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小暮写眞館で、宮部みゆきさんを撮る

チヨ子
トピック

KAKAPO
2016/04/17 08:34

 表題作である『チヨ子』は、とても良い話ですね。縫い包みやオモチャに限らず、人でもペットでも、誰かや何かを大好きになった思い出がある人は、その思い出に守られて生きることができるのかもしれません。愛されるのではなく、愛することを経験することが大切なのだと思いますが、愛することを経験するためには、愛されることを経験しなければならないのかもしれませんけど…

 『チヨ子』の最後に収録されている『聖痕』は、表題作の『チヨ子』の陰に隠れて埋もれてしまっているが、宮部みゆきさんの創る物語りが好きならば、絶対読んでおいた方が良い名作だと思う。実は『聖痕』に登場する“鉄槌(てっつい)のユダ”は、実は宮部みゆきさんご自身である(私の勝手な妄想である)。

 もちろん、宮部さんは、主人公の私(千川)のように、“犠牲(いけにえ)の子羊”たちをあおるようなことはしない。私たちを楽しませてくれるミステリーの中に、私たちと社会の光と闇を描きだすことで、私たちが“どのように生きて行けばよいのか”という問題を考え続ける機会を与えてくれるだけだ。つまり宮部さんは、読者にとって教祖なのだ。そして、今も聖書を書き続け、信じる者も、信じない者も分け隔てなく救ってゆく。

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