形式:単行本
出版社:新潮社
形式:文庫
形式:Kindle版
『あっちのヨーコこっちのヨーコ』にて、恨みつらみしかないから、もっとどぎつく真っ黒にしてと、本の帯に対して言われたと装丁の丹羽朋子さん。
佐野洋子が実際そうしたように、同性である母親を憎むことは容易いはずだ。だが男の場合はそうは行かない。父親と違い、ある年齢を超えると腕力では絶対に自分の方が勝ってしまう。女であるがゆえに持つその絶対的な「弱さ」こそが、逆説的に母の支配を決定付ける。男の子供が、父親には抱かないが母親に対してだけ抱く慕情の正体がこれである。男の俺には到底信じられないというか、全くの他人事ながら怒りすら覚えたのが、「手紙にある『母より』という文字が気持ち悪い」と吐き捨てる件。
そこで語られているのは母に対する嫌悪ではなく、本当は自らの母性に対する違和感なのだろう。佐野は「母は私に嫉妬していた」と確信はしても、「私が母に嫉妬していた」とは考えない人である。母との確執は結局のところ、「自己を見ない自己嫌悪」に過ぎない。おめでたいと思うが、同時にこのエゴの在り方こそが佐野を表現者たらしめている。しかしそのご都合主義は他の誰でもない、自分の子には見透かされていた。佐野の母親の名誉のために全く根拠なく断言するが、彼女が子供の手を振り払った回数よりも、手を繋いでやった回数の方が絶対に多い。
コメントありがとうございます。佐野さんの母子関係は作品の原点になっていると強く感じる一冊でした。
nozomuさん。「わたしの息子はサルだった」に続いて、感想に惹かれ読みました。強烈な読書体験になりました。ありがとうございます。今後も好奇心をくすぐる感想楽しみにしてます。
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