錦繍 (新潮文庫)

あらすじ・内容
会って話したのでは伝えようもない心の傷。14通の手紙が、それを書き尽くした。「前略 蔵王のダリア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像すら出来ないことでした」運命的な事件ゆえ愛しながらも離婚した二人が、紅葉に染まる蔵王で十年の歳月を隔て再会した。そして、女は男に宛てて一通の手紙を書き綴る――。往復書簡が、それぞれの孤独を生きてきた男女の過去を埋め織りなす、愛と再生のロマン。
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錦繍の感想・レビュー(3248)
- 感想・レビュー
- ネタバレ
ブロガーさんが何度も繰り返し読む本で、読む度にその時々で抱く印象も違ってくる不思議な本。と紹介されていたので、いつか読みたいとずっと思っていました。さして分厚くもないのに、内容が想像以上に凝縮されており、読むのにとてもエネルギーを消耗してしまったように思います。これでもかというほど思いも寄らない出来事が盛り込まれていますが、その内容が誰にでも起こりそうなリアリティーもあったからでしょう。どの登場人物の立場からも、それぞれの思いが手に取るように解るような気がしたのです。令子が手紙を読む場面で涙しました。
「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれない」という言葉の意味を分かるだろうか。私にはよく分からない。生と死は真逆であり、同じなどとはありえない。この言葉を理解せずにはこの小説を理解したことにはならないだろう。あえて解釈するならば、いつまでも過去にこだわるならば生きていることにはならず、将来に向かって前にすすみはじめることが本当に生きるということ、ということだろうか。過ぎ去った日々はいくら後悔しても戻っては来ない、過去を捨て去り今の自分を一生懸命に生きることが大切なのである。
文通っていいなとまず思いました。偶然の再会から、手紙を送り、そこから文通が始まる。
ただの手紙のやり取りだけで、こんなに深い物語になるのだなと、そしてまた文通だからこその切なさが良かったです。
書簡のやり取りだけでストーリーが進んでいく作品でしたが、男女二人の主人公が十年の時の隔たりを徐々に埋めていく過程が面白かったです。男が幼馴染に刺され無理心中に巻き込まれ、女と離婚するが、十年後偶然蔵王で再会する。男の生活苦にまみれた姿が気がかりで女は唐突に手紙を出すところから物語は始まっています。手紙とはいえ小説なので恐ろしく長いもので、そこは目をつぶって楽しんでほしいと思います。
書簡形式の小説は主人公らの書き言葉から感情を直接に表すのではなく、時間をかけて一度頭の中で整理されたものであり、今まで読んだ小説とはかなり違った。自然の陽がお互いの状況によって言い表し方が異なっており、繊細な文章だった。
離婚した男女2人による往復書簡。普段、なかなか使わない綺麗な言葉で手紙が綴られているので、日常とは少し違う感覚を味わえました。大切な人の前では、私達は、思いもよらぬ行動に出たり、本心でない事を言ってしまいがちです。でも、時間をかけて書く手紙なら、その影響は少なくて済みます。また、年月が過ぎると、相手の許せなかった所や、信じられなかった所が、客観的に理解出来るようになります。年月を重ねた後での手紙のやり取りを読み進め、2人の男女の過去の孤独で暗い場面から、次第に前を向く希望を感じ取ることが出来ました。
コミュニケーションが際立った手紙のやり取りは一通ごとに提案と実施と検証を繰り返して感情としては全然クリアじゃないけど筋書きはクリアででも点で見るとクリアだけど線で見るとどこに行くのやらわからないうまく何やらわからない被写体に絞りをきった写真みたいなよくわからなさ
偶然再会した元夫婦の手紙のやり取りが綴られた物語。手紙を通して、当時の事件の事実や、登場人物たちの心情がよく描かれています。時折垣間見られる感情の起伏など、読んでいて胸が詰まります。作中にモーツァルトがよく出てくるので、曲を流しながら読んでいたら余計しみました。解説にもある『ハッピーエンドの小説ではない。かといって、男と女の愛の終末を示す悲しいお話でもない。』まさにその通りでした。
そんなに長くはない物語ですが、心に染みました。往復の書簡と云う形で、ある事件までは夫婦だった、夫々の心が語られます。手紙が往復するうちに明らかになる事実から、今でも二人は、充分に理解し合える関係だな、と感じられますが、今ある生活を崩す方向には、物語は展開しません。ハッピーエンドではありませんが、哀しいというのでもなく、冒頭にも書きましたが、やはり“心に染みる物語”でした。
14通の往復書簡によって、別れた夫婦の十数年間が しだいに明らかになっていく物語。別れるきっかけとなった無理心中事件の真相や、現在に至るまでの出来事、お互いの心理描写が手紙の中に丁寧に書かれている。10年の時を経て再会したあとの文通だからこそ こんなにも冷静に自分や相手の心情を受け止め、気持ちを浄化することができるのだろう。手紙やレコードなど、昭和の時代にスリップした気分でなつかしく、久しぶりに深くて心に染み入る小説が読めた。
有馬目線で一気に読了。気が強く芯のある亜紀、聡明ではないかもしれないが優しい令子、男の本能を刺激する色気を振りまく由加子。皆いい女だから許してよという男のワガママ。亜紀の父昭孝が有馬に『ほんまに緊張してうまくいかんかったからなぁ。断じて亜紀には言ってはならんぞ。』と打ち明けるシーンは笑。
ある日、心中事件で相手の女性は死に、夫も生死をさまよっていると知らされた亜紀。夫の裏切りに心を痛め、再婚して生まれた子供も障害を持っていた。偶然、元夫と出会った亜紀は手紙を書き、交換するようになる。真実がわかってくるうちに、過去にとどまっている自分達が進むべき道が明らかになっていく。
最近知人に薦めたが自分でも細部を忘れているなぁと思いつつ何度目かの再読。初読から30年近い年が経って、それこそ何度も読み返しているのに何度読んでも参ってしまう。さすがに今読むと若かりし著者の気負いみたいなものが鼻につかないでもないのだが、そうした生硬さを凌いで余りある瑞々しさと豊潤さ。令子が手紙を読んで泣き、この人のことが好きだと言う件りで毎回もらい泣き。あの時自分はどう感じていたか、と長い時を経たあとで改めて語れる機会なんて、実際にはなかなかないもんねぇ。因みにkindle本です。
元夫婦の手紙だけでのやり取りが、小説になるんだ。現代だったら、メールやラインのやり取りが果たして小説として成立するか?と余計なことを考えた。女性の言葉遣いが上品でいいとこのお嬢様感がわかる。ガサツな言葉では、たとえ手紙であってもだめだ、とまた余計なことを考える。
男女がある事件をきっかけに別れ、そして往復書簡を通して、それぞれが未来へと再生していく物語。嫉妬、憎悪、悲しみ、生きる喜びと、様々な感情の変化が心を揺さぶられました。内容のある一冊です。
厚みはそんなにないのに、心にずしっとくる1冊でした。最後は決してハッピーエンドとは言えないものの、2人とも前向きでいられるようになったのは良かったと思います。
ダリアの花言葉…裏切り。ミモザアカシアの花言葉…秘密の恋。業(カルマ)…「過去(世)での行為は、良い行為にせよ、悪い行為にせよ、いずれ必ず自分に返ってくる。」という因果応報の法則。
離婚後10年経って偶然再会した元夫婦がおずおずと交わした往復書簡。あの時聞けなかった気持ち、離婚の原因となった事件の真相、そして近況を綴る。しっとりしみじみ。
人生を振り返ると もし、れば、と思う出来事もある。それも含めて 今 は存在する。
後悔しないために思ったことは心にしまわず、相手に話すこと。気持ちは話さなければ分からないのだ。
そして、こうあることは全て自分の 業 であること。誰かのせいではなく、自分がそうするのだ。
武者小路実篤の友情からの手紙形式なので読んでみた。過去が自分を作りつつも、未来を見て生きていく。今年1番良かったと言ってもいい良い本でした。
複雑な大人の恋を書簡形式の小説で読ませる。書簡というのは、他人の秘密を覗き見しているようで、ドキドキします。薄い本だけれど、内容は濃く、厚い(熱い?)それにしても、ちゃんとした手紙なんて、何年書いてないだろう・・・。前略、草々、かしこ、昔、目上の方に出す時は背伸びして使っていたけれど、この書式は絶やしてはいけないなと思う。Eメールでも使おうかな?
友達に薦められて手にしました。元々、宮本輝の最近の作品が好きだったんですが、本当はこういう物語を書ける作家だったんですね。12年振りに偶然再会した元夫婦、有馬靖明と勝沼亜紀の往復書簡を軸に展開される過去と将来の物語。溜め息が出ます。それにしてもキチンとした手紙なんて最後に書いたのはいつだろう...S51年の出さずに棄てた「あれ」かなぁ...。手紙を書かなくなって失ったモノの大きさに気付きます。
離婚した夫婦との手紙のやりとりのみで構成される。往復書簡形式。 こういう小説もあるのかと。武者小路実篤の「友情」もそうだっけ。 手紙、もうこれは昭和のアイテムか。それがまたいい。短いお話ながらも読み応えたっぷり。令子がいい。あとモーツァルトを聴いてみたくなった。
偶然の出会いから離婚した夫婦の文通が始まり、痛ましい過去に二人にしか理解出来ない気持ちへの決着をつけた。決してハッピーエンドではないけれど過去の呪縛から解き放たれて未来へ向けての第一歩を踏み出す二人には幸せが待ってると思いたい。素敵な往復書簡でした。
本当に本当にいい本だと思います。不幸な不倫からの事件、それに至るまでのこと、その後の辛い人生、そこからの再生。十数年ぶりに読んだけれど感動した。
離婚してから数年後に再会した男女。離婚に至るまでの痛ましい出来事を往復書簡形式で綴った美しい作品。最初の手紙では互いにどこか相手を責めている文章だったのに過去、現在と話が進むに連れ、感情に変化が起きる。どちらが悪いか、痛みが強かったのはどちらか、そんなものは既にどうでもよく相手に向けてしたためることにより叡智が養われてゆく。手紙はふたりが再生するためのカウンセリングだったのだと思う。せつないけれど心がしんとする最後の手紙に深い信頼と友情が見え、互いに大切な人を大切にしていくであろう姿が見えた。
男女のすれ違いの過去、現在、そして未来が書簡体で綴られていく。繊細な言葉で読者は想像に任せるしかないが、どこでボタンの掛け違いがあったのか、ボタンを掛け違わなくなっても2人は別れる運命にあったのではないのかと思われる。2人の今後の人生を想像して、2人とも幸せに暮らしてほしいと思った。
久々に、読んでおいてよかったと思える作品でした。離婚した男女の往復書簡で綴られていくのも、ゆっくりと時間が流れる感じで好みです。読み終わった後に『生きていることと死んていることとは、もしかしたら同じかもしれない。』という文中の言葉がしばらく頭から離れませんでした。
この読後感、秀逸です。決してハッピーエンドではない。でも辛い未来を暗示する終わり方でもない。離婚から10年。手紙を交わすことで10年に及ぶ呪縛から解き放たれたふたり。この先も辛い人生がふたりの先にあることには変わりはないのだけれども、少しだけ光が見えたところで筆を擱く。書簡体だからこそ表現出来る主人公の心の揺れと変化が絶妙な大人の一冊。
読み始めは元さやに納まるのかなと思ったんですが、違いました。 亜紀が幸せであってほしかった。 手紙を出すに当たって、どうやって有馬の住所を知ったんでしょう。結構 苦労しそうだけど。 毎回 毎回 長い手紙で、定型料金では無理だろうからわざわざ郵便局で重さ量ってたのかなあと、どうでもいいことを考えながら読んでました。
今ではもう、こうした長い手紙を、いや長くなくとも手紙というものを、書き交わすことで奏でる妙なる調べを、私たちは退化させてしまってきた。
浮気と無理心中と離婚。ドロドロせずにいられるかってくらいの設定なのに、どこか清節。
生と死。永遠の生命。
「霊魂などではなく命そのもの。ただ己の成した悪と善だけを内蔵して、果てしない苦悩に責めさいなまれて、死んでいながらなおも存在していたもの」
書簡の往復が、過去を過去とし、未来へ繋がる一歩とする。読了直後に読み返したくなる生命の一冊。素晴らしい。
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