は因習や差別といった深刻なものを含むが、自然そのものが語り部になって大森林と関わりのある人たちを描きだしているような不思議なあたたかみを感じる。語りの全体に慈愛に満ちた何者かが浸透し拡散していて素晴らしい。汎神論的な神の語りという気がする。また、フォークナーはなにかを追跡している時の緊張感を描くのがうまいです。それは解説でも述べられているように、ヘミングウェイ的な征服欲を満足させるための狩猟ではなく、人間という存在を遥かに超えたなにか、自然に対する畏れをもって行われる営みなので深遠な印象を受ける。
★2 - コメント(1) - 2014年9月9日

ミシシッピー・デルタの深淵で豊潤な森を舞台にした狩猟の短編小説4編。ノスタルジックにそして伝承話的に語り口に、フォークナーは口承語りを基礎とした作家だったのかと今ようやく気付いた。老人の目、少年の目、黒人の目、白人の目。それぞれの視点から描写され、物語る作者の視点の多様性と筆致に改めて敬服する。
★8 - コメント(0) - 2014年7月19日

中篇「熊」と短篇「むかしの人々」「朝の追跡」は、熊狩りあるいは鹿狩りをモチーフとした少年の成長物語。主人公の少年たちは、あるときは大人たちに導かれ、あるときはたった独り丸腰で、ミシシッピの大森林に分け入り、誇り高き大熊や鹿と対峙し、自然の何たるか・人間の何たるかを学ぶ。もう一つの短篇「熊狩」はやや毛色が違い、タイトルこそ A Bear Hunt だが、実際は熊狩りの野営地を舞台とした愉快な復讐譚。もとより『アブサロム』など長篇の持つ複雑な面白さはないけれど、その分読みやすく素直に楽しめる作品ばかりだった。
★6 - コメント(0) - 2013年9月24日

また熊出没の時季か。鈴やラジオをつけて山へ。最近では人里にも。ミシシッピ川を舞台とする「熊」。「夏、秋、そして雪が来て、やがて濡れて樹液のあふれる春、それぞれが不変の秩序をもってつづく。それは死と変化の相を越えた母なる自然であり、それが彼を育ててほとんど大人にまで仕立てたのだし、それがまた母とも父ともなってあの老いた人をつくったのだ」(127-8頁)。春夏秋冬の描写がダイナミックに展開されるのはよかった。「むかしの人々」は、最低が生気のなさ、さらに悪いのは恥とする(175頁)。恥の文化が日本人に回復する?
★13 - コメント(1) - 2013年9月22日

熊狩と少年の成長を描く「熊」という中篇の他、「むかしの人々」「朝の追跡」とユニークなお噺である「熊狩」の三つの短編を収録。この頃のアメリカの狩の事情が、勉強不足でわからないのだが、一年の中で狩をするのは十一月の十四日間という記述があったが、生活の為の狩というよりスポーツとしての狩という意味合いが強いのだろうか? インディアンと黒人の血を引くサムが渋くて好きだ。ライオン(犬)も。ホガンベックの二人も良い。銃の音など、擬音が結構使われているように感じたが狩の緊迫感を和らげてくれている。シャックリの音も面白い。
★23 - コメント(0) - 2013年7月14日

「熊」を中心とするミシシッピ河流域に広がる森を舞台にしたユーモアたっぷりの短篇群集。読中に覚えた懐かしい感じは、随分前に読んだヘミングウェイのニック・シリーズと重なった為だろう。フォークナーとヘミングウェイは同時代のアメリカの大作家同士であるが作風には共通点は皆無で、二人の中もかなり冷ややかだったそうだが、アメリカの大自然を描いてしまえばこうも似てしまうのか。明るいフォークナーを楽しめる短篇集であるが、今に生きる者たちに先立って存在する何者かが絶えず読者に付きまとうのはやはりフォークナーの小説である。
★31 - コメント(0) - 2013年7月6日

狩りがメインの話ですが、自然との共存がテーマ。「熊」でオールド・ベンと名付けられ、あれだけ恐れられた大熊が案外あっさりとライオンとブーンによって倒されたのがちょっと意外だった。最初、ライオン(犬の名前です)の大きさを、肩までの高さが30インチを30センチと読み間違ったせいで、熊ってツキノワグマか?!と勝手に拍子抜けしてました(^_^;) 「熊狩」でしゃっくりがとまらなくなるところの描写が面白かった。
★29 - コメント(5) - 2013年7月1日

初フォークナー。アメリカ小説と事前に聞いていたのでライ麦畑的なイメージを持っていたけれど、シートン動物紀の方でした。開拓時代の素朴な人間と自然との交流、狩人と野生のものとの静かで空気を読む様なやり取り、いがみ合うわけでも憎みあうわけでもなく相手を敬い命のやり取りをする。原始的な泥臭さに好感を感じた。
★8 - コメント(0) - 2013年5月13日

正真正銘フォークナーは初読みである。にもかかわらず既視感があったのはなぜだろうか。開拓される自然のアニマと、武器を放棄した人間の対話。自然と人間との共存。こうしたテーマは例えば漫画(ハガレン、ドラゴンボール)や、アニメ(ジブリ映画)で多く扱われる。日本は広大な土地こそ持たないが、宗教的感覚で本作と結びついている。特に僕のような田舎者にとっては、ヘミングウェイに少ないこの土臭さにも、親近感がわいた。本作において狩りとはスポーツであると語られ、ルールをもたない殺戮との違いが明記されている。
★13 - コメント(1) - 2013年4月7日

開かれた眼が見つめるのは〈不死の神〉の聖地とも呼べる遠く広がる大森林で、その森は"彼ら"の野性、魂、そして恐怖すらも解放し自由にする唯一の場所。神という存在ですらいつかは破壊され息途絶える運命にあり、その死の臭いがどれだけ強くなっても血の臭い(=地の匂い)は消えることがない。その地で生きる運命にある南部人の少年の文明に飼い馴らされていないその眼は、死してなお開かれたままの眼を持つ"彼ら"と同じ"神"を凝視する眼、恐怖と謙遜の向こうにあるものを味わい見つめる眼を持ち、偉大なる〈祖父〉を讃えている。
★27 - コメント(1) - 2013年4月7日

森の主である大熊はアニミズム的思想の神であり、その絶対的な力と崩壊は生と死という避けられない運命(=人間のそして南部の運命)を強く意識させる。丸腰/無の状態で全てを捨てて対峙する〈不死の神〉とその死は言いかえるなら自己の死と再生でもあり、ネイティヴアメリカンのビジョンクエストと開拓者の狩猟文化の融合とも解釈出来る。流れる血の臭いと刻み込まれた運命、そして結末へと向かう流れはフォークナーらしく、少年の成長物語というよりも"南部人"そして"人間"としての生まれ変わりのイニシエーションを描いた話とも言える。
★29 - コメント(1) - 2013年4月5日

狩の話。それと読む順番を変えた方が良い。
★2 - コメント(0) - 2013年3月23日

命を奪い糧とする狩猟と、自らを取り巻く大自然を通して成長するアイク。時間や世代を越えて展開する物語だけれど、フォークナー作品にしては小難しい要素は少なく単純な成長譚として読むこともできる。初フォークナーにもオススメ。動物の気配、狩りの緊張と躍動感。そうした描写はやはりずば抜けている。古き時代のアメリカ南部の空気をそのままに感じられる。そしてその自然とアイクとの距離感や関わりに、フォークナーが人間同士で求めていた距離感を感じてちょっと考えさせられた。
★3 - コメント(0) - 2013年2月20日

初めてのフォークナー。自然との関わり方を学びながら成長していく少年の姿が描かれた「熊」がとてもよかったです。今も世界のどこかにはこの作品と近い生活をしている人たちがいるのかも?などと思ったりしました。
★6 - コメント(0) - 2013年2月15日

フォークナー著「熊 他三篇」(岩波文庫)読了。ちょっと趣味じゃない。
★2 - コメント(0) - 2013年2月9日

熊 他三篇の 評価:92 感想・レビュー:48
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