地獄 (岩波文庫 赤 561-1)

地獄の感想・レビュー(63)

覗きに夢中になり、勤め口を無くしてしまった男の話です。皆川博子さんの小説の中に出てきたタイトルだったはずですが、違う作者の作品だったらごめんなさい。読んでいて思ったのが、『覗き』はネットと似ていること。他人のブログやTwitterにアクセスすると、全く知らない人の私生活を覗けてしまいます。しかも覗きは一方的で、見られていることが分かりません。しかも、割りとシュールな記事だったりすると、見なきゃよかった…と後悔するところも似ています。真実はどれも醜くて虚しいです。
★42 - コメント(0) - 2016年7月5日

★★★★ 重厚で暗い筆致。物語に漂う空気は極めて暗く、重い。「僕」が抱える内面的な重さが、穴を通して見る会話劇にさらに悲愴さや凄惨を拍車をかけ、人生は暗く、(一面的な意味で)実存的だ。「地獄」とは内的な世界のことであり、ただ単に失望するだけに終わらない覚悟を持った人の人生観・態度のようなものである。読書会しました。
★4 - コメント(0) - 2015年12月28日

今日は朝から雨が降って4月だというのに薄ら寒い。本書の読後感と同じく暗く陰鬱な気分にさせられます。行きずりの旅館の壁に偶然見つけた隙間から隣室を覗き、そこに人間の本質ともいうべきものをみてしまう男。男の目を通して読み手である私達もまた隣室を覗き淫欲、苦悩、快楽、孤独...赤裸々な人間の姿を見ることになります。なんだか見てはいけないものを見てしまった後ろめたさを感じます。孤独に死んでいく老人の最期の場面は切なく心が痛みます。
★22 - コメント(0) - 2015年4月8日

遠くへ行くお友達からのプレゼント。彼女は、自分が世界の中にいるのか、その逆かの答えになった本と言っていた(ような気がする)。私はその悩みを持ってなかったので、その視点とは違うところで心が動いた。205頁あたりからの老・若医師の議論は、まるで今まさにの世界のことのようだ。違うか、何も変わっていないだけか。主人公が覗きによって見聞をひろめる・下地を作る前半と、なにかが一気につながって思索を深める後半の二部だてで面白かった。天啓を受けたように扉を開けてゆく主人公に圧倒される。置いてきぼりにされるかと思った。
★2 - コメント(0) - 2015年2月5日

・女性、子供たち、エエネ夫人、相手の詩人ような男、二人の女、老人、アンナ、若い男 ・部屋を覗くことによって見られると感じられずに人間を見る。(=読書?) (=ありのままの姿、なので主人公は真理のようなものをそこに見たと考える。) ・全世界は自分の中に存在する。ので孤独である。(覗きはその孤独を解消するため?)(エエネ夫人) ・永続していく愛、思い出がないという悲しみ(エエネ夫人)(老人) ・私が自分自身から外に出られるとか、あるいは私が孤独でないなんていうことをどうして正気で考えることができよう。
- コメント(0) - 2014年9月24日

覗きという下種い犯罪を通じて、人間の赤裸々な行いを見通す主人公。主に視覚によって外界を内面化していく心的作業は主人公に人間の真実を知らしめるのか。それとも〈見る/知見を得る〉と〈行う/血肉化する〉の違いに気づかぬ主人公を嗤うべきか。経験の質的差異をここまで考えさせる小説もあまりないかもしれない。ニヒリズムの陥り易い浅薄さと切り捨てたくもあるが、こうした神の視点的な観察の誘惑からはなかなか逃れられないのも事実。現代的なテーマだと思う。
★3 - コメント(0) - 2014年9月20日

この本は以前に読んだことがある。文学作品というよりも哲学書と言った方がいいような内容。要するに自分とは何かという問いに対する答えを見つけ出そうというもの。しかし全ては無だというのが最後。すごく考えさせる内容で、読むのにかなりしんどい。この結論で納得するのか、あるいは別に結論を求めるのか。う~ん、むずかしい。
★3 - コメント(0) - 2014年9月10日

Me
覗いてる男。覗いているだけだからこその結論の様な。人間を人間たらしめるものは、壮大な宇宙の営みからの孤立、永久の孤獨、無。幸せだと思った訳は虚しい、貴方を想うと私はひどく独りだ。「我考う。故に我あり。」思考の偉大さ、觀念により初めて宇宙は存在する。でも、四の五の言わずに働こうよ。
★4 - コメント(0) - 2014年7月6日

澁澤龍彦を経由して本書に。田舎出の青年がパリの旅館の一室に納まり、ふと壁の孔から覗いて見た隣室には思いがけない場面が・・・。淫慾と苦悩と快楽と呻吟のるつぼ。人間は永久に孤独であった・・・。
★18 - コメント(0) - 2014年4月1日

旧字体。ニヒルな作品(解説350頁)。1908年初出。孤独な聖夜(ロンクリ)には慰め? 「なんの取柄もない。だが、それでいながら、なにかぼくにむくいてくれるものがほしい」(12頁)。平凡だけど誰かを愛し…のテレサ・テンの歌詞のようなものである。ストレートな表現で虚飾なし。「朝から晩まで戦わなければならない労働。(略)ひと握りの金をつかんでいるためにすぎないが、その金も廃墟の山のようにあえなく崩れ去ってしまう」(149頁)。増税で貯金崩れるな。「社会に慢性的な不平等を持続させる法則」(205頁)。困るなぁ。
★10 - コメント(1) - 2013年12月24日

隣室で繰り広げられる痴態やドラマは人間の本質をまざまざと見せつける。人間を人間たらしめるのは愛ではない。ただ孤独こそ人間たらしめる唯一の要素。無こそ人間をさらに高次元へと進めさせしむ要素。人間は人間である限り『地獄』の中にとらわれている。「人間苦の抒情詩」である作品だが、ぼくはその根底には「人間賛歌」が流れているような気がしてならない。「だが、ぼくは、それが我々の虚しさや不幸を意味するものではなく、かえって、我々の能力の成就や神たるべき資質を意味すると信ずる。」最後のこの言葉で何か救われたような気がする。
★4 - コメント(0) - 2013年7月14日

主人公が変態的趣向の持ち主だと思って読むような作品ではない。隣室で繰り広げられるのは「人間」そのものの行為思想でありそれを覗くのがやめられないのが地獄なのだ。主人公は人間と向き合うことをやめられない、やめない。それで光が齎される。「あなたは愛国思想を敢然と攻撃する人々を公に避難なさいましたね!あなたの立派なお名前は、そういう連中をやっつけるのに使われているのですぞ」この台詞から逃げた老学者。このシーンに一番惹きつけられたかも。
★1 - コメント(0) - 2013年5月4日

「ぼくが知っているのは、その實在性がぼくの思考の仲介なくしてはありえないこと、宇宙がぼくのつくる観念によってのみ存在することである。…ぼくはぼくの思考から逸脱できない。過ちをおかし嘘をつくのでなければ、そんなことをする権利はない。いわば自分から飛びたとうとしていくらもがいても、なんの役にもたたない。…ばくは自分を信じ、そして孤独である。なぜなら、ぼくはぼくから脱出できないからだ。孤独ではないと考えるなんて狂気の沙汰だ。」293「私、現前、実存」…覗きみる「神」視線「自分」の徹底孤独、神は孤独で大変なのかも
★2 - コメント(0) - 2013年4月6日

田辺貞々助さんこんな本も訳してたんだ。バルビュスはゴンクール賞の受賞者の一人として文学史でちょっと習ったことがある程度、ほぼ知らない作家。この『地獄』はかなり19世紀っぽい小説ではある。というか19世紀末っぽい。自然主義がどの方向へ流れていくのか、いまいちはっきりしない面白い時代。1908年の作品とあるから、『失われた時を求めて』の直前、まさに最後の19世紀小説のひとつと言えると思う。ちょいと頭でっかちな印象を持った。
★13 - コメント(0) - 2013年4月6日

偶然泊まったホテルの一室。そこより隣の部屋が覗ける事を知った青年はその魅力に取り憑かれていく。というストーリーよりもっとおどろおどろしい内容、人間の赤裸々な姿に触れる『屋根裏の散歩者』のような内容かと思ったのだが、実際は隣の宿泊客の行動について考察する思弁小説であった。その行動も大仰な言い回しと観念的な内容で、まるで室内劇を見せられているよう。この本一冊よりも『屋根裏の散歩者』の、なんでもない様に着こなしている着物の染みを舌で舐め取る、という一挿話の方が何となく人間性そのものに根差している様な気がした。
★40 - コメント(2) - 2013年3月19日

【★★★★☆】(ぼくは)「偶然に、精霊からでも授けられそうな眞理を手に入れながら、後世に光榮を残すはずもない、呪われた、あだ花にひとしい詩人だ」(276頁) 旅館において隣室を覗き見する小説、というと趣味が悪いけれども、そこに虚飾を脱いだ「真實」を求め、肉體のつながりと精神の隔たり、神の否定と、心を交わらせ得ない孤独な存在であるからこそ人間が人間たりえるという思想。文体は読みやすい現代的なものだが旧字体なのでそこが難。高みから他者を覗く「支配者、神」性をもった主人公が「あだ花」と自身を表するその落差が響く
★3 - コメント(0) - 2012年9月17日

旧仮名使いの難解な文体に苦労しましたが、古い岩波文庫の香りに励まされてなんとか読了しました。 最初は覗きに興じている男の物語という印象でしたが、覗かれている人間たちの複雑な関係性は、死期の迫った人間に懺悔させようとするキリスト教僧侶を通して描かれる宗教観、死体に群がる蝿や微生物への観察眼、自己とは何かという哲学的な問題へつながり、そこに含まれるテーマは広域で深かったと感じました。ただどうしても、それを自分なりに理解できたとは言いがたく、いつかまたチャレンジしたいと思います。
★2 - コメント(0) - 2012年7月15日

「屋根裏の散歩者」に影響を与え、「倒立する塔の殺人」でも紹介されていた作品だったので読みました。覗き穴から男女の密会と情事を視姦する男と覗かれている部屋で展開される歪で切なる人間関係と出来事。覗いている男はその部屋によって展開される世界に関わることはできずにその部屋の中で完結しているという観察者への徹底的に突き放した見方が印象的でした。「男は部屋を覗いていたが、読者は物語での男を覗いていた」という視点を変えると逆転する安倍公房氏の「箱男」でも感じた観察への関係性を問うているのではないでしょうか。
★19 - コメント(0) - 2012年4月12日

「予告された殺人の記録」読了後、之れもジャーナリズムと詩情の融合を目指した小説では、と再読。解放感が全く違いました。江戸川乱歩の「屋根裏〜」がやはり近いですね。嗜好の異なる男女の時に吐き気を伴う情愛が、異空間にジャンプするような描写は独創的で読み応えがあります。
★2 - コメント(0) - 2012年3月20日

昔、読みかけて止めたのは暗すぎたから。今回感じたのは他人の様々な様態から一人の青年が自己の在り方を見出し世界へ出て行こうと決意する物語だということ。生のぶつかり合いからではなく”覗く”ことによって。
★6 - コメント(0) - 2012年1月9日

「神は人間のためになにひとつできない。なにもすべきことがない。それは神が無能であるからではなく、神が神にすぎないからだ」
★3 - コメント(0) - 2011年11月7日

引越し直前に読了した思い出の本。当然引っ越し先では、部屋に穴が空いていないかどうか真っ先に調べた。おフランスなオトナの本という印象が残っているが、再読したい。
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