形式:単行本
出版社:青弓社
もう一つ、個人的に興味があったのは「慰安婦デマや慰安婦像によって在外日本人のいじめ被害説」。これはアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの慰安婦の碑や像への反対運動の中で使われ、日本でも拡散した。山野車輪『マンガ大嫌韓流』、岡田壱花・富田安紀子『日之丸街宣女子』でも描かれているが、現地の日系人や日系団体はそうした話は聞いたことないそうだ。グレンデール市警察や教育委員会にもそのような相談は一件も受けていない。
2015年に複数の右派団体が朝日新聞の慰安婦報道で日本人の社会的地位が低下し損害を被っているとして、朝日新聞に損害賠償を求めて提訴した。「頑張れ日本!全国行動委員会が中心となった「朝日新聞を糺す国民会議」や、日本会議の指示を受けた「朝日・グレンデール訴訟」等である。在外日本人が主要な原告となり、いじめ被害を主張。だが、結局具体的な事例は提示できず、原告敗訴で終わった。こういう子供を使った被害者意識って、まさに腐った保守って感じするよね。
【フェミニズムの現状】<「ジェンダー」概念は、生物学的本質論を超えて、社会的・文化的な性のあり方と性差別社会を変えるのは可能であることを示した非常に重要なもの/だが、現在、生物学的本質論にとらわれ、「ジェンダー」の理解がすっかりぶれてしまっているフェミニストたちがいる。「女性を守る」という大義名分を立てて、あるいは右派にとって望ましい特定の「女性」だけを「守る」という前提のもとにトランスジェンダー差別をおこなう右派陣営に、性別二元論に足をすくわれたフェミニストがなだれ込むという事態に陥っている>、と……
【「女性活躍」の本音】<女性の非正規雇用、賃金格差や貧困などの問題も続いていて、「女性の活躍」が声高に語られる半面、女子差別撤廃条約批准以来の本来の目的であるはずの「性差別の撤廃」が言及されることはなくなってしまった。結局、安倍の「女性活躍」は少子・高齢化や移民政策の問題によって働き手が不足する中、潜在的な労働力を駆り出すための施策だった。女性や高齢者などを労働力として使いながら、女性に出産も仕事もあらゆることをさせようとしているという魂胆が透けて見える>。今も政府は「育休女性はキャリアアップを!」など。
140頁。日本会議の百地章は家庭保護条項を憲法に加えれば「子供の教育やしつけの場として、家庭、家族を見直し、家庭教育を再生することができます。また高齢者の介護を支える場として、家庭、家族を再評価し、福祉の充実に役立てることも可能となるでしょう」と述べている。つまり子育てや介護などを「公」が担うのではなく、家族内で中心的に担う「自助」であるべきという考え方だ。「自助」や「自己責任」を重視する新自由主義の考え方も見て取れる。即ち伝統的は家父長制に基づく「イエ制度」回帰と、新自由主義との両方を主張しているのだ。
201頁。メディア報道は政治家と旧統一教会のつながりに関して、旧統一教会が「反社会的」組織だから問題だという論点で収束してしまい、旧統一教会が政治家と連携したことがどのような政策にどう影響を与えたかといった政策への介入についてはなかなか議論が進まなかった。それに加えて、統一教会だけにスポットが当たり、同じ課題に時には驚倒しながら取り組んできた日本会議や神道政治連盟など他の宗教右派の活動は注目されず、温存された。旧統一教会以外の宗教右派と政治家との関係はどのようなものなのか、深く探求するメディアは少ない。
最近はトランス女性への差別が問題である。著名なフェミニストであっても、右派に同調してトランス女性を攻撃する側に回ってしまうことが多々見られるのがつらい。これまで日本社会での女性差別があまりに深刻だったためではないだろうか。ウーマンリブの時代の「生む・生まないは私が決める」という主張に障害者団体が「私たちは生まれてこなければよかったのか」と反論し、これに対しフェミニスト達が「中絶を選ばなくてはいけないような社会こそ問題」と応えて連帯した(p23)時のような何かが、必要なのだろう。
しかし、宗教右派が女性蔑視的な主張をする原因は、本書を読んでもよくわからないままだ。女性蔑視をする女性政治家の頭の中も、男性中心社会への過剰適応なのだろうと推測をしているが、謎すぎる。
宗教右派は出てくるんだけどタイトルから感じる宗教右派とフェミニズムの対立関係って構図も最後まで維持できてないし、バックラッシュの主張を叩きのめすってのもできてないしで、関東大震災関連本の『トリック』なんかと比べるとうーんってなっちゃう。
これからもずっと疑問を持ちながら日本の政治を見守るって疲れる。
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もう一つ、個人的に興味があったのは「慰安婦デマや慰安婦像によって在外日本人のいじめ被害説」。これはアメリカ、カナダ、オーストラリアなどの慰安婦の碑や像への反対運動の中で使われ、日本でも拡散した。山野車輪『マンガ大嫌韓流』、岡田壱花・富田安紀子『日之丸街宣女子』でも描かれているが、現地の日系人や日系団体はそうした話は聞いたことないそうだ。グレンデール市警察や教育委員会にもそのような相談は一件も受けていない。
2015年に複数の右派団体が朝日新聞の慰安婦報道で日本人の社会的地位が低下し損害を被っているとして、朝日新聞に損害賠償を求めて提訴した。「頑張れ日本!全国行動委員会が中心となった「朝日新聞を糺す国民会議」や、日本会議の指示を受けた「朝日・グレンデール訴訟」等である。在外日本人が主要な原告となり、いじめ被害を主張。だが、結局具体的な事例は提示できず、原告敗訴で終わった。こういう子供を使った被害者意識って、まさに腐った保守って感じするよね。