形式:文庫
出版社:早川書房
“わたしは何歳だろう? 四歳? 五歳? 突然みんなが笑顔でわたしのうしろを指さし、わたしもうしろを振り返る。わたしの母が、屋敷から裏庭に出てくる戸口に立っている。ピンクの砂糖ごろもがかかり、白いマジパンでできた大きな薔薇の花のついた大きなケーキを持っている。母はにこにこ笑い、とても幸せそうで美しい”(P141)母危篤の報せを受け急ぎ旅だつ。もちろんわたしの母ではない。デニーズ・ソーンの母だ。コネチカットの家、バースデー・パーティの思い出。
“レッチド・フライは鮫がいっぱいの壁に背を向けてすわり、香りのついたお茶を飲んでいた。彼は黒蓮飯店を本拠地にしていた。それは、この店が壁いっぱいの長さの海水魚槽を持ち、鮫やフグ、エイ、クラゲやその他の、見た目はよくないかもしれないがカラフルな深海魚をたくさん”(P271)鮫皮スーツに眼帯。高層ビジネスビル最上階のレストランにてイガイのオイスターソース蒸しをほぼ毎日オーダーできる大物ぶり。あえて近親婚を繰り返した超能力家系出身だからだけではない。吸血鬼〈貴族〉モーガン卿の下僕だからこそ、のし上がれたのだ。
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