読書メーター KADOKAWA Group

2024年3月の読書メーターまとめ

えふのらん
読んだ本
8
読んだページ
2193ページ
感想・レビュー
8
ナイス
46ナイス

2024年3月に読んだ本
8

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

えふのらん
メタモルフォーゼをテーマにまとめたというよりメタモルフォーゼを様々に解釈して寄せ集めたアンソロ。だから薬剤で変身”しすぎた”鳥が出てきたかと思えば、二次性徴の男の子が勃起し、猫が踊ったりする。こう書けば早川のアンソロみたいだが、猫は人に対して下された禁止を破って踊るからそれ自体が皮肉になっている。いちばん主題に近い「ザムザ復活」でさえ変身済みの打ち捨てられた獣に共感し体制に牙を向く筋でかなり捻ってある。どれも変則的な筋で手塚の凄みが感じられた。
が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
8

えふのらん
昔話百科の姉妹本、なので内容は当然民俗学寄り。妖怪を山(鬼天狗等)、水(河童等)、里(狐狸等)、屋敷(化け猫等)と四つの属性に分類し、それに基づいて習性や人間との関わりを解説。一つの妖怪につき伝承を三つか四つを並べて、地域による解釈の違いや多様な性格も示されている。一般的なキャラクター百科とは真逆をいく内容だが十分に面白かった。辞典としてではなく、単に伝承をつらつら読むにも向いている。
が「ナイス!」と言っています。
えふのらん
総ルビだけどかちかち山の鍋の中身が何だったとか、安珍清姫(メンヘラ)の真っ黒焦げな結末についても書いてある。子ども向けの体裁をとりながら、しっかりグロテスクな部分に注目しているのは面白い。それは後半についても同様で、御伽草子から草双紙、赤黒青を経て昔話絵本に至る経緯を噛み砕く事なく説明している(当然総ルビ)。人によっては困るかもしれないが、屈折具合が好きだった。
えふのらん
2024/03/30 06:56

あと童話と童話/民話について柳田、佐々木、関の系譜を交えながら俯瞰的に解説しているのも好印象。昔話をきちんと理解するならこの三者は外せないし、今流通している本がなぜあのスタイルで書かれているのかがわかる。見た目の割りに大学の概論くらいに内容が濃い。

が「ナイス!」と言っています。
えふのらん
あやかしの鼓がすごい。夢野久作というとドグラマグラのチャカポコを思い出すが、この作品にはあの独特な擬音のエッセンスが詰まっている。特に「ポンポンという明るい音とはまるで違った、陰気な、余韻のない……ポ……ポ…ポ……」という一説が印象的で、彼の音に対する感性が表われている。「ポポポ……プポ……ポポポ」という擬音もよい。楽器や音色といった五感に関わる表現が巧みでドグラマグラに通じるものがあった。
えふのらん
2024/03/25 23:40

他にも死後の恋と瓶詰地獄という王道も収録されている。が、注目すべきは海洋小説ともいうべき支那米の袋と難船小僧と事件や夢を綴った怪夢といなかの、じけんだろう。夢野久作といば虚言や夢幻など捉えがたい作品で有名だが、ジャンル小説を意識した作品もあった。もちろん、展開はセオリー通りではないし捻りが過ぎるのだが。夢野久作の作風の広さを知ることのできる一冊。

が「ナイス!」と言っています。
えふのらん
江戸川乱歩の怪奇小説の選集。なのでD坂も赤い部屋も見当たらない。新潮の傑作選をはじめ、これまでにも乱歩の作品集はいくつも出ているから選集自体は珍しくないが、ここまで特化した本は珍しい。題名通りの人間椅子と鏡地獄と芋虫、幻想譚の一寸法師、変わり身相続と妖精の島を合体させたようなパノラマ島奇談。陰鬱でありながら同時に淫靡なところが乱歩らしい。
えふのらん
2024/03/25 23:08

推理小説らしいのは陰獣だがこれもSM要素がひとつの見せ場になっている。どれも描写が素晴らしく怪奇小説として十分に面白い。推理に拘らなかった夢野久作と比べると面白いのではないか。

が「ナイス!」と言っています。
えふのらん
メタモルフォーゼをテーマにまとめたというよりメタモルフォーゼを様々に解釈して寄せ集めたアンソロ。だから薬剤で変身”しすぎた”鳥が出てきたかと思えば、二次性徴の男の子が勃起し、猫が踊ったりする。こう書けば早川のアンソロみたいだが、猫は人に対して下された禁止を破って踊るからそれ自体が皮肉になっている。いちばん主題に近い「ザムザ復活」でさえ変身済みの打ち捨てられた獣に共感し体制に牙を向く筋でかなり捻ってある。どれも変則的な筋で手塚の凄みが感じられた。
が「ナイス!」と言っています。
えふのらん
第一部(67)に時をおかずに発表された二部(68)だけど作風がかなり変わっている。特に時間を意識させる演出に顕著で、ハヤトが針山で足元を囲まれる場面や檻に入った侍が池に落とされる所を状況設定とコマ割を組み合わせて遅延させている。導入でも雨が雪が降る所を二頁に渡ってコマをランダムに割っていて風情がある。物語の展開も気になるが、やはりこの作風で続きが読みたかったという気持ちが強い。
が「ナイス!」と言っています。
えふのらん
かなりジャンル越境を意識した短編集。黒人から輸血を受けて人種主義を乗り越えた白人が”業”に殺される「ジョーを助けた男」、感動的な子どもの救出劇が環境問題+変身によってあらぬ方向に飛んでいく「うろこが岬」、わが谷は未知なりきは明らかにジョンフォードの変奏だが、舞台の谷は流刑地で近親相姦で存続しているなど設定がかなり際どい。どれも意図的に定番から着地点をずらしていて、そこそこ意地が悪かった。まぁそんな悪意が面白いのだけれど。
えふのらん
2024/03/09 05:40

演出としてはカタストロフインザダークが好みだった。西哲子がマンホールに落ちる寸前の笑顔→フラッシュバック時の目を見開いた笑顔(逆光)→スタジオから連れ出す時の艶やかな笑顔(コートの襟立ち)。表情+環境でバリエーションをもたせてある。唐突な夢落ちで終わるのは「そこに穴があった」との差別化なんだろうけど、怨念落ちはこっちの方にしてほしかったな。

が「ナイス!」と言っています。
えふのらん
何よりも59年発表の「落盤」。口頭、録音、日記と媒体を変えながら語りなおされる証言、その度により影や描き込みがきつくなり劇画調になっていく画風。おなじみアセチレンランプ登場回だが段々と顔が強張り、落盤の真実、動機が判明する終盤ではBJ時代のような表情をしている。宝島よりはじまった初期作品の終わりを飾る佳作。
えふのらん
2024/03/09 04:33

他には「人食岬の決戦」という小作が収録されている。これは手塚には珍しい旧軍もので、繰り返し突撃命令ばかりを出す上官が配下の部隊を犠牲にし敵陣を突破しようとして罰が当たる、という筋。「犠牲」と書けば嫌な表現だが言い換えれば「陽動」。やりようによっては犠牲も抑えられるきちんとした戦術なのに、これを悪行のように書いてしまうあたりが人道主義者手塚の限界だろうか。陽動作戦の真意を配下の部隊に告げ口しようとする部下とそれを切って捨てる上官も戯画としては安易で如何にも民間の人が考えそうな内容(水木ならどう書いただろうか

が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2011/12/09(4524日経過)
記録初日
2011/12/09(4524日経過)
読んだ本
1177冊(1日平均0.26冊)
読んだページ
321672ページ(1日平均71ページ)
感想・レビュー
1177件(投稿率100.0%)
本棚
1棚
性別
現住所
奈良県
外部サイト
自己紹介

ほら耳をすませば天の声 脳内電波が 駆け巡る

参加コミュニティ1

読書メーターの
読書管理アプリ
日々の読書量を簡単に記録・管理できるアプリ版読書メーターです。
新たな本との出会いや読書仲間とのつながりが、読書をもっと楽しくします。
App StoreからダウンロードGogle Playで手に入れよう