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小暮写眞館で、宮部みゆきさんを撮る

スナーク狩り
トピック

KAKAPO
2016/04/17 09:14

 録画されていた「TBSスペシャルドラマ企画 宮部みゆき4週連続 “極上”ミステリー」を観るための駆け込み読書第二弾は「女性が散弾銃を抱えて、かつて恋人だった男の披露宴会場に現れる」という物騒なもの。

 宮部みゆきさん得意の複数視点で描かれる物語りは、私の予想を裏切り続ける展開がスリリングで、まんべんなく蒔かれた伏線が、一つひとつ収斂してゆく過程が見事だった。どんなに真直ぐに生きている人にも、いや真直ぐに生きているからこそ、悪意は伝播しやすく、自らを破壊してしまうほど激しく燃え上がってしまうのかもしれない。

 一ひねりも二ひねりもある意外な展開が、良くも悪くも頁を捲る読者を楽しませてくれる、不幸な運命に自ら留めを刺そうとしている人物を何とか助けようとする主人公たち、サスペンス的な緊張感も楽しめるミステリー。

 語り手がコロコロ変わるのに、夫々の視点で物語りを追うことができるほど、夫々の登場人物に感情移入してしまう。主な登場人物を疎かにせず描き分ける宮部先生のスタイルは、既にこの頃に確立されていたのだ。1992年6月にカッパノベルズで刊行された作品だが、この頃の宮部作品は、発掘して読んでおく価値がありそうだ。

 過去の事件、ひとつの悪意、そして二つの憎悪が散弾銃を中心に絡み合うというプロットが、この物語りを秀逸な作品にしてる。悪の連鎖を断ち切るために、あえて描くというのは宮部みゆきさんのライフワークなのかもしれない。

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