アンドロギュノスの裔 (渡辺温全集)のすみれさんの感想

久世光彦氏の『美の死』で渡辺温という青年のことを知った。その人物と作品への愛情と哀惜の想い。とても気にかかりいつか読もうと思っていた。眩しい灯と西洋風の文化に彩られながらまだ仄暗い路地や闇を残した東京の街。そして、都市の空気、時代の持つ洒脱さを纏った男女が演じるドラマ。ユーモアと機智の中に少し効かせた悪意。これら都会的で、若々しい才気と向う気を感じさせる作品を読んでいると、その作品に刻まれた永遠に青年のまま時が止まった作者の姿は、何か残酷であり痛ましさのようなものを感じて立ち竦んでしまう。
★5 - コメント(0) - 2012年8月2日

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1015冊/341485ページ/女性/専門職

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