誰がドルンチナを連れ戻したか

誰がドルンチナを連れ戻したかの感想・レビュー(70)

イスマイル・カダレは「夢宮殿」に続いて読んだのは2冊目。やはりアルバニアの歴史に明るくないと理解し難いのだろうけど、作者の祖国への想いが詰まっているのは強く感じる。アルバニアは他国とほとんど外交がなかった時代もあるらしく、この作品はそんな背景も含んでいるのかなと思った。アルバニアの伝説を事件として用いた部分はミステリアスで惹かれた。様々にイメージが膨らんでいきとても面白い。
★9 - コメント(0) - 2016年11月6日

コンスタンチンとドルンチナの話は、もとはアルバニアの伝説だそうで、筆者はこの伝説が生まれた背景を物語にした。遠方に嫁いだ妹が、亡き兄に連れられて帰省し、妹も母もショックのあまり死んでしまう。この出来事は、亡き兄が立てた誓い(ベーサ)、母親が墓に囁いた呪いの言葉…と次々明らかになる事柄に加えて、死んで蘇る者がキリスト以外あってはならない、という命題を挟んだ教会同士の対立も含め、大事件に発展する。一体誰がドルンチナを連れ帰ったのか?ストレスが出した結末には、筆者がアルバニアを思う気持ちが込められている。
★11 - コメント(0) - 2016年10月11日

以前から気になっていた作家。こちらが日本で初めて刊行された作品ということで手に取った。「事件です」との簡潔明快な台詞から物語は幕を開け、前半は戯曲のようなテンポの良さでミステリーが進行していく。しかし後半に差し掛かると、この事件が単なる怪奇的な出来事では済ませられない大事であることが判明する。真相と謎を追求していくうち、国家的・民族的な背景と共に事件の重大性が浮かび上がってくるのだ。後半の演説の言葉の重みは知識不足で完全に理解したとは言えないが、アルバニアという国に興味を持てたことだけは確かである。
★29 - コメント(0) - 2016年10月5日

遥か遠方へ嫁いでいたドルンチナが、ある日実家へ戻ってくる。彼女は兄のコンスタンチンに連れてきてもらったと言うが、彼は何年も前に死んでいた。そのことを知ったドルンチナは母と共に狂死してしまう。一体誰がドルンチナを連れ戻したのか。警備隊長ストレスは、蘇った兄が妹を連れ戻したのだ、という噂を払拭するべく捜査を進め、ついにドルンチナを連れ戻した男を逮捕するが……。ラストのストレスの演説、それまで現実の下に隠されてちらちらとしか姿を見せなかったものが一気に噴出した感じで面白かった。
★5 - コメント(0) - 2015年9月25日

遠方に嫁いだ妹ドルンチナを誓い(ベーサ)として連れ帰る兄コンスタンチンの物語は、アルバニアの古くからの言い伝えだそうだ。妹を家に送り届けたあと、コンスタンチンがひとり墓地に戻るところで伝説は終わるのだとか。そう聞くとなんとはなしにロマンチックだが、カダレは伝説の背後にあるだろう物語を本書で想像してみせた。ミステリーではないのでラストで種明かしがあるわけでもない。しかし警備隊長ストレスが大集会でふるう熱弁を、当時のアルバニアの孤立状態を知った上で読むと、カダレ自身の国を強く案じる気持ちを思い知ることになる。
★40 - コメント(4) - 2015年7月9日

死んだ兄が墓地から蘇り、遠くに嫁いだ妹を連れ戻す、という民間伝承に取材した小説。主人公の地方官吏は、死者の蘇りを信じる民衆の声が大きくなったため、キリスト以外の復活を教条的に認めない東方教会や首長から大きな圧力を受ける。しかし、彼は大主教も出た公聴会の場で、客観的事実に基づく結論を言明する。宗教と民間信仰のせめぎ合いからは、立てた誓いは必ず守るアルバニア人の矜持を読むこともできるし、刊行当時の国際情勢のなかのアルバニアの政治状況をも覗わせる。読者の想像力を大いにかき立て、様々な解釈の可能性を提示する佳作だ
★15 - コメント(0) - 2015年3月15日

『砕かれた四月』から時代を遡る。
★3 - コメント(0) - 2015年1月7日

中世アルバニアが舞台の怪奇な事件をめぐる物語。古くからある伝説をベースにしているらしい。ただし権力の陰謀も絡まり、現代アルバニアに対する寓意も読み取れ、単なる怪奇譚ではない。謎を説く探偵役の主人公は、意志が強く、頭脳明晰で近代的な人物。しかし単純な謎解きでないところに、芥川龍之介の「藪の中」を彷彿させる哲学的な深みがる。しかし物語が佳境を迎え、読者に考えることを要求する文学性を発揮する前は、エンターテイメントとしてよくできており一気に読ませてしまう。素晴らしい作家。アルバニアへの興味も強くなった。
★3 - コメント(0) - 2014年11月19日

死者に導かれドルンチナは遠い嫁ぎ先の土地から実家に舞い戻ってきた。兄と一緒に帰って来たと主張するが、彼は何年も前に死んでいた。不可解な謎を残してドルンチナは死に、謎を解く中で浮き彫りになるのは様々なものの対峙の中で深まっていく国家の混迷だ。死者と生者の対峙は相反する者同士の対峙に表面上は見えるが、いずれも生者から生まれた「物語」であり、生者の圧倒的な優位さ故、対峙を均衡させるために死者の物語が肥大化し、この国家を「死者の声」で覆ってしまったのだろう。一人の幽霊譚が終いには国家を包み込む亡霊譚になる。傑作。
★29 - コメント(0) - 2014年3月6日

日は落ち、死者は語りかけるーー。毎年某月になると、国内は「春樹運動」が高まるが、同じく注目を集めるアルバニアの、この作家を知っている人がどれほどいるだろうか。イスマイル・カダレが得意とするのは、「生者と死者の交錯」だ。本作はアルバニアの民間伝承に基づいた初の邦訳作品である。ドルンチナを連れ戻したのは誰かわからないまま、各々の人物の考えが展開する。その宙吊りはどこまで続くのか•••二つの全体主義の影響を受けただけでなく、あらゆる世界の狭間に位置するアルバニアを外部の一歩引いた場所から描いた、カダレの傑作だ
★6 - コメント(0) - 2013年12月1日

全体的に緊張の糸を解す隙も与えないほど、張り詰めた作品。表題の通り、「誰が」連れ戻したか、ミステリーのように探られていくが、最後は思想によって回収される。これには賛否両論があるだろう。アルバニアの伝説を基に普遍性を備えた寓話が紡がれる。
★3 - コメント(0) - 2013年11月2日

アルバニアという国はなじみがないけれど、ミステリーの体を借りた語り口でするすると読めた。寓話的なストーリーが最終的に普遍的な思想に集約されていくのが心に残りました。この「寓話的要素」は全て、昔から周辺国に翻弄され続けたアルバニアという国の暗喩なんだろうか。今の日本の現状にも当てはまるようでもあり。読んだ後にはたと止まって色々考えさせられる本でした。
★4 - コメント(0) - 2013年10月5日

幻想怪奇的な小説なのかミステリなのか作者はどこに着地をさせるのかと思っていたら他国や宗教に翻弄される「アルバニア」という国の話だった
★1 - コメント(0) - 2013年6月11日

「再び雪が降り始めていた。しかし今度の雪は前とは違って、もっと人間味が感じられた。白くなるべきところは白くなり、黒ずんだままでいるべきところはそうなっていた。家の庇にはこの冬初めて氷柱が垂れさがり、急流もいつもどおりところどころ凍りついていた。氷は小鳥が乗っても割れないくらいしっかり張っている。一目見て、大地も甘んじて受け入れるいかにも冬らしい冬だと思われた。」
★2 - コメント(0) - 2012年7月23日

遠方に嫁いだきりだった娘が突然帰ってきた。ドア越しの再会で母娘ともショックで危篤状態、なぜ?怪奇めいていると思えばミステリともなり、噂に乗じた宗教界の対立も絡みと、確定できない謎に引き込まれてゆく。現実に徹しようとしていた警部ストレスの捜査は一転、演壇での場面で魅せる。最初はドルンチナがチルドレンに見えてしまったのだけど、このドルンチナとコンスタンチンの物語は実際にアルバニアに伝わる伝説だそうで、カダレの他の作品にもエピソードとして出てくることがあるそう。誓い(べーサ)という習俗が興味深いモチーフ。
★10 - コメント(0) - 2012年7月22日

タイトルには、ドルンチナの名前があるが、彼女は主人公ではない。そして一番の謎はドルンチナを連れ戻したコンスタンチンの招待が何者だったのか? に変わる。また中世アルバニアの入り乱れた宗教がよく分かる作品でもある。ちなみに現在はイスラム教国であるが、中世では異なる。
★2 - コメント(0) - 2012年6月28日

ti
力と力の間にある土地では、時に現実に起こりえない事が起こる事がある。何故なら出来事は全て現実である必要などなくて、誰かがそれを信じたいかどうかという問いかけの上に、何かしらの解釈を持って起こるからだ。東西冷戦下二つの信仰の狭間に揺れたアルバニアという国は、その事を身を持って知っている。「一方で虚である事も一方では真であるということか?」。多分、この国ではイエスなんだろう。
★2 - コメント(0) - 2012年5月21日

まんまタイトル通りの謎を追いかけるお話。不思議な雰囲気で面白かったです。怪奇・幻視めいたシチュエーションからスタートして最後には現実的に着地させるのかなーと思ってたら、なにやらもっと大きく物語を包み込む観念があったようで、ラスト2章はゾクゾクしました。
★3 - コメント(0) - 2012年2月29日

風習や伝承がまだ力を持っていたアルバニアでの物語。なんとなく「スリーピー・ホロウ」の序盤を思い出した。
★1 - コメント(0) - 2011年1月21日

アルバニア。大きな謎があってドキワク。最後のストレスの演説イミフ。
- コメント(0) - 2010年7月18日

誓いと掟を分ける物は何だろう。「誓い」当初の精神を失って形だけになると「掟」になるのか?
★4 - コメント(0) - 2009年11月15日

不思議な不条理なお話。誰もが否定して、誰もが心の奥底で確信しているお話。雰囲気がすてき。
★3 - コメント(0) - 2009年10月12日

アルバニアの血讐と盟約の強い掟。深い霧の中に広がる山地民の日常を脅かすものは何か。東西の帝国に翻弄された小国アルバニアの苦悩と未来を、前近代的な因習になぞらえて描いた、すぐれた同時代的な一冊。★★★★★
★6 - コメント(0) - 2009年1月19日

「誓い」についての物語。「砕かれた四月」と対になっている。
★1 - コメント(0) - 2009年1月19日

- コメント(0) - 2009年1月8日

幻想的な感覚と現実的な感覚が奇妙なほど交差している。それでいてアルバニアという小国の歴史が垣間見れることで読み応えがある。
- コメント(0) - --/--

死者が、真の意味では死んではいないということ。 様々な形で現実に現れ出ては、生者を左右する。 その現れる姿は憎しみであったり、掟であったり、哀しみであったりし、私たちがその縛めから逃れるすべはないといういこと。
★2 - コメント(0) - --/--

今読んでいるみんな最新5件(3)

11/30:zumi
05/20:ti
11/08:Hide

積読中のみんな最新5件(6)

12/23:プルーフ
11/11:りー
08/12:梅しそ

読みたいと思ったみんな最新5件(36)

12/29:リーサ
12/27:ハヴィチ
12/02:じん
10/14:Nina
10/05:イシザル
誰がドルンチナを連れ戻したかの 評価:80 感想・レビュー:28
ログイン新規登録(無料)