杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)

杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)
あらすじ・内容
“杳子は深い谷底に一人で坐っていた。”神経を病む女子大生〈杳子〉との、山中での異様な出会いに始まる、孤独で斬新な愛の世界……。現代の青春を浮彫りにする芥川賞受賞作「杳子」。都会に住まう若い夫婦の日常の周辺にひろがる深淵を巧緻な筆に描く「妻隠」。卓抜な感性と濃密な筆致で生の深い感覚に分け入り、現代文学の新地平を切り拓いた著者の代表作二編を収録する。

あらすじ・内容をもっと見る
264ページ
1858登録

杳子・妻隠(つまごみ)はこんな本です

杳子・妻隠(つまごみ)を読んだ人はこんな本も読んでいます

i(アイ)
3373登録

杳子・妻隠(つまごみ)の感想・レビュー(915)

自分を眺める浮遊した自分の視点、今ここにあることへの不安、現実の不可解さ、そうした世界の感じ方は最新の小説にまで続くものがある。伊藤潤二のホラー漫画がギャグになってしまうように、濃密すぎる神経症的世界が不安と笑いの境を掠めて広がっていくさまは唯一無二。
★1 - コメント(0) - 2月28日

杳子のみ再読です。初期の古井文学は構造がしっかりとしているのでそれ以降のものに比べればわかりやすいです。本編の半分以上が杳子がどこにいるか、たとえば、前を歩いているとか、森へ走っていたとかいう描写にさかれています。この「位置関係システム」を心象描写として捉えるとだいぶん理解しやすくなります。病んだ女の子萌え~な人にはおすすめです。萌え~が好きな人が果たして古井さんの小説を読もうと思うのか疑問ですけれども。
★3 - コメント(0) - 2月14日

両作品とも、体臭や湿り気が強い。作品世界に引き込む力が強い。「杳子」主人公の男性の目を通して描かれる、女性の描写が細かすぎるというか、他人の症状がそこまで把握できるものだろうかと怖いような感じがする。フィクションにしても緻密すぎて、半自伝なのだろうかモデルがいるのだろうかと穿ってしまう。「妻隠」狭いアパートに若い夫婦が暮らしている、その日常の切り取り方で、やたら官能的になるという。妻の方言エロい。豊満な妻エロい。福満さんのマンガとはずいぶん作風違うけど、そこだけ書き出すと一緒になっちゃう。
★4 - コメント(0) - 1月15日

貴方でさえ私の世界には入れないのね。。
★1 - コメント(0) - 1月6日

あまりに緻密であまりに官能的。日本文学の中で新しい何かを確立している。
★1 - コメント(0) - 2016年12月29日

自分もこの世界にすーっと引き込まれていくように読める作品。全てが終わったような冬に読むのはいいかもしれない。わからないこと・わかりにくいことを細部まで書き抜くと、ここまで伝わってくるのかと読了後は鳥肌。こういうのを筆力と言うんだな。
★1 - コメント(0) - 2016年12月29日

香子みたいな女性たくさん居そう。個人的には妻隠が、直接的な性描写は一切ないものの、淫靡な雰囲気を醸し出していて良かったかな。
★8 - コメント(0) - 2016年12月21日

個人的には、この内向の世代というのか、そのあたりの作品の雰囲気があまり好きになれず…面白みが感じられないというか…。杳子のキャラとか嫌いじゃないんだけど。
★3 - コメント(0) - 2016年12月8日

谷底で出会った、精神が少し人とは違うような女性。杳子の言動はもしかするとおかしいのかも知れないが、怖いくらい納得した。杳子をわかりかけてしまっている。ピース又吉が比喩でなく目眩を感じたと書いていた気がするけれど、本当にその通り。私の場合は目眩というより、周囲の物に押しこめられそうな閉塞感だったが。もうひとつの「妻隠」も良かった。展開がないと思う人もいるらしいが、それが気にならない、いやむしろ展開しない方が良いのではと思わせる筆力、描写。「杳子」の主人公の生活感が薄いのがまた興味深い。
★8 - コメント(0) - 2016年12月5日

不思議と引き込まれ、感覚が研ぎ澄まされて行くような文章。共鳴するでもなく、自分を投影するまでもなく、客観的に二組の男女の人生を覗き見しているはずなのに、杳子の理解し難い心のうちや、ぼんやりした夫婦像がなにか訴えかけてくる感じがして、彼らがとても近くにいるように感じる。
★4 - コメント(0) - 2016年11月25日

なんか最初は読みにくいなあと思ってたけど、途中からすうっと引き込まれた。まとっている空気の匂いのようなものが独特で、露悪的でもなく肉感的でもなく、それでいて人間の襞をくすぐるような、そんな小説。明確なオチはないのに、読後に読み終わったという妙な充足感があった。
★5 - コメント(0) - 2016年11月24日

☆×3.5…なんというか、とても、とても、怖い、背筋が寒いです。印象に残ったのは「杳子」のほうですね。これ、終盤まできちんと読んでいけば男の人が明らかに女性の足かせ、いわゆる「共依存」を描いているのがわかります。そう思うと、男(S)がなんで姉との対話でとんでもない発言をしたかが理解できるはずです。そう、彼は「病気」の彼女を離したくなかったわけですから。妻隠のほうは一見してちょっと騒々しい日常に思えてきますが…これ、最後どうも怪しくはありません?うがってみてしまうのですが。
★4 - コメント(0) - 2016年11月17日

周りの健康的な人々のようには生きられない、と自覚する瞬間。そして、知人を安心させようと「普通」なヤツになろうとするか、もしくは現在の病的な自分を大事にするか、という選択。最後は「自分は健康的な人間か?」と自問させられ、答えに窮してしまった。
★6 - コメント(0) - 2016年11月11日

冒頭、岩に囲まれ身動きが取れなくなる描写は圧巻。風土とともに培われた日本人の自然観、身体観のなかの重量感や高低の感覚を無駄のない緊密な筆致で浮彫りにしていた。しかし以後の展開はふつう。病気を外側から描くことに終始している。姉妹で形成される家族というのはおもしろい。妻隠も同様にふつう。
★3 - コメント(0) - 2016年10月11日

登山の途中、一人岩上に座る杳子と出会い、再び都会で偶然にも再会する主人公。付き合い始めて次第に彼女の精神が病んでいることに気づいていきますが、会うことを止めないのは彼女の美しさのためか、それとも主人公の純心によるのでしょうか。不思議な物語ですが青春を感じました。
★3 - コメント(0) - 2016年10月2日

内面に内面に入り込む。そしてその人自身となって世界を見たとき、当たり前とはこれほど脆い偏見、あるいは独断なのかと思う。他者の視点に立つということ。他者になって世界を見る、ということ。彼女が狂っていると、誰が言えるだろう。彼が狂っていないと、誰が言えるだろう。そういう世界に、私たちは生きている。
★3 - コメント(0) - 2016年9月17日

心を病んだ杳子の言動は突拍子もなくかなりぶっ飛んでいるが、全く理解できないわけではない。自分というものを意識し過ぎて身動きが取れなくなってしまうような感覚は、自分の中にも少なからずある(ただの自意識過剰と言えばそれまでだが)。「健康になるということは、自分の癖にすっかりなりきってしまって、もう同じ事の繰返しを気味悪がったりしなくなるということなのね」(p.166)という杳子の台詞が、この病の本質を言い表している気がした。戸棚の奥を異様に気にする礼子の偏執的な行動(妻隠)からも、それに近いものを感じる。
★5 - コメント(0) - 2016年9月17日

「杳子」精神を病んでいる杳子の発言にお手上げで引き、男がなしくずしにセックスしたことに引く。ドン引きの中、文章は杳子の語りに踏み込みはじめ、杳子の言わんとするところが少しずつわかってくる。いつのまにか前のめりで物語を読むようになり、階段を上がるように最終章へ。最後には不思議な充足感が残る。「妻隠」ねっとりとしているのに同時にどこかおどけているようなタッチ。腐りかけの果物のようなお話。好みが分かれそうである。
★3 - コメント(0) - 2016年9月15日

精神の不安定さ、緊張した空気感、自意識の揺れ。「孤独」な者同士がどんどん内側へと向かっていく人間たちを描いている。そうした人間にとって最後の居所は自分の「中」なのかもしれない。
★2 - コメント(0) - 2016年9月12日

じわじわと侵食されるような、何ともいえない不透明な文体がとても印象に残った。感想が書きにくくてもう一回読んでみたけどやっぱり上手く書けない。ちゃんと買って手元に置いておきたい一冊。
★24 - コメント(0) - 2016年9月4日

今まで出会った事の無い表現力。無駄の無い丁寧な一文一文に緊張感を持って読んでしまう。素晴らしい作品だと思うけれども、まだまだ理解不十分。
★7 - コメント(0) - 2016年8月30日

ムジルの翻訳は好きだが小説は私には合わなかった。文章の湿り気と生活臭が強すぎた。同じ暗く瞑想に浸った文体でも埴谷雄高みたいな乾いて、高踏的で、幾何学的で、遊戯性のあるものが好き
★5 - コメント(0) - 2016年8月20日

何度読み返したかわからない、自分にとってまさに人生の一冊。つい手に取ったらまた読み通してしまった。未だにそれだけの吸引力があるのは、自分が変わらないからなのかも知れないが。古井由吉の文章は、ただ意味を伝えるだけじゃない、もっと感覚が揺さぶられるような体験をもたらしてくれる。ふつうの小説は、読んでると、意味を追うだけで何だか疲れてしまうことが多いんだよな。
★7 - コメント(0) - 2016年8月19日

言葉が硬いわけでないのに、重苦しい。緊張。未だ山中に杳子と共に岩に囲まれて一歩も動いていないような気にすらなる。題名は古い印象だが時代を意外なほど感じさせない。設定だけなら若い男女の恋物語なのに、「僕に接吻してみなよ」という微笑ましいやりとりの叙述に「目には嫌悪があった」なのだ。軽い病という非日常の中で妻は夫の顔がわからず、夫も妻を独り身のように見つめる。人間の内部の肉ひだを拡げ出すような、肉体が定形でなくスライムのような、でも静かな、面白い作品だった。妻隠、急にフグリ出てきて笑った。
★4 - コメント(0) - 2016年8月3日

どちらも濃密で緊張感を強いる文体です。「杳子」にある、存在の不確かさを自身の視覚、聴覚、触覚で手ずから確かめるあり方は、原初の人間としての屹立感を抱かせます。その意味でこのまどろっこしいほどの感覚文体が必要だったのかと思わせます。男女の関係もその存在の不確かさを五感の官能性で癒す物語か。「妻隠」も存在の不安ゆえに揺らぐ同棲のごとき夫婦を老婆やヒロシの外部からの干渉が、性の感触を支えているようで、淫靡な空気が生という実質を包んでいる。どちらも高度にエロチックな作品でした。
★8 - コメント(1) - 2016年7月26日

正直、読むのに少々骨が折れる小説ではあった。けれども、その一方でこの小説が醸し出す不思議な魅力に強く惹かれてしまった。内向的な恋愛小説というか…独特の世界観に満ちている。
★12 - コメント(0) - 2016年7月17日

わずかな揺らぎから目が離せなかった。人物と空間、共鳴しながら震う。やがて落ち着くべきところに辿り着きながらも、まだ不安が残る、靄のかかった読後感。/と言いながらも、実際は単に理解していないだけ、かもしれない。しかし理解を妨げる何らかのものは、杳子のように、人を惹きつけるものに違いない。
★22 - コメント(0) - 2016年7月10日

くっきりとした水平線から少し目をそらすと、漠としてとらえ難く何も存在しない空間が広がっている。存在のはかなさや不確かさを突き付けられて感じる底知れぬ不安。彼女も外界と分け隔てられくっきりとした輪郭を持ち、自分の重みに耐えているようでいて、外部のものが雪崩れ込んでくるような弱さや曖昧さを内包している。自己の存在の根本にある深淵を否が応にも見つめ、向き合わざるを得ない事に対する恐れ。杳子を通して、生きる喜びと苦しみを覗き込んだ気がする。戦後、経済的に立ち直りながらも、不安や戸惑いを感じさせる時代背景を感じた。
★24 - コメント(0) - 2016年6月28日

ピース又吉のエッセイがすごく心に残っていて手に取りました。「病んでいる」とか「夫婦だ」とか定義付けることに何の意味もないような気がしてくる。社会的には必要なんだろうけど、当人にとっては。ストーリーは好みではない(たぶんあんまり理解できてない)ものの、面白い描写があちこちにあって、その感覚を想像することは楽しかった。暗くてじっとりして生々しいんだけど、素っ頓狂な感じ。
★17 - コメント(0) - 2016年6月22日

自らの中の狂気を、他者の中に認識することによって、同罪意識を愛情へと昇華させようとする。若き日のよくある失敗です。しかしその二人を取り巻く世界観のギャップを表すことにより、贖罪の意識に目覚めていく。二作品。共通するものもありました。
★2 - コメント(0) - 2016年6月21日

ぬめった質感の肌に絡め取られたような倒錯感を覚えた。 杳子という自由奔放な人物に自分も振り回されたいという欲望がじわりと湧いて出てきた。芥川賞を受賞したことも納得である。このような心地よい読後感の小説を久しぶりに読んだ。
★2 - コメント(0) - 2016年5月27日

どうかこの二人の関係が崩れてしまうような事件が起こりませんようにと祈りながら、はやく読まなければ何か起こってしまいそうで、大丈夫だと確認したくて、安心したくて必死になってページをめくり続けた。生きていく上でまとわりつく濃密なもの、誰しもがもっているはずなのに、口に出すのは憚られるような、人には見せてはいけないような、そんな曖昧だけれども確かなものが存在している物語だと思った。くらくらした。
★4 - コメント(0) - 2016年5月12日

比喩の可能性、表現の可能性をみた。様々な視点から、感覚からようこの一挙手一投足を書き記すことで、彼がどんな人でどんな性質の持ち主なのかも同時に浮かび上がらせていて、私もこの2人の閉鎖的な空間に入ってしまいそうになった。いや、実際入っていた。外を気にしない2人だけの時間は美しくて、神秘的とさえ思う。しかし、社会の中で生きていること、それからは逃げられない。対社会になると、関係は不安定さをみせる。妻ごみでも、それは描かれており、いつでも崩れそうな関係の中で、脆さを抱えて生きる男女を書いている。
★2 - コメント(0) - 2016年4月18日

na
先日、亀山佳明さんの『記憶と分身ー古井由吉「朝の男」をめぐって』という論文を読んだので、その考察を踏まえて「分身」というキーワードを念頭に再読。学生の頃に読んだ記憶では杳子の不安定さばかりに気を取られていたけれど、こうしてみると語り手S君も丁寧に描かれていることに気付いた。『妻隠』は杳子の後日談としても読めて楽しかった。古井由吉さんの他の作品もこの勢いで読んでみようと思う。
★2 - コメント(0) - 2016年4月7日

これは知らない感覚をもたらしてくれた。「今があたしの頂点みたい」と言ってるそばから軀が「輪郭だけの感じに細って」いくとかね、ああ、そうだよな。そういうもんだよな。別にそれでいいんだよって。「まわりの人を安心させるっていうことよ」とか、最早ひとつの真理じゃないかと。この本はちょっと手放せないかな。「妻隠」に関してはなにが言いたいのかちょっとよくわからなかったけど、これはNTRですわとか思って滅茶苦茶どきどきしました。自分だけじゃないはず。
★3 - コメント(0) - 2016年4月6日

ピース又吉の帯で買った。一組の男女の交流を独特の表現で描いているけど、この世界観を理解するにはもうちょい読み込みが必要だ。
★2 - コメント(0) - 2016年3月30日

Y
空間がぐうっと引き伸ばされてばらばらになり、自分の居場所が、それこそ精神的に、物理的に、見当たらなくなってしまい、どこでもない暗闇に放り出されてしまいそうな感覚を呼び起こす。そして放り出されてしまった後、人と人との関わりすらも脆弱な手触りに返ってしまうように思える。
★6 - コメント(0) - 2016年3月29日

この作品を読み終えて私はつかみ所のない漠とした印象を抱いていた。しかし、あまりにも漠としてをり、とても疲れてしまつた。たしかに、暗いといふ印象はもつた。しかし、それだけなのだ。何かがわかるやうでゐて、何もわからない。そんなもどかしい気持ちもあるので、再読をしようと思ふが、時間をおいてもう少し私が大人になつてからにしよう。
★15 - コメント(0) - 2016年3月23日

読むのがつらい。読んでいるとこちらまで胸が苦しく重くなる。芥川賞受賞とのことだが、私には難しかったようで、この作品の良さ分からず読了。
★1 - コメント(0) - 2016年3月18日

あまり読んだことのない種類の本だった。ようこ、独特な雰囲気で、よくわからないんだけど、そこが、良かったともいえる。
★1 - コメント(0) - 2016年3月16日

杳子・妻隠(つまごみ)の 評価:62 感想・レビュー:286
ログイン新規登録(無料)