麩之介

麩之介さんの1月の読書メーター
記録初日
2011年12月02日
経過日数
1915日
読んだ本
223冊(1日平均0.12冊)
読んだページ
62990ページ(1日平均32ページ)
感想/レビュー
54件(投稿率24.2%)
本棚
14棚
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AB型
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日々くだらないことだけ考えています。

読書グラフ

最近の感想・レビュー(54件)

この人の文章はやはり好きだ。なぜか気分が落ちたときに読みたくなる。現代イタリア史において極めて厳しい時代を背景に、ひとつの家族に起こったあれこれが淡々と綴られている。気難しい父に朗らかな母、個性豊かなきょうだいたち。生活のなかの楽しみも、他愛のない会話も、人種差別政策下の不安も、父・兄たち・夫の逮捕・投獄、さらには夫の獄死も、同じ静かな調子で語られる。抑制がきいているということは、必ずしもそこに流れている感情が希薄だということを意味しない。感動は、必ずしも感情を煽るような文章に呼び起こされるものではない。
★13 - コメント(0) - 2月20日

収録されている3作品、どれも怖い怖い。語り手たちが生きている日常は外側から見るとあきらかに歪んでいるのだが、それを歪みとは認識していない人々によって語られており、また時間はその流れが唐突にぶった切られて、離れた時間につなげられているように思われる個所もあり(「おばあちゃんの家」では、時間どころか空間までも)、読んでいると自分の平衡感覚、距離感覚が不安定になってくるのを感じる。自分がこれまで信じていたように、様々な事物との距離を正しく測れているのか、どうにもこうにも不安になってくるのだ。見事で、恐ろしい本。
★37 - コメント(0) - 1月31日

これはタイトルと紹介文から想像されるようなコミカルなミステリー、もしくは爺大活躍アクションではなく、狙いは別のところにある。取り返しのつかない過去(それは彼自身の過去でもあり、彼が属する民族の経験した過去でもある)と日々向き合う爺さんに与えられたセカンドチャンスの物語だ。だとしても、サスペンス部分があっさりしすぎていたり、ツッコミを入れざるを得ないご都合主義的部分(「あいつどこにおって、どっからそんなもん持ってきたんや?」みたいな)があるのは残念で、そのあたりが丁寧に描かれていれば、もっと楽しめたと思う。
★13 - コメント(0) - 2016年7月15日

定年間近の冴えないオヤジだって、きっかけが与えられれば冒険の旅に出て、成長だってするのである。家に入れない省三が、彷徨ううちに、現実にいるのだかいないのだかよくわからないような人や犬や鳥との交流を通じて、知らず知らずに身にまとっていた思い込みや鈍感さを捨てていき、「末裔」としての自分のありかたを省みることになる構成の緻密さにはシビレた。「小さき遺跡」になりつつあった家に再び息をさせるために彼は帰る。外から入れないならば、「内側から鍵を開け」ればいい。高揚感がただごとでないラスト5行にわたしの鼻もつまった。
★14 - コメント(1) - 2016年3月22日

しずかに満ちてくる潮のような言葉に洗われる心地。ひとつの情景を淡々と描き、何気ないようでいて大きく揺さぶりをかける一文で締めるという構成の章が重ねられる。猫との出会いを描く第一章も、末尾の文はとりかえしのつかない喪失を予感させるものだ。借家住まいの中年夫婦のもとを毎日のように訪れる隣家の飼い猫は、いかに気を許しているようであっても、境の向こう側から来たのだということを常に夫婦に思い知らせる。そんな隣の猫を「客」というのでもあろうし、人の生活にたまさか立ち寄る猫という存在そのものを「客」というのでもあろう。
★17 - コメント(0) - 2016年3月13日

あちらとこちらを行き来する装置である船。この船は乗船を望むものを拒まず受け入れる。人ばかりでなく、動物も。生きているものだけでなく、命を奪われたものも。取り返しのつかない過去を忘れさせるのでなく、それと折り合いをつけるようにうながし、死んだものたちをあちら側へ、生きているものたちを未来の方へ渡してやるのがこの船の役割なのだろう。どちらが前でも後ろでもない双頭の船は、過去と未来に等しく向き合っている。この物語が「昔むかし、この半島は一隻の小さな船だった」と語られる神話となる未来を予感させる結末に希望を見た。
★17 - コメント(0) - 2016年2月18日

果てしなく脱線に脱線を重ねて何方向にも伸びてゆく語りは、まさに枝であり葉なのであって、幹だけがずどんと立っているモノを我々は木とみなさないのであってみれば、この形式は、それに属する者の誰一人をも欠くことができない「一族の物語」で(も)あるこの作品にとって重要な意味を持つものだろう。てなことを別にしても、このコテコテ感は関西人に馴染みの深い話芸のそれなのだけど。張られた伏線は見事に回収され、広げられた大風呂敷はあれよあれよという間にたたまれ、最後に消失するけど、たぶん読み返せば新しい発見があるはず。大傑作。
★14 - コメント(3) - 2016年2月13日

粗筋から、政府が機械かなにかで国民の頭の中を覗いて管理するのかと思っていたが、読んでみたら自己申告制だった。しかしこっちのほうが実は怖い。人は目覚めると次第に見た夢を忘れてしまうし、夢を言葉にする段階で、覚醒した意識による補完・再構成は避けられない。夢自体が不確かなものであり、言語化された夢は純粋性を保てず、夢の解釈は恣意性を免れない。そんな不確かで不純なものを拠り所に国は動き、人の命も左右される。そんな理不尽な世界にあって、「なぜ?」という疑問には一切明確な答えは与えられない。末尾は美しいが救いはない。
★17 - コメント(1) - 2016年1月7日

麩之介さんの感想・レビュー

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