海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)
あらすじ・内容
アメリカと闘った戦争が、医学も、日本人のこころも汚してしまった。

戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? どんな倫理的真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描き、今なお背筋を凍らせる問題作。

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海と毒薬の感想・レビュー(5982)

沈黙に続きまた考えさせる作品。戦争という異常事態下、未成熟なモラル、行き詰まる医療。この状況では何処の国でも起こる問題だと思う。巻末評論「日本人とはいかなる人間か?」に激しく違和感を感じたが、戦勝国は戦敗国の研究全てを没収して涼しい顔。ただ我々は彼らと違って反省する事ができる。
★10 - コメント(0) - 3月25日

ある事件に関わる幾人かの登場人物の心理的描写を通じて、倫理、神、罪、罰について問いかける見事な作品でした。
★6 - コメント(0) - 3月25日

みんながなんとなく嫌な予感を抱きながら、ぬるぬると絡めとられるように、行っては行けないところまで行ってしまう。それぞれの事情はあるにせよ、戦争が起こす悲惨さ、厭世観、人の命の軽さ、が人間の嫌な部分をむき出しにしやすくしてしまっているよう。戸田や勝呂の中に自分を感じるからこその怖さがある。 ★★★★☆
★8 - コメント(0) - 3月24日

罪の意識を問う『海と毒薬』. 例えば「大いなる善のために」一人の命を切るのはどうなのか. 日常の間にスルスルと入り込んでいく罪の書き方は見事. 罪を犯した人間の心情は鮮烈に描き出されています. 物語の書き出しも好きです. 何度でも読み返したい作品です.
★10 - コメント(0) - 3月22日

どこにでもいる人間がそれぞれの異常な状況下で道徳的な罪を犯してしまうこと。罪悪感と罰を恐れ雁字搦めになり、なる様になるのを傍観しているしかない。登場人物達の感じる無力感、諦め、絶望。人生の本質を突いてる一冊でした。実際に有った衝撃的な外人捕虜の生体解剖実験を題材に、焦点を日本人と信仰に合わせ当てていく筆力がすごいです。自分の中の答えを出すには惜しいので時間をかけて再読して問い続けたいと思います。
★12 - コメント(0) - 3月21日

★★
★4 - コメント(0) - 3月21日

九州大の米軍捕虜の生体解剖実験を題材にしているということで、グロテスクな表現があったりするのかと思い、なんとなく敬遠していた。けれど、それに関してはそうでもなかった。重きを置いてるのは、それができてしまう人間の心。現代において、生きたまま人間を解剖実験することに私たちは反発できるかもしれないが、大きな流れに流され、それに慣れてしまいがちという本質は変わっていない。人間はいざとなればどんな残酷なこともできるしそれに慣れてしまう、それが恐ろしいと思った。
★6 - コメント(0) - 3月20日

戦時中はこんな事に手を染め…と言うのではなく、元々の資質が日常と言われる生活にもなり、人体実験にもなり得るのではなかろうか。
★7 - コメント(0) - 3月19日

私の本棚にあった。昔読んだのかな。覚えていない。こんなに重いテーマなのに、感じるところがあったはずなのに、それでも忘れてしまうのか。戦争の記憶や震災の記憶が風化しないように語り継ごうとはよく聞くが、人間は忘れる生き物なのだ。忘れて、再び愚かな道を進まないように、書き残された本を大切に読んでいこうと思う。私は刑期を終えて、ひっそりと医院を開いている勝呂の心境が気になった。戸田の幼い頃からの回想も、よくぞここまで書いてくれたと思った。
★9 - コメント(0) - 3月19日

遠藤周作にはまってしまいそう。短い中で描き切る凄い作家さんだと思う。
★10 - コメント(0) - 3月19日

戦時中に九大で起きた生体実験を基にした作品だと知っていたので長年読むのを敬遠していたが、実験の描写は僅かで淡々と描かれるため、想像していた程の恐怖や衝撃はなかった。実験に携わる人々の心理から当時の日本人の倫理観や生死感が見えてきて、そちらの方が怖かった。死と隣り合わせの日常では命の価値も失われ、モラルを持った人間でさえ縦社会(村社会)の中で健全な感情を殺してしまうものなのだろう。「日本は恥の文化、欧米は罪の文化」と言うが、遠藤周作も「菊と刀」を読んだのかな。神は不在でも日本人の中に良心はあると思いたい。
★118 - コメント(2) - 3月15日

人の罪の意識とはかくも空虚なものなのだろうか。「罪悪感=世間からの批判の恐れ」になっていないだろうか。
★8 - コメント(0) - 3月15日

戦争。人の命。日本人。
★8 - コメント(0) - 3月15日

40年以上前に読んだ本の再読。長い月日は「海と毒薬」に対する私の記憶の半分以上を風化させていた。昔の感想は思い出せないけれどきっと今のほうがより深く読むことが出来たと思う。自分の力では逆らえない大きな波、人はその波と正面からぶつからなければならない。その選択が正しいかどうか自問自答しながら生きていく。
★9 - コメント(0) - 3月14日

久しぶりにオーセンティックな純文学!比較的短編だけど読み応えあり。キリスト教でいう「罪」「救い」についてバックボーンのない日本人がその犯した罪と向かい合う時の様々な感情(倫理観)を描いている。彼らが精神的にどのように救いを求め、あるいは救われて行くのか、そういう点でこの作品はイントロだと思う。遠藤の作品は初めてだけど、沈黙とか深い河等に答えがあるのかなぁ、と思ったり。それにしても、今の時代、こういう宗教哲学をベースにした純文学を書ける作家はいない様な気がする。
★9 - コメント(0) - 3月13日

八月、ひどく暑いさかりに、この西松原住宅地に引越した。住宅地といっても土地会社が勝手にきめただけで、新宿から電車で一時間もかかる所だから家かずはまだ少ない。____だが彼にはそれができなかった。口の中は乾いていた。(空よ。お前の散らすのは、白い、しいろい、綿の列)勝呂にはできなかった。できなかった……。
★7 - コメント(0) - 3月12日

事件に関わった当事者の視点でも語られることで、事件の背景となるここの心の闇を知ることができた。淡々と暗い感じで描かれることで、怖さが一層強調された。
★6 - コメント(0) - 3月11日

ナチ政権下でホロコーストに関わったアイヒマンは普通の人だったといいます。さらに、ミルグラムの行ったアイヒマンテストと呼ばれる実験でも決して少なくない人数が人を死に至らしめる(数字上)実験結果となりました。異常な状況下では、正常性バイアスがかかり異常を異常と認識できなくなる。それによって自分を守る。これが真相なのではないかと思います。民族の違いなど、無いと言っていいと思います。
★10 - コメント(0) - 3月10日

戦時下の日本軍による「人体実験」への参加を求められた若き二人の医師。黒い海のように重苦しい時代の空気に呑まれ受諾しておいて、直前に及んで居るはずもない「神」を探しうろたえる勝呂。米兵を無惨に切り裂いたその後で、良心を完全に失ったことに気づき茫然自失の戸田。その二人の描写が痛々しい。だが現代人の私たちにも、彼らを嗤う資格はないはずだ・・ラストシーンで罪の意識に苛まれた勝呂が、その「海」を見つめながら詩を呟こうとする。許しを乞うために神を呼んでいたのだろうか。その姿に、なんとも言えぬやる瀬なさが心に残った。
★9 - コメント(0) - 3月9日

実際の事件を元にした小説。戦争末期の米軍捕虜の生体解剖実験の話。異常者がやった事件というよりは「死が身近にあった時代性」と「人間同士の組織内の勢力争い」によって死生観やモラルが現代で考えるものとはだいぶ違っていたのではと感じた。 久しぶりにどんより暗い小説を読んでテンションが下がった。
★9 - コメント(0) - 3月7日

戦争末期に人間が消えて行くただの「モノ」になった時代が確かにあったのだとわかった。日本人の罪の意識が恐ろしく空虚であることもわかった。
★8 - コメント(0) - 3月5日

捕虜を生きたまま解剖するという、都市伝説な印象しか持たせない悪魔の所業。 だが人間が行う以上はそこに必ず人間の思考がある。 そんな当たり前の事実を確認をさせられた。 戦時下の狂気なんて陳腐な一言が恥ずかしくなる傑作。 日本人の恥の罪責意識を問うというテーマとしては舞台が特殊過ぎる気もするが…
★9 - コメント(0) - 3月4日

何気ない日常の一コマとして実験が行われたところに怖さを感じる。
★6 - コメント(0) - 3月3日

日本人という民族の罪の意識について、戦時中の病院で起こった「生体解剖」という事件を焦点に当てながら強烈に描く作品でした。特に戸田の独白には、私も含めて多くの人びとが胸を掴まれるような気にさせられるのではないでしょうか。
★10 - コメント(0) - 2月28日

単なるオカルト的な内容かと思って読んだがさにあらず。生体解剖に加わったメンバー全てが普通の人間。日常の生活に不満を持ちながら、罪の意識を問いかけながら、苦悩する普通の人たち。人間が取り返しのつかない悪事に手を染める時は、どす黒いエネルギーが蓄積していることが大きなトリガーになるんだろうな。
★7 - コメント(0) - 2月28日

長い時を経て再読。
★5 - コメント(0) - 2月28日

日本人の宗教観 それを悪としているのは、自分の価値観ではなく、世間の価値観
★7 - コメント(0) - 2月28日

再読。戸田の回想のくだりが好きなのである。自分の持つそれは良心の呵責ではなく啻に罰せられる恐怖でしかないという戸田に、共感はしない。だが納得はする。日頃軽々しく使われる「良心」に、本来の意味はどれほどこめられているものだろうか。戸田の回想のくだりにはまた色の表現が多用される。しかし思い起こされる絵面は暗く埃っぽい。黄ばんだ衣服の教師も白い包帯の少年も、どこかぼんやりと煤に塗れている。恐らく戸田の記憶が鮮やかに彩られることはない。無感動と無関心の煤が、ふしぎとキャンバスを汚すのみであろう。
★10 - コメント(0) - 2月26日

重すぎるテーマ。人間とは運命に抗えないものだろうか。抗えないのはその弱さ故だろうか。人の良心とは、罪とは、神の存在とは。私には答えなど出るはずもなく、ただ考え続けるだけ。
★8 - コメント(0) - 2月26日

「沈黙」が面白かったのでこちらも読破.昔の大学病院はこういうところだったのだろうか・・・ちょっとすさまじい話.
★34 - コメント(0) - 2月25日

こういった犠牲があったからこそ、今の医療の発達があると思うと、有り難いけど複雑な気持ちになる。今も実験で多くの動物を使っているので犠牲はあるのだが、同じ人間が・・・と思うと、気持ちが沈む。私自身が病院にお世話になる身として、自分の知らないうちにモルモットのように扱われているのかもしれない・・・と思うと、怖い。でも、医師も好きで行う訳ではなく、医療の発達の為だったり、探求心の為だったり、成り行きだったりなので、医師が悪いとも言えない気がする。もう後がない時に、後世の為と言われると、言い返せないかもしれない。
★15 - コメント(0) - 2月23日

「医学」「時代」「人間」の不気味さを感じる。それは、「国」や「宗教」の問題だろうか。テーマが「神なき日本人の罪意識」とあったが、宗教は地球上の全人類の諍いを無くすわけではなく、信仰者が善良であることを保証するものでもない。作中の人物の感覚は、特殊なようで特殊ではない。人が簡単に死ぬことが日常ではない今の自分の環境の有り難さと、殺し殺される人類の歴史中で起きる自然な狂気を感じた。しばし著者の本を読み、再度考えたい。
★14 - コメント(0) - 2月22日

この時代に描かれたことに意味がある一作だと思った。人を殺めるということは異常者だけに当てはまることではなく、所謂ごく普通の人間でも起こり得ることであり、正常と異常は紙一重だと思った。どうせ死ぬんだからみんな一緒という趣旨のことが何度か出て来るが、死ぬまでの過程が大事だと思った。
★9 - コメント(0) - 2月21日

良心の呵責について扱っている作品だと思います。当時の事件を知らない僕でも、その少し非リアルさにスッと入り込める書き方、伏線など技術を感じました。すごい、とても面白いです。
★9 - コメント(0) - 2月21日

久々にめちゃくちゃ考えさせられる本だった。 海は落ち着いていて、時には荒れ狂って、キラキラ輝いているときもあれば暗く真っ黒に見えることもある。 人の感情を映しているようにも思うし、そんな些末なこととは無関係にいつも変わらないようにも思う。 時代の流れや抗いがたい欲望に惑わされる人間と、そんな人間や時代そのものも飲み込んでしまう大きな海。 またいつか読みたい。
★9 - コメント(0) - 2月20日

医者が絶対的な権力をかざし、患者を実験材料にしたり、技量向上のための練習材料にしてはならないと思います。また、医療行為が「商売の一分野」で、患者がお客さんというのもおかしいと思います。遠藤周作 著「海と毒薬」1958.4発行、1960.7文庫化です。戦争末期、大学病院での米軍捕虜の生体解剖事件を小説化したものです。海と毒薬、裁かれる人々、夜のあけるまで、の3つの章で構成されています。
★28 - コメント(1) - 2月18日

今でいう、グロいという言葉がすごく当てはまる作品。戦時期、殺すという行為がいつの間にか日常だった状態。そこに麻痺しているのか、死を間近にした患者、敵国の捕虜を人体実験に使い、手術中に殺して知らぬ存ぜぬで、数時間後病室にて、誤差の死を世間に伝える。驚くというより、人を救うはずの医者のクールな実態が見え隠れする。医者って現在でも手術中、簡単なものなら、世間話しながら、施術します。経験者は語る!!!……、医者は人体に対してどこか麻痺してる。ホント、ホント。
★12 - コメント(0) - 2月16日

マーティン・スコセッシの沈黙を見て、そう言えば海と毒薬も積読本にあったな、と引っ張り出し、読了。 自分を含め、無神論者が殆どであろう日本人は一体どう言う人間なのか、を遠藤周作は問う。 読了後に思うことは、想像に過ぎないかもしれないが、自分の中に内なる神を見出す事は、善悪の基準となる定点を持つ事と同義ではないか?闇夜に輝く北極星を見失わなければ道に迷わないように。 それを持たない人は世間や時代に流され善悪の境目が曖昧にぼやけ、罪の意識が希薄に、いや、いつしか感じなくなるだろうか。
★10 - コメント(0) - 2月16日

『沈黙』の再読を機に他の遠藤作品もまとめて、ということで『海と毒薬』を。戦時中の九州の大学病院での米軍捕虜生体解剖事件を題材にした作品。同様のことはナチも行っていて、主導した医師らはサディストの悪魔的な人物だったとされるけれど、ここで描かれるのは多少狡猾だったり小心だったりはしても、どこにでもいるごく当たり前の人間たち。ごく当たり前の人間がふとしたことで非道な残虐行為に手を染めてしまうことが怖ろしい。良心なんて考えよう一つでどうにも変る、という医学生のセリフに慄く。同じ立場にいたら拒否できるだろうか…。
★7 - コメント(0) - 2月15日

病院内の権力闘争と戦争を口実に生きたままの米軍捕虜を解剖する。それに携わった人々の苦悩を綴る。ヒューマニスティックで目の前で起きていく現実に悩み苦しむ「勝呂」良心の呵責のない同僚「戸田」。いつか罰を受けるだろうと苦悩する勝呂にかける戸田の言葉「俺もお前もこんな時代のこんな医学部にいたから捕虜を解剖しただけだ。俺たちを罰する連中かて同じ立場におかれたら、どうなったかわからんぜり世間の罰などらまずまず、そんなもんや」そうなのか。それにしても著者の「沈黙」といい非常に凝ったアプローチ、章立てには舌を巻く。
★8 - コメント(0) - 2月15日

海と毒薬の 評価:88 感想・レビュー:1417
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