剃髪式 (フラバル・コレクション)

剃髪式の感想・レビュー(95)

フラバル自身の両親をモデルにした小説らしい。ランプの灯りの元で夫婦二人が向かい合う冒頭の場面からうっとりするほど美しく、これから始まる物語への期待が高まる。マリシュカを語り手としたチェコの田舎にあるビール醸造所での日々は生き生きとしていて、誰の心にもある幸福な記憶を掘り起こすマジックがきらきらと息づいている。まるで黄金に輝く宝物に出会ったかのような気持ち。自慢の髪を切り自転車を颯爽とこぐマリシュカの足の動きが目に浮かぶようで、その姿は生の躍動感や新時代への期待に彩られている。
★10 - コメント(0) - 2016年7月8日

まるでミシェル・ゴンドリーがアメリを撮ったような、言葉の隅々から溢れ出す美しさと多幸感。冒頭の豚さんを解体してほやほやのソーセージを作るところから、生の肯定感に満ちたカラフルな世界が躍動している。オーストリア帝国から解放後、つかの間の独立を手に入れたチェコの片田舎にあるビール醸造所での日常は、天真爛漫でビール色の美しい髪を持つマリシュカとその周囲の人々を祝福しているかのように、笑顔にならずにはいられないエピソードに満ちている。読書でこんなにも幸福を感じられたのはいつ以来だろう。やはりフラバルは最高だ。
★46 - コメント(2) - 2016年6月16日

『わたしは英国王に給仕した』ですっかりはまったフラバル。舞台は1920年代のボヘミア地方の小さな町ヌィンブルク。マリシュカとフランツィンの結婚生活を中心に、フランツィンの兄ペピン、ビール醸造所の人たちとの日常風景をユーモアたっぷりに描いている。ランプの芯に火を灯す夜の数分間が好きでたまらないというマリシュカ。ブロンドの髪を風に煽られながら醸造所の煙突を登ったり、「ジョゼフィン・ベイカーくらい短くしてほしいの」と髪を切り落として自転車のペダルを漕ぐ姿に、古き時代のノスタルジアと新しい時代の到来が重なる。
★77 - コメント(0) - 2016年2月29日

それがすでに失われた時代から見た、失われた物もしくは失われていく物への愛惜。そういうフィルタを通して見るだけに、どの登場人物も(煙突の中を降りたという誇りで生涯を過ごすデ・ジョルジさんとか、いつも鏡を覗き込むマルチンさんとか)切なくいとおしい。この後、この国に起こったことを考えると余計に。それにしてもミニスカートと断髪、というのはアメリカの20年代だけの風俗ではないのだな。マリシュカのフラッパーぶりは見事でありました。人妻なのに
★1 - コメント(0) - 2016年2月24日

飲めぬ者とて、フラバルの世界に酔いしれる。語り手であるマリシュカ、その夫であるフランツィン、そしてその兄であるペピンおじさんを始め、物語に登場する人々への愛おしさが読むほどに募っていた。新しいチェコでの暮らしに期待を膨らませ、その生活様式の変化や文明が確かなかたちで人々の前に姿を現す過程とそこにある心情が、どこかおかしみを抱かせながら生き生きと描かれてゆく。こんなにも生きることは愛おしい、こんなにも人は愛おしい、こんなにも物語は愛おしい。そう思い至る頃にはたと気づく。心に希望を持っていることの美しさを。
★32 - コメント(2) - 2016年2月8日

我々が想像する、いわゆる(東)ヨーロッパの片田舎的な街を舞台に日常が少しずつ未来へと進んでいく話。 解説読むまで実話が元ネタとは思わなかった。
★3 - コメント(0) - 2016年2月4日

著者が生まれる前の若い頃の両親と叔父を主役とした小説。1920年代初めのチェコスロヴァキアの小さな町ヌィンブルクでの両親の生活や、ラジオや車などの新しい文物や流行が続々と到来する時代が母マリシュカの視点でいきいきと明るく書かれている。7章のマリシュカの父は激情家だったので、彼女の母はそれを発散させるために古い棚を買っておいて、父が激怒するとすかさず斧を渡してその棚を壊させて発散させていた(そして壊れたものは薪として使っていた)という話は面白い。
★14 - コメント(0) - 2016年1月22日

主人公の圧倒的なパワーに振り回されながらも可愛らしい彼女の魅力がいっぱいで楽しい時間でした。
★2 - コメント(0) - 2016年1月2日

初フラバル。なんとなく超真面目な人だと思っていたので、陽気な登場人物に戸惑ったが、慣れるとなんだか酔ったような感じで、ふらりふらりと読み進めることができた。ふむふむ、え?は?えええ!?という波に乗れるか。ぼやっとした感じに見えるが、訴えかけられるところも多い。不思議な作品だった。ビールを飲もう。
★5 - コメント(0) - 2015年12月20日

自らを心配の種と称するマリシュカの、フランツィン評に嵌る。《フランツィンは、私を初めて見たその日からずっと目に見えない、けれども現実に存在するリュックサックに私を背負っていて、しかも私は日を追うごとに重さを増している。》それに甘えて浸っている自由奔放な若妻に夢中の夫。《それほど私のことを愛していて、画家アレシュが教科書に書いたみなしごのように壁にぺたりとくっついた姿をしていた。》否定出来ない程証明済みで、お邪魔虫の兄をも受け入れてしまう懐の深さ。スッキリしたラストで始まるこれからを、ボフミル目線で読みたい
★19 - コメント(0) - 2015年9月9日

初めてフラバルの作品を読みました。このタイトルが何を意味しているか考えながら読みました。ペピンおじさんに会いたくなりました。
★1 - コメント(0) - 2015年4月15日

訳文が素晴らしい。馬や犬、髪の毛に関する描写など。
★1 - コメント(0) - 2015年4月4日

ランプの灯火とその光が照らし出す室内の情景と軽快な語り口。グロテスクながらも美しい豚の内臓の色と触感。長い髪をなびかせて自転車にまたがり颯爽と風を切る美しい若奥さん。映像的な描写にぐんぐん引き込まれていった。チェコスロバキア建国直後の新しい時代を活き活きと生きるとても元気なお話だった。
★7 - コメント(0) - 2015年2月20日

自身が生まれる前の設定のようだが、この物語世界はフラバル自身の原風景として描かれているように見えた。そして在りし日のチェコはこんなにも豊かで美しかったのかと思う。長回しが、クラクラ感満載で素晴らしい。「私が大好きなのは、夜の七時を迎えるあの数分間。」この秀逸な冒頭から、素晴らしい世界が広がる。あのチューニングがずれたようなユニークな語り口も健在。そして本作は、楽しい世界。フランツィン、マリシェカ、ペピンおじさん。良かった。
★11 - コメント(0) - 2015年2月7日

緻密な観察と描写がすばらしい。ランプや髪の輝き、豚の解体の楽しさなど、東欧的な感覚(なのかな?)を知ることができた。 ■西洋の人たちが日常生活の中に感じている美を、絵画における主題や光と影、反射と透過などの描写に感じることがあるが、この小説は言葉でそれらを表現しているように思う。 ■〈東欧=暗い空間・心理・社会〉という先入観を部分的にひっくり返してくれた。読んでよかった。
★1 - コメント(0) - 2015年1月26日

ランプの美しい描写から始まりとても色彩が豊かな小説。ふわふわ、きらきら、ゆらゆら、さらさら、流れるような浮くような飛ぶような美しい描写にうっとりした。主人公のマリシェンカの天真爛漫さ。細やかな夫フランツェン。フランツェンの兄ヨゼフ(ペピン、ヨシュコ、ヨジンと沢山愛称があるw)の奔放でとめどないおしゃべりと楽しい暮らしを一緒に過ごしたような気がした。広場で溺れるエピソードが好き。マリシェンカの金髪はチェコビールのよう。美味しいビールを飲んだような幸福な小説だった。
★12 - コメント(0) - 2015年1月22日

主人公がとにかく明るい人で、旦那さんに「上品にふるまえ」って言われても気にしない。そんな彼女の食べて飲んで騒いでな日常はいつも大騒動というか、ちょっとしたことでも素直に楽しく感じている。けど、ラストで髪を切った主人公に対する周囲の冷たい態度はなんだろう、舞台が新生国家なことと関係があるのだろうか。
★3 - コメント(0) - 2014年11月22日

新しい幕開けを迎える時代の光と影を描きつつ、全体的には明るくさわやかなフラバルさん。ビールを飲み肉を喰らい美しい髪を颯爽となびかせて自転車で疾走する主人公の姿を追うだけで楽しくなってくる。映画化されてるみたいだけど見るすべはあるのだろうか…
★30 - コメント(1) - 2014年11月3日

他の人よりもはるかに真面目に読んでいた。ふざけているようで、これは相当真剣にテーマが描かれているような気がしたので。特に全体に渡って「強い欲求」がやたらよく描かれている。題の「剃髪」とは、近代化のことだが、それと同時に「欲求を失うこと」の象徴にも読めるようなぁ、この小説、と。
★1 - コメント(0) - 2014年9月2日

日常を描いているからか、あまり説明的な文章がなく、状況や固有名がよく分からないことが多い印象。料理やオチ部分など面白いエピソードもあるのだけど、あまりのれなかった。
- コメント(0) - 2014年8月22日

マリシュカ天衣無縫。
- コメント(0) - 2014年8月19日

既訳のフラバルの中で最も陽性な作品で、一番笑かされた。血と肉(豚肉ソーセージ)とビールのメルヘン。豚をかっさばいてゲラゲラ笑い、ビールも瓶から直接ぐいぐい呑む様が、あたかも聖なる儀式のよう。マリシュカが長く美しいブロンドが風になびかせて煙突に登るところなんて、全然違うのを承知でラプンツェルを思い出しもする、名シーン。「プルゼンのビールは奥さんの髪と同じ色をしていますよ。敬意の証として、奥さんの髪を飲み続けさせていただきます」
★19 - コメント(0) - 2014年7月18日

この作家、気になりながら読んでいなかったのだけど、これが初フラバルとなったのはとても幸運だったのかも。素晴らしい読書体験だった。豊かなイメージの広がり。滑稽で猥雑でしっとり優しく。とことん陽気で無邪気で女らしい魅力溢れるラプンツェルのような髪の語り手の飲みっぷり食べっぷりのよさときたら!大事に育てた豚を屠って食べるシーンの血と肉まみれの豪奢な輝き!隣にはいつもビールが!謹厳実直な夫との対比がまたなんとも。そしてタイトルが予期させるラストがまたいい。これからフラバル、ガンガン読みます!
★6 - コメント(0) - 2014年7月7日

面白かった。豊かなポエジー。
★1 - コメント(0) - 2014年7月3日

実際に「ビール醸造所で育った」というフラバルが、自身の母親を語り手にすえて描くのは、美しい髪をたなびかせて自転車にのり工場の煙突にのぼる、やんちゃで怖いもの知らず、いつも元気いっぱいの支配人の若き妻。堅物だが妻にぞっこんの夫と、二人の生活に突如割り込んでくる騒がしくユニークな夫の兄。これまで翻訳されたフラバル作品に比べるとずっと読みやすく楽しい中編だが、これまで同様、そばにいたら困るけれど憎めない愛すべき人たちで溢れていて面白い。読みながらやたらと喉が渇いてチェコのビールをぐびぐびと飲みたくなるが。
★16 - コメント(1) - 2014年6月30日

〈私は鼻を泡に沈め、宣誓でもするようにゆっくりと手を上げ、あの甘く苦い飲み物を味わいながらのどに流した〉。ビールが飲みたくなる。煙突をのぼる場面が好き。
★3 - コメント(0) - 2014年6月27日

『あまりにも騒がしい孤独』などに見られるようなニヒリズムの中に漂うペーソスといった様子ではなく、控えがちながらもちょっと浮ついた陽気な雰囲気が彼の作品としては珍しく感じる。マリシュカの奔放さ、愛嬌、美しさと小役人めいた夫との対比が鮮やか。彼らの愛情や、居候にやってきた伯父との馬鹿騒ぎなど芯からチェコらしい一作。読みづらい彼の他の作品で躓いてしまった読者には、もってこいの一冊かもしれない。新しい風が吹き、長い髪がたなびき、醸造所の煙突からは遠い町並みが眼下に広がる。どこかで懐かしさを感じる作品だった。
★18 - コメント(0) - 2014年6月23日

作者フラバルは男性だけど、よくここまで女性視点で全く違和感なくキラキラした世界を紡げたものだなあ。場面場面がカラフルに脳裏に浮かんで楽しい。
★2 - コメント(0) - 2014年6月15日

母=倍賞千恵子、父=前田吟、伯父さん=渥美清と脳内補完。まぁ、正直、倍賞千恵子は違うかな?という感じだけど、父と伯父さんはベストキャスティングだと思うw他のフラバルの作品が、戦争や社会主義の影によって、グロテスクに変容し、笑うしかない物悲しい人々を描いているのに対して、建国間もないチェコスロヴァキアを舞台にしているためか、非常に明るい。ほとんど神話的な母の長い髪を切ること=近代化、と小難しく読むこともできるけど、ビールと肉が美味そうなんだから、それでいいじゃない。
★11 - コメント(1) - 2014年6月2日

マリシュカの勢いのよさには及ばないが、一気読みさせてもらった。フラバルの小説には媚態がないのがいい。「おかしみ」として描かれる男女の性、追いかけっこに変わる豚のと殺、汚物にまみれた新米兵士は、そう確かにラブレー的だ。クンデラは、エセー『カーテン』で、68年の状況下で出版ができたフラバル(彼は余りにも非・政治的だった)を「体制的」と非難する若者に、「ひとがフラバルを読むことができる世界は、彼の声が聞き取れないような世界とはまったく異なっている。」と告げた。ユーモアと小説の関係がまた少し理解できた気がした。
★3 - コメント(0) - 2014年5月2日

これを読んでも、ビールが飲みたくならないっていうなら、それは嘘だ。「楽しくなりたきゃ、ビールを飲みな」ーー、フラバルに、人生に、乾杯。最高傑作なので、野暮な感想とか必要ないと思う。素晴らしいです、本当に......
★18 - コメント(0) - 2014年4月22日

建国なったばかりの1920年代チェコスロバキアを舞台に、新時代の到来を〈短縮化〉というキータームで綴る。美人でおおらかで街の人気者の主人公が体験する様々な変化。過去を断ち切る幾つもの挿話はしかし、新生国家の明るい面だけを予見させるわけではなく、むしろ暗い面…失敗・混乱・非難を象徴する部分も大きい。著者の家族をモデルにしているそうだが、この一家と国家がどう変わっていくのか、本作の続編にあたる作品を読んで追ってみたい。
★4 - コメント(0) - 2014年4月16日

フラバルこれも好きだ!うおん! 途中で呑みたくなり傍らにビール…で、至極満足だったことよ。人々の関心や生活ぶりが大きく変わろうしていたチェコを背景に、作者自身のルーツをたどるべくフラバル一家を描く作品。マリシュカとフランツィンの結婚生活が話の中心になるのかと思いきや、そこへペピンおじさんが居座りにやってくる…(蓮っ葉でおきゃんなマリシュカが、義兄とつるむ件はすこぶるお気に入り)。はっと心を奪われるほど美しい情景が幾つも広がり、そしてその中心で耀いている“ビールのような”髪の描写は忘れがたい(冒頭も大好き)
★14 - コメント(0) - 2014年4月12日

恐ろしいほど技能的で美しく、にもかかわらず「描写」以上には、ましてやメタファーなどにはなりえない文章の羅列があった。カラフルな掃除機のホースに似た豚の喉頭、溺れたマジェシカを前に彼女が死んでいないことを嘆く女たち、ダンスのステップという糸が音楽という針の穴に通らない悲しみ。美しい事象が重ねられてゆく様は、解釈することさえ虚しさを覚えた。※本書を読む前、立教大学にて翻訳の阿部先生の講義を聞く機会がありました。この作品を日本語で読めたことに対して心よりお礼申し上げます。
★13 - コメント(2) - 2014年4月2日

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