形式:単行本
出版社:東洋経済新報社
数式で人間は解けないよ、という理解で良いのか。それにしても、計量経済学って、現実に役に立っているのだろうか。
著者を知ったのはリーマンショック後のNHKスペシャルだった。名だたる経済学者が登場する中で、「なぜ成長し続けなければならないのですか?」と少し欧米型資本主義経済を小馬鹿にするような雰囲気で話していた様子が印象に残り名前をメモしていた。古いメモを整理していた際に偶然思い出し10年越しに著作を手にすることとなったが読めて良かった。著者が少年だった頃はチェコはまだ共産国家。資本主義経済が当たり前の世界で育った私にとって、自分の見識の小ささと世界の大きさを知ることができた。良き一冊だった。
「人間は存在論的に退屈」(ヤン・パトチカ)という記述から、退屈論に通じる。また、成長や数字的分析のみを追求することを制し、哲学や神学、人類学などにより経済学を再構築せよ、という主張は、美意識とも解釈できる。 ということで、最近読んだ本と結びつけながら読むことができ、さらに楽しめました。
「注意深い読者なら、本書が答を出していないことにお気づきだろう。しかし、答がありそうな領域を示そうと努力したつもりである。本書では、歴史の再確認を通じて経済学の脱構築以上のことを試みた。ある意味では新しい経済学に向けて一歩踏み出し、主流派経済学の見方から一歩退いたと言ってもよかろう。経済学者は、「人間というものをどう捉えるか」をあらためて考え直すべきである」(484頁)
「野生は過去に、英雄伝や映画の中に、あるいは遠いジャングルだけに存在するのではない。私たちの中にある」(485頁)
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