ハリー・ボッシュシリーズの第4作。一作毎にロス市警刑事のボッシュのキャラクターが明確になって行く。刑事を主人公にしているが、組織に縛られず孤高でロスの街で事件を追いかける姿はハードボイルド小説だ。本作も上司を殴って強制休暇中に、前作で明らかにされた殺された母親の犯人を1人で追い続ける。そしてまた、魅力的な女性達が彼を癒し、サポートする。読者はボッシュ、ひいてはマイケルコナリーのファンになり、このシリーズを追いかける事になる。小説中に登場する音楽のナンバーも良い。本作ではトム・ウエイツ、ブルーバレンタイン

私小説を書く人は、とりわけ私小説のみを書く人はリアルに存在する自分の物語が面白くないと読者を惹きつけない。フィクションである小説だと言っても、作者の感覚を文章にして伝える訳なので、それがズレていたり虚構を感じることがあると作品世界に没頭しないのだ。西村賢太には私小説家として、人間としての生き方に面白みがある。道徳的や社会的にはめちゃくちゃな生き方だけど、だからそれが読者を惹きつける。このエッセイも芥川賞受賞後にそれまで書いてきたエッセイを集めたものである。歿後弟子と自称する藤澤清造から横溝正史まで幅広い。

遺作の豊穣の海のテーマとされる輪廻転生の仏教的意味から始まり、自衛隊市ヶ谷駐屯地での演説、切腹に至る三島由紀夫の精神的な変遷を辿った本である。現在のロシアによるウクライナ戦争で核の使用をちらつかせる独裁国家に対して米国の核の傘下で果たして我々は国を守れるのか、と言った憂慮と同様の感情を抱いた三島の思考が提出されている。自衛隊幹部に送った遺書的な文章の要約が三島の精神性の表出になっている。巻末の国立劇場理事による三島と歌舞伎の関わりの思い出話も興味を惹かれた。

ハリー・ボッシュシリーズの第4作。一作毎にロス市警刑事のボッシュのキャラクターが明確になって行く。刑事を主人公にしているが、組織に縛られず孤高でロスの街で事件を追いかける姿はハードボイルド小説だ。本作も上司を殴って強制休暇中に、前作で明らかにされた殺された母親の犯人を1人で追い続ける。そしてまた、魅力的な女性達が彼を癒し、サポートする。読者はボッシュ、ひいてはマイケルコナリーのファンになり、このシリーズを追いかける事になる。小説中に登場する音楽のナンバーも良い。本作ではトム・ウエイツ、ブルーバレンタイン

前作の裁判中にボッシュの母親が娼婦で、殺されたという事実が明らかになった。ボッシュは上司に暴行を加えた廉で謹慎をくらい、外的ストレス性精神症候群と診断されてしまう。謹慎休暇中にボッシュはある衝動に取り憑かれる。殺された母親の事件を蒸し返し、犯人を追及しようというのだ。単独で捜査を開始した孤高の刑事、ボッシュの苦悩や内面のトラウマが炙り出され、彼の人格の表出と事件の解明で物語が推し進められる。面白い。