雁 (新潮文庫)

雁 (新潮文庫)
あらすじ・内容
明治44年、「雁」を「スバル」誌上で連載開始。鴎外の「豊熟の時代」が燃え盛る――。

貧窮のうちに無邪気に育ったお玉は、結婚に失敗して自殺をはかるが果さず、高利貸しの末造に望まれてその妾になる。女中と二人暮しのお玉は大学生の岡田を知り、しだいに思慕の情をつのらせるが、偶然の重なりから二人は結ばれずに終る……。極めて市井的な一女性の自我の目ざめとその挫折を岡田の友人である「僕」の回想形式をとり、一種のくすんだ哀愁味の中に描く名作である。

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雁の感想・レビュー(929)

50歳前後の執筆だが、女性に心惹かれながら去ってゆくことや、回想記のスタイルをとっていることなど、鷗外の若き日の『舞姫』を想起させる。表題となった雁は、直接的にではないものの、やはりお玉の哀しい宿命といったものを表象するだろうし、そのことは翻って岡田の喪失感(おそらくこれは読者にも共有される)にも繋がるだろう。また、岡田を新しい時代に向けて飛翔してゆくもの、そして一方のお玉をそうした時代の躍動からは取り残されてゆく前時代の感傷と捉えることもできそうだ。「スバル」への連載は明治から大正への過渡期でもあった。
★332 - コメント(3) - 3月17日

うむむ鯖の味噌煮。漢籍の素養ある明治の文豪の文章は、簡にして要を得ていて美しい。読書の旨み満載だが、しかしせつない読後感ではある。樋口一葉読んだ後の気分。いろいろあるけれど、世の中はよくなっている。望めば自分の人生を自分で創れるようになってきているのだ。
★5 - コメント(0) - 3月16日

綺麗な文章で読んでて心地良かった。 大人の女性になっていくお玉。
★3 - コメント(0) - 3月15日

今ならブログの軽いネタにでもなりそうな細やかな題材が文学として立派に通じているのは時代のためもあるだろうし鷗外の技量のためでもあろう。起こり得るはずだったことが起こらなかった。ただそれだけのことを、焦点人物の移動(岡田→お玉→お玉の父→末造→お常)によって重層的に、奥行きをもって描き出す。蛇や蝙蝠傘などのアイテムを象徴的に扱う手法と日本的な語りの技術が高次元で重なりあう充実作。「わたし」と岡田の本の貸し借りや末造を巡る三角関係(及び四角関係未遂)の顛末など、ユーモラスな場面も多数あって楽しめる。
★17 - コメント(0) - 3月15日

劇的なプロットではないのだが、深い余韻を残す作品だと思う。父のために高利貸しの妾になったお玉の淡い恋が描かれている。最近立て続けに読んだ夏目漱石との文体の違いを面白く感じた。漱石は話し言葉を土台にして、言葉に勢いがある。鴎外は話し言葉をそのまま使うのではなく、一つ一つの言葉をじっくり考えて使っている感じ。緻密で細部にまで注意を払って書かれた文章だ。結末近くで雁が殺されてしまう場面がある。この場面は、哀しく切ない。雁が象徴しているものを考えると、明治の女性の生きづらさが伝わってきた。
★111 - コメント(0) - 3月13日

女の精神の移り代わりが自然で説得感があった。
★3 - コメント(0) - 3月9日

なんで、鴎外にはまれないんだろう。 つまらなくはないんだけどな。
- コメント(0) - 3月5日

「雁」(新潮文庫)。なぜか懐かしさを感じる文章。高利貸ってそんなに悪い商売なのか。高利貸しよりも妾の方が問題なのでは、と思ってしまった。恋愛ものは苦手だがこういう静かで淡々としたものはいいな。
★9 - コメント(0) - 3月3日

無料の電子版で読み始めたものの、「槐南、夢香なんぞの香奩体の詩」なんて注無しでは手に負えず、確認のためページをあちこち遡って読み返すのにも電子書籍は不向きで、注解の充実している文庫で読了。しかし、様々な発見があり、充実した時間を過ごせました。高利貸しの妾となったお玉が、散歩で家の前を通りかかる大学生岡田に一目惚れ。接近のきっかけは、軒先の鳥籠に入った紅雀を青大将が襲っているところを岡田が出刃包丁で切断して助けたことですが、何もそこまでスプラッターしなくても(笑)。「釘一本」とはバタフライ効果のことですね。
★49 - コメント(0) - 2月6日

この時代の医学生の生活がイメージできました。 なぜタイトルが「雁」?と思いながら読みましたが、そうでしたか…なるほど。
★78 - コメント(2) - 2月3日

この小説、つまらなくてつい寝ちまいました☆ 不眠症に患う方々ぜひこの小説を読んでね!
★3 - コメント(0) - 1月31日

物語の構成が上手。心理描写も細かく書かれている。ストーリーも面白かったけど文章の巧みさに感心してしまった。ただ時々出てくる外国語単語に笑う。ハイカラな森鴎外さん
★5 - コメント(0) - 1月20日

医大生の僕は、ひょんなことから同じ医大生の岡田と懇意に。一度結婚に失敗、老いた父親に楽をさせたいばかりに高利貸しの末造の妾となったお玉。お玉と岡田の淡い恋と末造とその妻お常の愛憎が、僕の回想という体裁で描かれる。淡々とした文体ながらも、末造、お常、お玉、その父、女中の梅、岡田、登場人物の心理の流れが実に緻密に描き出されている。後半、岡田の投げた石で偶然死んでしまう不忍池の『雁』、夫々のすれ違いの象徴に他ならず。読ませて貰った。流石は、鴎外。
★62 - コメント(0) - 1月15日

男である作者が女心を細かく掴んで描写した面白い作品。男心と女心。「雁」や籠の中の「紅雀」と「蛇」、それらと登場人物たちとの関係性。色恋沙汰でもっとドロドロだらだら重苦しくなるのかと思いきや、立つ鳥跡を濁さずアッサリと終わる。たった一字でこの作品のテーマを表した雁。期待以上に面白かった。
★6 - コメント(1) - 1月13日

「末造のお玉への想い」「お玉の岡田への想い」「岡田のお玉への想い」「僕のお玉への想い」等々、全てが「思はく違い」になってしまう、緻密な構成に驚かされた。鷗外は頭を使って書く作家だと思う。「偶然」が人生を決定していくというのは『阿部一族』にも見られる主題だと思う。
★4 - コメント(0) - 1月9日

森鴎外は、高瀬舟を読んだ時の、上から目線的な解説的な物の言い方が嫌だったのですが、この本の薄さに惹かれて(笑)、読んでみました。時代が違うし相変わらず外国語を散りばめてるので、不明な単語もありましたが、話の進め方が上手く読みやすく、あっという間に読了でした。お勧めします。
★8 - コメント(0) - 2016年12月21日

☆☆☆☆☆【心を撃ち抜くまさにgun】図書館予約待ちの兼ね合いからページ数が少ないという都合だけで手に取ったが、名作ってすごいのね。現代小説と遜色なく読みやすいし、読まず嫌いは損だと思う。お玉と岡田の距離感とか胸の高鳴りとかって現代で言えば通勤、通学電車のあの子的なドキドキ感があるし、そういう感情って時代問わず普遍的なのだと再確認できた。ハイカラな言葉使いもかわいいし、これはお玉に惚れるでしょう。本当に岡田が羨ましい。お玉と岡田の別れはちょっぴり切ないけど、最後の1ページで笑ってしまった。笑
★12 - コメント(0) - 2016年11月17日

最初集中できなかったんだけど、途中からすごい面白くなった笑 青大将退治のとこはリアルでぐろかった…wこういう男女のすれ違いって現実だと、もどかしーな怒!て感じになるけど小説だと奥ゆかしい感じでうつくしく終わるので良いな笑 お玉が妾であることに引け目感じながらもおめかしして張り切っちゃうところとか健気だった。。
★7 - コメント(0) - 2016年11月11日

★★★★☆
★2 - コメント(0) - 2016年10月23日

本を読むことを趣味としているので、文豪と呼ばれる作家の作品も読んでおきたいと思い、折々手にとってみるのだけれど、好き嫌いが激しいようで、どうにも頭に入ってこない作家も多い中、森鴎外はスラスラ入る。雁もまた楽しく読ませていただきました。
★28 - コメント(4) - 2016年10月19日

雁を逃がそうとして岡田の投げた石は雁に命中し、雁は死ぬ。ここにすべてが集約されている。飛翔したくても、どこか遠いところに行きたくても、いろいろあって飛び立てない、それが明治のおんな。しかしそんな淡い情感だけの作品などではさらさらなく、様々な仕掛けと手法である種の言語実験的様相を呈しつつ、一分の隙もない構造、その凄さたるや幻術さながら。情感のある魔術。それにしても、弐拾壱でのお玉の、なんと生き生きと美しいことか。その美しさ故に、彼女の運命がしみじみとかなしい。地味ではあるが凄い作品、鷗外恐るべし。
★6 - コメント(0) - 2016年10月6日

KT
読み終えた後切なさを感じました。様々な人物の視点から描かれていて、それが上手くまとまっているように見受けられました。
★4 - コメント(0) - 2016年9月30日

森鴎外と夏目漱石は、気になる明治文学の二大文豪。この作品を読んでいる最中に、無縁坂や不忍池の界隈を歩く機会があり、より格別な読後感があった。鷗外もこの近くに下宿しドイツ留学しているので、実体験を織り交ぜているのかもしれない。三四郎と雁、漱石と鷗外、これからも何回も読んでいきたい作品である。
★71 - コメント(0) - 2016年9月19日

『青年』で鴎外嫌いになった私ですが、この『雁』は文学的な表現豊かで、私を改悛させてくれました。僕と岡田の学生物語と、末造の家庭問題と、お玉の身の上話がそれぞれ相容れずに喧嘩しているような、ごった煮のような印象を受けました。地方出身の鴎外が必死に東京に慣れようと、素の自分を隠そうとするところが、小説もどこか社交的でない印象を漂わせてしまうのだと思います。偶然にも投石によって死んでしまった一羽の雁は、運命のいたずら。伏線は象徴的で意味深です。
★19 - コメント(0) - 2016年9月11日

切ないというか、恋って呆気なく終わるのだなぁと思った。 お玉、たった一度のチャンスだったのに…。 特にドラマチックな物語ではないけれど、心理描写が深くて引き込まれた。 他の鴎外の作品と比べるとかなり読みやすい。入り口としてお勧めできる本。
★7 - コメント(0) - 2016年7月13日

高利貸しの妾であるお玉は人形のごとし。その見栄えは器量よしで近頃ではその美しさにますます磨きがかかってきている。そして旦那を前にしてのはにかんだ様子はなんとも可愛らしい。だが、そんなお玉も生活上の苦労がなくなり、ただ毎日をぼんやりと過ごすようになると退屈をおぼえる。なんだか物足らない生活に、誰か自分を救い出してとの願望をもつようになる。そんなある日にお玉は岡田という学生を見かける。そして人形は意思をもつようになった。旦那の留守に岡田を誘おうとするのだが、運命はお玉に味方せず。人生ってほろ苦いものである。
★33 - コメント(4) - 2016年6月18日

課題で読みました……。お玉と岡田の恋愛物語、と思い込んで読んでいたので、想像以上に末造、お常の心理描写が細かく、疑問に感じました。語り手である僕は知り得ない情報だろう、と。僕が体験し、得た情報と後にお玉から聞いた話を繋ぎ合わせ物語を作り出す際に、不可避的に創り出されてしまったものが末造とお常の物語かもしれないなと感じた。
★4 - コメント(0) - 2016年6月4日

「そんなら慕われてどうするか、僕はそこに意志の自由を保留して置きたい。僕は岡田のように逃げはしない。僕は逢って話をする。自分の清潔な身は汚さぬが、逢って話だけはする。そして彼女を妹の如くに愛する。彼女の力になって遣る。彼女を淤泥の中から救抜する」(p130)ここに風俗嬢に「あのさ、その八十万、ぼくに払わせてくれないかな」と騙される西村賢太イズムを感じるとともに、『ヰタ・セクスアリス』から続く鴎外の童貞精神を見た。
★3 - コメント(0) - 2016年5月13日

本文については岩波文庫や青空文庫で既に読んであるため、新潮文庫の装幀や注解、解説について触れたい。新潮文庫は微妙に思われるデザインの表紙も少なくないが、この森鴎外『雁』に関して言えば好み。お玉や岡田が暮らしていた当時の町の景色・雰囲気を切り絵的に写し取っている。注解の充実具合は言わずもがな。竹盛天雄の解説は新潮文庫としてはちょうど良い塩梅か。紙の質やレイアウト、表紙などの高貴な風格は岩波文庫に劣ってしまうものの、逆にその安っぽさが廉価な文庫としての魅力を醸し出す要因なのかもひれない。
★4 - コメント(0) - 2016年4月28日

全体を通してみると、お玉と岡田だけでなく、高利貸しの末造とその妻お常の心理描写にも、かなり力を入れて書かれていることが分かる。末造は、妻を殴れば問題が解決すると思うのだが、殴るのは自分の性分ではないと気づく。彼のそれまでの生き方が、妻を殴る方向へむかわないのである。お玉、岡田の性格が終盤で弛緩するのに対して、末造は一個の人格を保っている。この点で、本作は群像劇である。お玉・岡田を中心にしたあらすじは、やや一面的なのではないかと思った。むろん、結末自体は、ふたりの恋愛の行方に向かっているのだけれども。
★7 - コメント(0) - 2016年4月21日

一人の純粋無垢な女性が、自立し、大人になっていく物語だと感じた。無垢で美しいお玉は、誰に対しても文句一つ言わぬ従順な娘だった。父の愛情を一身に受けて育ったのだ。そんなお玉が変わったのは、悩んだときに、これまで片時も離れなかった父に頼る事をやめ、逆に父を安心させようと決意した事がきっかけだった。その決意が、お玉を自立させる事となった。親離れ、依存心を捨てることが自立へと導く様を描いた物語とも言える。哀愁漂う感じが文学的で良い。終盤の、蛇と鳥の比喩が印象的だが、何の比喩なんだろう?
★55 - コメント(2) - 2016年4月10日

森鴎外の見聞録のような恋のお話。明治13年のお話、なぜ覚えているかというと・・・というところから物語は始まり、すうっと、目の前に、明治時代の街並みや着物姿の人々が現れ、動き出すイメージが沸く。日本文学は同じ日本人として、感情移入しやすく、読むと心落ち着くものがある。不思議だ。下宿の隣の部屋に住んでいた同じ学生の岡田と玉子の恋愛物語。現代の恋愛がかなり、軽く思えてくる。儚くも重く、切ない、漱石の「三四郎」にも通じるようなじれったくもある。タイトルの雁は池で捕まえた雁をみんなで食べるために外套で隠して持ち帰る
★14 - コメント(0) - 2016年4月4日

ogk
好き
★5 - コメント(0) - 2016年3月27日

M.
つながりそうでつながらない二人の縁。生きることに必死だったころのお玉は、「退屈」したことなんてなかっただろうに、余裕が出てきて慣れてくると、とたんに「恋」に走る。恋は余裕が出てきて暇になってくると芽生える感情なのかしら。。。
★4 - コメント(0) - 2016年3月15日

お玉の恋心を知ることによって、自我に目覚める。だがお玉の社会へでることの自立心や自我の解放は、幾多の出来事が重なって悲劇的な結末を迎える。運命の諦念を描いた作品。お玉の心情の変化や運命を広い視野を持って表現している。
★4 - コメント(0) - 2016年2月29日

TM
・「時間」の歯で咬まれて角がつぶれ、「あきらめ」の水で洗われて色の褪めた「悔しさ」が、ふたたびはっきりした輪郭、強い色彩をして、お玉の心の目に現われた。 ・あきらめはこの女の最も多く経験している心的作用で、かれの精神はこの方角へなら、油をさしたきかんのように、滑かに働く習慣になっている。 ・末造みたいに嘘がうまい男はいない。 ・末造が高利貸しだと知り、お玉の心に隙間ができる。その隙間を岡田が埋めている。 ・籠の中の鳥は末造の、お玉に対する意識を表している。自分の所有物、離さないという気持ち。 ・蛇は末造。
★5 - コメント(0) - 2016年2月20日

男性のエゴイズムが詰まっている。女性の綺麗な表側ばかり見て勝手に自己満足するロマンチストの実態を克明に書いた物語。ただし決して下品にならないところがさすが森鴎外。「親が子を見ても、老人が若いものを見ても、美しいものは美しい。そして美しいものが人の心を和げる威力の下には、親だって、老人だって屈せずにはいられない。」
★11 - コメント(5) - 2016年1月31日

年の瀬になるとなんとなくこの物語の世界を訪れたくなる。お玉と岡田、語り部の友達の他の人物に焦点をあてて読むのも面白い。改めて、「雁」というタイトルが巧みだと思う。不忍の池あたり、今だと外国人観光客でごったがえしているのだろうか?だとしたら興ざめなので行ってみたいが行かない。
★14 - コメント(0) - 2015年12月31日

お玉の妾としての生活、末蔵との対話、岡田への恋心をつぶさに描きながら、最後はお玉を置き去りにするごとくサラリと終えていて、不思議な読後感があった。最後に語り手自身が、回想の構成について言及しているのも印象的。生まれながらに全く自己を殺していたお玉が、自我と自律することに目覚めた瞬間が好きだった。
★5 - コメント(0) - 2015年12月7日

雁の 評価:76 感想・レビュー:231
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