懐中時計 (講談社文芸文庫)

懐中時計 (講談社文芸文庫)
あらすじ・内容
大寺さんの家に、心得顔に1匹の黒と白の猫が出入りする。胸が悪く出歩かぬ妻、2人の娘、まずは平穏な生活。大寺と同じ学校のドイツ語教師、先輩の飲み友達、米村さん。病身の妻を抱え愚痴1つ言わぬ“偉い”将棋仲間。米村の妻が死に、大寺も妻を失う。日常に死が入り込む微妙な時間を描く「黒と白の猫」、更に精妙飄逸な語りで読売文学賞を受賞した「懐中時計」収録。

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懐中時計はこんな本です

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あひる
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懐中時計の感想・レビュー(100)

人生の中でふと心をよぎる影のような時間が、淡々と描かれていく。じんとくる。ほんとうにいい小説は古びないのだと、しみじみ思う。大寺さんものはもちろん、「影絵」のような少し不思議な味わいがあるものもよかった。
★6 - コメント(0) - 1月15日

何でもないことを、書いている。ゆったりとした心地良い時間の流れ、動物や自然、モノに向けられた思い、死の影を。何気ない日常を生きる人々の姿がさりげなく語られる。あちらこちらに、それぞれの感情を散りばめて、全ては流れ、今は遠くに見えるばかり。不思議と退屈にはならない。人が去ってゆく、その後ろ姿をぼんやりと眺め続けるような、しみじみとした余韻が残った。大寺さんを主人公にしたはじめの4編が好み。
★33 - コメント(0) - 2016年11月18日

ぽつりぽつりと描かれているのに、すべてが印象的な短篇集だった。読書の愉しみを、静かに満たしてくれる。素晴らしくいい時間を過ごせた。
- コメント(0) - 2016年9月23日

この本を読むと1950~60年代の原風景が思い起こされる。時間がゆったり流れているが、人と人、人と動物や自然との結びつきがもっと濃かった感がある。そこには携帯電話はもちろんなく、電話もほとんどなかったので、人と会うには手紙を書いたり急ぐときは速達を出すという今では考えられない状況がある。そのためか何篇かは人の霊を意識させるものもあり、一種の怪異譚となっているがもっと人々はそういうものと近かったのかもしれない。
★2 - コメント(0) - 2015年5月12日

すました猫の顔が、目に浮かびます。
★2 - コメント(0) - 2015年4月28日

飄逸。死が垣間見える短編集だが、この軽々とした柔らかな筆致にはやや呆れるほどに感心する。ところどころ時間の飛び方が凄まじい。
★2 - コメント(0) - 2015年3月10日

今年は沁みる。
★1 - コメント(0) - 2014年11月24日

中途半端で、いろいろなことが解決されないまま、投げ出されているが、それが日常というものなんだろう。淡々とした文章を読んでいくと、暗闇の先を見るような感覚になった。
★4 - コメント(0) - 2014年7月26日

初の小沼丹。ペットの話が最初に続いたので、動物好き作家のほのぼの短編集かいな、と少々しらけて途中で放り出しかけたが、頑張って読み進むうち、これはなかなかの味わい深い作品集であることに気づく。 どこか人生への諦観をただよわせた日常風景を描いている。書けそうで書けない小説であろう。
★2 - コメント(0) - 2014年3月31日

素っ気ない文章を読むうちに、天地どころか幽玄の淵にまで飛び回ったようにすら感じられるのは、文章の顔であり呼吸である小沼の文体が、もはやただの規格でしかないからであろう。規格。もはや凡とすら云える規格を持つことが肝心。剛毅朴訥として規格を踏み外さないようだから、こちらは信頼しきってしまう。息を潜めてしまう。すぐ後で時空間を猛スピードかつ超スローで駈け巡ることになるのを知らずに……。だからクセになる。短編集、読むうちに食傷気味になるきらいが、いかに大家にしても多々あるが、小沼の小説集にそうしたマンネリは皆無。
- コメント(0) - 2014年2月16日

うーん、やはり小沼丹は面白い作家だ。「モノ」を直接描くのではなく、周囲を描き埋めることで逆説的に「モノ」が浮かび上がってくるイメージ。(なんかまともな説明になっていなくてすいません。笑)欲しいパズルの1ピースを直接探すのではなく、関係のないピースを揃えていくことで、目的のピースが浮かび上がってくるというか。(これもよく分からないな。笑)まぁ説明に窮するけれど、とても良い作品群でしたということが兎に角言いたい。
★2 - コメント(0) - 2014年2月7日

久生十蘭と並行して読んでいたんだけど、十蘭とは異なる方向から見知らぬ世界を書いている印象。「見知らぬ」では語弊があるな…書かれているのは見知った日常であるのに、死や狂気がぼんやりと立ち上がってきて、全体を覆うような印象と言えばいいか…。たとえば、大寺さんという人物が共通して出てくる4編には、死のモチーフが静かに散りばめられ、平易な物語でありながら、読後はかなり重く深くなっている。読めば読むほど発見があり、はまり込みそうな作品ばかりで、すごくいい。特に好きなのは「揺り椅子」。他の作品も漁らなければ……。
★3 - コメント(0) - 2014年1月4日

小説というものは、大なり小なり、ある種の「企み」だと思うが、小沼丹の諸作は、まるで企まざるかのような企みによって織り成されている。如何に生きるべきか/或いは死ぬべきか、といった、文学としての主題を、強力な問いかけとして前景化することはせずに、日常から生起するささやかな問いかけとして、ささやかなままに書き出し続ける、しなやかな知性。陰影ではなく濃淡の文学、と言ってもいいかもしれない。とりわけ「黒と白の猫」「揺り椅子」の二編が素晴らしい。
★7 - コメント(0) - 2013年9月14日

先日読んだ岡崎武志さんの『蔵書の苦しみ』に名前が出てきて気になった、小沼丹の『懐中時計』を読了。現代だと、保坂和志さんの作品群に近い雰囲気を持った小説かな。この淡々としていて、冷めた感じは好き。
★1 - コメント(0) - 2013年9月13日

「ものがたり」してるのにここまでからっからに乾いた書きっぷりをした小説はこの作者以外に読んだことがない。昔はこの人の全集、稀覯本扱いされてたけど、何年か前に未知谷から出て、そうでもなくなったんだよなぁ。買おうかなぁ。などと、再読の結果煩悶させられた一冊。実はミステリとかも書いてるんですよ小沼丹
★1 - コメント(0) - 2013年7月20日

過ぎゆく日々のスケッチ、亡くなった人々の横顔。まるで列車の窓から見るように風景は変わっていく。それなのに、作家は残される。しみじみと寂しくもなります。しかし、必要以上に感傷的ではないのです。それがよい感じ。大寺さんの物語全部と『懐中時計』が好き。
★10 - コメント(0) - 2013年5月4日

この人の本は初めて読んだけど、すごく良かった。表題作が一番好きだ。
- コメント(0) - 2013年3月18日

淡々と日常を綴っていくのかと思いきやミステリ仕立ての三作が。
- コメント(0) - 2012年10月3日

s_i
1話目と2話目ヤバイ。この時間の流れ方はおかしい。
- コメント(0) - 2012年7月21日

身近な人を亡くす話が多いせいか、いつもの小沼さんらしく爽やかで透明ながら、どこかさらさらと寂しい気がした。「断崖」や「砂丘」は一種のミステリとも読めるけれど、「村のエトランジェ」もそうだったように、淡々と怖い。小沼作品を続々と出してくれる講談社文芸文庫には、それだけでも感謝感謝。
- コメント(0) - 2012年6月13日

ここに収められた11の短編通して言えることだが、どぎまぎさせられるような出来事が起こるわけでもなく、ただ淡々と生活の一場面、一場面が切り取られている。例えば「黒と白の猫」の冒頭、自らの家に自分の家とばかりに何食わぬ顔で上がり込む1匹の猫を、大寺さんは追い払おうとするが、彼の心はお見通しとばかりにその猫は甘ったれた声でミャウと鳴く、そんなささやかなやりとりも微笑ましく、図々しい猫に愛おしさすら覚えてしまう。これは、小沼丹の持つ軽妙でいて、やわらかい文章が成せる技なのだろう。
- コメント(1) - 2012年6月10日

無為の美。日常を綴った短編には、機微に富んだ、何でもないようなのだけれど、思わず一言一句に引き寄せられてしまう魅力がある。それとは趣の異なった、女性と死の書かれる話にも一種普遍なものが筆致から滲み出ている。透き通った水の上澄み。それをさらりと喉に流し込む。
★1 - コメント(0) - 2012年5月4日

小沼丹を初めて読んだ時の感想は、一言で言えば「優しい人だな」である。本短編集では、大寺さんという人物を中心として、彼の周辺の様々な人物や生き物たちの生と死を淡々と描いている。彼らを見つめる著者の目はどこまでも優しく、なにか、此岸に取り残されたものの寂しさのようなものが滲んでいる。静謐、という言葉がふさわしい、好い小説。
★7 - コメント(0) - 2012年2月12日

日常生活が淡々とつづられる短編集。色濃く漂う昭和テイストが懐かしい。 しかし地味です。サザエさんとカツオがいない「サザエさん」みたい。ならば退屈なのかといえばそうではなく、美しい文章、飄々とした味わいに、ついつい読みふけってしまいます。事件らしい事件は起こらず、と言いたいところですが、じつは作品中でけっこう人が死にます。もちろん殺人ではなくて病死や自然死や戦死(!)ですが、ほとんど感情を交えずにサラリと提示される「死」、かえって「諸行無常」を感じさせます。
★3 - コメント(0) - 2012年2月11日

小沼丹は妻の突然の死を境に作風を変えたという。『村のエトランジェ』は「変化前」の作品のみ収め、本書『懐中時計』は「変化後」の作品中心に収めているようだ。なるほど、「変化前」に属する三篇が、男女関係のもつれを傍観者の視点から描いて、「村のエトランジェ」の延長線上にある一方で、「変化後」の八篇は、物語色を薄めて、私小説色を増している。前者では「砂丘」が、後者はほぼすべてが気に入った。特に「大寺さん」を主人公にした四篇が素晴らしい。喪失感と対峙したことのある全ての人に、よりそってあってくれるような小説だろう。
★17 - コメント(0) - 2011年11月26日

主人公を大寺さんにした『黒と白の猫』、『タロオ』、『蝉の抜け殻』、『揺り椅子』の他『エヂプトの涙壺』、『断崖』、『砂丘』、『影絵』、『自動車旅行』、『懐中時計』、『ギリシアの皿』の11篇の短篇を収録。「死」について書かれているものが多いが、悲観的に書かずさらっとした「おかしみ」に転化している。「肉の失せた白骨の上を乾いた風がさらさら吹過ぎるようなものを書きたい」と作者は言うが、大げさにストーリーを展開させる物語ではなく淡々としていて濁った水を放置して一番上に来る綺麗な上澄みのような、セピアカラーの作品群。
★3 - コメント(0) - 2011年10月12日

とても素晴らしい。人生の図々しさを前に途方に暮れつつも、その悲しみを吸収するように浮かび上がる言葉の数々。あまりの透明さに多くの死がすっと日常に入り込みながらも、何事も無く去っていく。
★6 - コメント(0) - 2011年7月23日

名人の技。流石というべきか……全てが心に沁み入るようで、だけど零れおちていくような。私はどうも所謂私小説という奴が好きになれない性質だが、何故かこの著者のそれはすんなりと受け容れられた。何故だろう。何はともあれ素晴らしいことに間違いは無い。
★4 - コメント(0) - 2010年10月4日

ああ、これはいいなあ。なんだか「良い小説」を読んだなあ、という心持ちになりました。特に物語性のないお話でも読んでいて楽しいです。文章の力というのはこういうものなのかもなあ。
★1 - コメント(1) - 2010年8月22日

『黒いハンカチ』も再読。『懐中時計』には多くの死者が登場し、「死」が追想される。鬼やんまも、犬のタロオも、友人も、妻も。まるで戦死者の大勢の前では、一つの死など……というようにさりげなく。しかし、日常という強く静かな流れの底には感情が潜んでいる。『黒いハンカチ』の主人公ニシ・アズマは「あたしのHも山で死ななかったら、あたしは毎日海より山を見ているんだけど……。」(p. 18)と独白するが、ミステリという形式とも相俟って、湿った涙は一粒もない。だがいずれも読むべきは、そこに明白には書かれていない何かなのだ。
★3 - コメント(0) - 2010年7月31日

騒々しさから逃れたいときには小沼さんの静謐な世界を味わう。前半は大寺さんを主役としたのんびりした短篇。死は出てくるが、生きてるものはいずれ死にゆくといった達観した立場が見られる。後半は狂気を描いたり少しきりっとした話もある。表題作「懐中時計」は、気の置けない友人同士の素直でないやんちゃな会話ににやりとした。
★9 - コメント(0) - 2009年9月20日

Roy
★★★★+ 地面にどっかりと腰をおろしている小説である。それは怠惰ということでなくて、地面に接する面積が多いという事、即ち生きている者の生活が誠実に描かれている。言うなれば四角錐なんだけれども、そこに何らかの死が通過していく。四角錐に落とされた雫のように、重力に逆らわず通過するのだ。どれも良いのだけれど「黒と白の猫」「蝉の脱殻」「砂丘」「影絵」「ギリシャの皿」がとりわけ好きです。
★22 - コメント(0) - 2009年6月29日

淡々とした文体の中にあるちょっとしたおかしみや悲しさなどが、あとからじんわり感じられる。「大寺さん」シリーズの他のものも読んでみたい。
★4 - コメント(0) - 2009年5月10日

猫の話いいな。こういう文学も好き。
★1 - コメント(0) - 2006年1月14日

http://booklog.jp/users/beta-carotene/archives/406196142X
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大寺さんシリーズは、作らないことに専念した作品。自然そこには上澄みが生じる。自分は文体をあまり意識して読むのを好まないが、それらはここにおいては文体に集約されるように思う。そのミニマル的境地はありそうでなかなかなかった。その意味では名作。何度も読み返している
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