ひと月の夏 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

ひと月の夏の感想・レビュー(42)

第一次大戦のフランス戦線で傷付いた青年の ひと月の夏の思い出を描いた 物語である。 1980年の出版らしいが、英国の田園の 風景がのどかに浮かぶようで、ほんのりと 心暖まる展開が味わい深い。 バーキン青年とアリスとの交流も ひどく ぎこちなく、微笑ましいお話だった。
★209 - コメント(0) - 3月17日

なんてことないようで、こころがほんのり温かくなるような読後感。戦争で心身ともに傷付いている青年が、壁の絵の修復のために村にやってくる。戦争の傷が原因か、最初は物事を斜めに見ていた青年が徐々に心を開いていく様子がなんとも自然で。淡い恋心は、恋心のままで残ってしまうけれど、その方が胸に美しく焼付くのだろう。陳腐な言い方になるけれど。脇役の人々が、またみんな味わい深かった。心がカサカサしている時に読むといいんじゃないかな。良作。
★132 - コメント(6) - 2月21日

イギリスの田舎の夏の風景が目に浮かびます。戦争で心に深い傷を負った青年が、壁画復原の仕事のため、長閑な田舎の教会でひと夏を過ごします。様々な人たちとの交流を通して、徐々に癒せれていく青年。繊細な心の動きが抒情的に描かれています。淡い恋の結末は切ないものでした。戻らない夏の思い出。ミニシアターの映画を観たような読後感です。
★51 - コメント(0) - 2016年10月26日

主人公が中世の壁画の汚れを落とすためにヨークシャの村へ。仕事をしていくなかで、彼は牧師の妻に惹かれていく。「むしろ、僕達は結婚したときにも、おたがいのことを知らなかったんです。知ってる人なんていますかね?そう考えてみれば、二十年ひとつの家で暮らした同士だって、そんなに相手のことが分かっているものでしょうか?人間が表に見せるのは、見せる気になるものだけなんです。だから想像するしかないんじゃありませんか?それで相手がそうとか違うとか教えてくれなかったら、いつまでたっても、想像するしかないわけでしょう」
★47 - コメント(0) - 2016年10月23日

第一次大戦で苦しい経験をし、心と顔に傷を残した青年。青年が、塗りつぶされた宗教画を修復するために過ごした、英国の小さな村にある教会でのひと月の暮らしが、繊細な描写で淡々と描かれています。美しい田園風景、そこで暮らす素朴な人々との交流、そして牧師の妻へ寄せる密やかな思い。その幸せな時間が青年の心を少しずつ修復していき、読む者にとってもおだやかな時間でした。その幸せな時もやがて過去となり、もう戻ってはこないけど、だからこそ忘れられない、かけがえのないひと月…。
★84 - コメント(0) - 2016年10月18日

宝石のように輝く佳品です。戦争による心に傷を持つ20代前半の若者がひと夏、初めて訪れたイギリス北部の田舎で仕事に打ち込みつつ、美しい人妻との恋、ともに戦争で傷ついた考古学者との友情、純朴な隣人たちとの交流と、豊かな自然に癒やされていく物語。第一次世界大戦が大きな背景となっているが、中世のキリスト教教会の壁画やその修復技術についての蘊蓄があったり、読みどころは多い。映画化され、それも名作との誉れが高いが残念ながらビデオもDVDも入手できない。
★9 - コメント(1) - 2016年9月29日

タイトルも含めてとても好きな物語。ヨークシャーの村の小さな教会に仕事にやってきて、ひと月を過ごす青年。彼の過去や仕事の内容が少しずつわかっていく話の運びも好き。村の人とのあたたかな交流もほほえましい。何も起きないようで、人生には二度と起こらないことがたくさんあると、ふと振り返ってしまう。
★39 - コメント(3) - 2016年9月17日

とても素敵。もう二度と訪れない季節もこれから訪れる季節もいとおしくなる。もう訪れている秋という季節を思って。
★10 - コメント(0) - 2016年9月16日

夏の終わりに 静かで心地よいお話を読みました。■小さな田舎の村で過ごしたひと月の夏。輝く自然と素朴な村人たち、ほどける心、教会の壁画に込められた少しの謎、友情、淡い想い、一瞬の逡巡。みずみずしく美しい日々。■何をしたかではなく、何をしなかったかを、 ずっと人は思い続けるから。(→続
★29 - コメント(1) - 2016年9月10日

夏の終わりは、なんだかいつもちょっとだけ喪失感が残る。あれほど暑くてたまらなかったのに。そして時がたてばたつほどキラキラとした思い出に変わる。主人公にとっても此処で過ごしたひと月の夏が、後で思い出してみればかけがえのない貴重な体験だっのだ。そう。何も起こらなかったから。教会の漆喰で塗りつぶされた壁の中から中世の頃に描かれた壁画を復元させる。地道な作業。ムーンのやってることも似たような発掘という仕事。少しづつ、少しづつ浄化されていく。そしてそこは永遠に「封印された過去の部屋」となる。しみじみとした良い作品。
★37 - コメント(1) - 2016年9月7日

冒頭。教会の壁画の修復作業のため、語り手の青年は、ある夏の日に田舎の駅に降り立つ。雨のせいでずぶ濡れになりつつ切符を改札で渡したら、「まだ小さな女の子が、(略)駅舎の窓ガラスに顔をつぶれるほどくっつけて、まじまじとぼくを見ていた。コートがおもしろかったのだろう。」宮崎駿のアニメ映画に出てきそうなシーンで、物語のつかみとしては合格点。154ページ余りの短い本ですが、田舎の夏の景色・食べ物・濃密な人間関係/淡い恋愛要素/英国の宗教事情/歴史や文化遺産/戦争の爪痕などがてんこ盛りに語られる作品(G1000)。
★17 - コメント(0) - 2016年8月27日

ヨークシャーのオクスゴドビーの田舎村でのひと夏。爽やかな田園の風景がある。温かい人々との交流がある。淡くて甘くてほろ苦い恋がある。教会内の壁画修復のロマンがある。そこで消された絵画が姿を取り戻していくように、傷ついたバーキンの心も癒されていく。灰色だったものが、徐々に色彩をおびていく。ずっと忘れない大切な夏。いつか振り返った時にそれはずっと変わらず色褪せず、心の中に残っている夏。また夏の終わりは哀愁と切なさが余韻を残し、しんみりとした気持ちにさせる。私の中では間違いなく今年のランキング入りの一冊。好き。
★50 - コメント(0) - 2016年8月6日

戦争の傷痕を心に抱え、ひとりの若者が教会の壁画修復のため小さな村にやって来た。これは遠い昔の物語。ヨークシャーの田園オクスゴドビーの村でバーキン青年が過ごしたひと夏の出来事。淡い恋と友情、村人とのあたたかい交流が、記憶の中で時を止めたまま宝箱に封印されている。かけがえのない時間をともにした人々との出会いと、心を癒す交流がのどかで柔かな日差しを感じる風景の中で静かに語られる。ラストでは心にしみわたる懐かしさや切なさで胸がいっぱいになった。
★50 - コメント(1) - 2016年4月18日

ヨークシャーの村、オクスゴドビーにやってきたバーキンのひと夏を瑞瑞しい筆致で描く。時は第1次大戦後の1920年頃。村が持つ暖かさもいい。教会堂の壁画修復というのも戦間期のたまさかの、のどかさに相応しい。バーキンの淡やかな恋もいい。しかも、そこには諦念を追想する痛みと、いい意味での感傷がある。作家も作品も、それほど人口に膾炙するものではない。しかし、そこには確かにイギリスの小説だけが持つ、ほのかな温かみと人生への達観がある。設定やプロットは全く違うがカズオ・イシグロの『日の名残り』に通じるものを感じるのだ。
★273 - コメント(3) - 2016年3月26日

初読。2016年9冊め。【103/G1000】こういう「田舎町でのひと夏」というような本は大好きだ。それが人間が快復するような話だったりするなら尚更で、また日常に戻っていき、いつか、もう戻れない夏を思い返すという終わり方もたまらない。いつか再読しよう。
★86 - コメント(2) - 2016年1月6日

イギリス文学は私にとってかったるい。しかし、だらだら、読んでいても、印象深い読後感がある。イギリスの小説って、なんか記憶へのこだわりが一つのメルクマールになっているんだよね。しかも、なにか、その場にいった(遭遇・共有)経験がないと、小説の実感がわかないとか。しかし、よい小説でした。
★10 - コメント(0) - 2015年10月31日

第一次世界大戦後シェルショック(戦闘神経症)に悩まされていた青年の心が田舎の村で過ごすひと月で少しずつ癒されていく。ヨークシャーの小さな教会の壁画修復に訪れたバーキン。教会の敷地内にいる同じく戦争後遺症の考古学者ムーン、メソジストの駅長一家、美しい牧師の妻。映画は過去に観た事があるのだが、その時の記憶よりも主人公バーキンは村人たちにも人気があり社交的な感じがした。大きな事件や出来事はないが、イングランド北部、緑の田園地帯を舞台とした静かな小品。[ガーディアン必読1000]
★17 - コメント(0) - 2015年8月28日

主人公と牧師の妻とが、惹かれ合いながらも結ばれなかったのが、とても切ない。でもこの物悲しさこそがイギリスらしくて、本当に素敵だと思った。
★9 - コメント(0) - 2015年8月6日

第一次大戦後シェルショックにかかった主人公がロンドンから片田舎に壁画修復に訪れる。鐘楼に仮住まいするが、そこから見た日の出によって広大な牧草地から山脈までの色が明るくなっていく光景は非常に牧歌的のようで美しい風景だった。都会と違う田舎の生き方に惹かれながらも、契約が終わり都会、日常に戻っていくことになるのも感慨深いものを感じた。正直文体は苦手だったが、読み終えると心に残る小説だった。
★14 - コメント(1) - 2015年7月23日

G1000】イギリスの北部の教会の壁画の修復に訪れた主人公。駅長の娘、牧師の妻など、心優しい女性にもてなされる。芸術家として扱われ、説教も回ってくる。メソジストと国教会の2つの宗派がある地方の、懐かしい風景。戦争で傷ついた精神と体を抱え、戦争の後遺症小説と読んでもいいかも。訳が読みやすく、翻訳物だということを意識せずに読めた。メソジストと国教会の関係を知ると、より深い理解ができるかもしれないと思った。
★114 - コメント(0) - 2015年6月14日

英国の田園にやってきた教会の壁画を修復する青年の物語。英国の小説の良い所を凝縮した内容で気に入った。劇的なプロットはないけれども、しみじみとした情感が胸の中に残る。もしかすると、イギリスの田園がこの小説の別の主人公なのかもしれない。そこでは、時間がゆっくりと過ぎていき、自然の移ろいの美しさを人間は実感できる。戦争で傷を負った主人公が立ち直ることができたのも、ゆったりとした自然のリズムに同調できたからだろう。登場人物の描き方も丁寧で、嫌われ者の牧師が苦しい自らの胸の内を漏らすところなどは、心に残った。
★111 - コメント(3) - 2015年1月11日

今までに何度も読み返しているのだが、読むたびに新鮮な喜びにうたれる。ひと夏のなかに何とみずみずしく美しい思い出が満ちていることか。そうしてそれはひと夏を過ぎれば、過去のものとして二度と立ち返ることができないものでもある。声高に反戦を語ることもなく、しかし戦争の愚かしさも空しさにも触れている。珠玉の名作としてこれからもまたたびたび読み返す本となるだろう。
★12 - コメント(0) - 2014年8月7日

壁画の修復で訪れた田舎町。たったひと月の夏。何か大きな事件がおこる訳じゃない。恋をしてもその想いを伝えるわけでもない。自分の過去の傷を他人と慰め合うでもない。ただただ、静かにひと夏が過ぎる。その地を離れたあと、一切のコンタクトをとらず、思い出として閉じこめたひと夏が鮮やか。
★14 - コメント(0) - 2013年1月31日

大きな事件や出来事があるわけでもない夏のひと月が淡々とした文章で綴られている。他人にとってはよくある話や想いも当人にはかけがえのない宝物となって輝いている。
★12 - コメント(0) - 2011年5月24日

夏の日を同じくして読んでいるのに、舞台となるイングランド北部の町オクスゴドビーは、何と日本の夏と居心地が違うことか。ストーブも使うし(多分調理以外に暖としても)、ケーキには淹れ立ての熱いお茶はかかせない。それでも雲ひとつない空と、道端を草が覆う夏の盛りなのだ。そんな町で過ごす時間が、壁画の修復で訪れた青年の傷を癒してゆく。起ったこと、踏み出せなかったことが甘くも苦い特別な記憶となって焼きつき、変わらないままそこにあるだろうという思いが、派手さのないひと夏の物語を豊かに思わせる。
★16 - コメント(0) - 2010年7月28日

一ヶ月ほどの限定された期間だからいいのかも。そして日常と切り離された特別な時間。特別な何かがあったというわけでもないけれど、あちこちに仕込まれた小さなモチーフが集まって忘れられない全体になっている。こんな珠玉の時間を持っていることは、ささやかに嬉しく切なくなります。
★20 - コメント(0) - 2010年6月29日

お腹が空いたいたせいかもしれないが、食べ物の描写ばかり気になった。分厚いベーコン、チーズ、兎肉のパイ、ケーキ、タルト、プディング、アップルパイ、そしてかならず火傷しそうな紅茶が付く。イギリス人の理想の生活と言うものか。
★9 - コメント(0) - 2010年3月22日

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