そうなのだ。所詮この世は誰かに操作されて存在している。独自の価値観とか個性なんていうものは幻想。誰かの種まきと誰かの肥料で、畑である自分自身は乗っ取られている。それに、いつ気づく？気づく勇気はある？…「変半身」/ 村田沙耶香的なクレイジーな世界。この人の作品ってどこか紙芝居のよう。ちょっと笑えて、なんだか寂しくもあるのよね。セクシャルな内容だけれど、ほんとはいつもそれじゃないことを語っているような…。…「満潮」

そうなのだ。所詮この世は誰かに操作されて存在している。独自の価値観とか個性なんていうものは幻想。誰かの種まきと誰かの肥料で、畑である自分自身は乗っ取られている。それに、いつ気づく？気づく勇気はある？…「変半身」/ 村田沙耶香的なクレイジーな世界。この人の作品ってどこか紙芝居のよう。ちょっと笑えて、なんだか寂しくもあるのよね。セクシャルな内容だけれど、ほんとはいつもそれじゃないことを語っているような…。…「満潮」

ヤドカリ？んー、違うか。さまざまな「ひと」に変化しながら生きる「某」たち。主人公のはじめのよちよちとした様子が魅力的で、私も私をそんなふうに観察し育てたいなと思った。ちょっと自己愛高まった！自分の好きなこと、大事にしたいことを…自分自身を、観察したい。何を望むのか、どう生きたいのか。あなたはどうですかと、ゆるっとぬるっと問うてくる川上氏。純粋に文章も世界観もすきだし、ね。よい読書でした。

平野さん、「マチネの終わりに」では、現在の有りようで過去は変わると書かれていたと思う。この作品では「曖昧な本心」の肯定を描いているのかなと思った。ほんとの気持ち、なんてものが揺らがずに存在し得るのか…この社会のなかで。2040年代という、すこし先の未来という舞台がテーマをわかりやすく読ませてくれた。自由死やVF、リアルアバター。人間の傲慢や弱さの産物 だと思うけれど、それが存在する世界は…それはそれでちょっと魅力的。そうしてラストの爽やかさよ！これが小説。と、その主人公の姿をちょっと意地の悪い目で見る私。

実際に起きた事件を題材に書かれた作品。ネグレクトの末4歳と2歳の子どもたちが命を落とした。母親、そしてその母親、またその母親と…周りの男性による虐待を受けてきた彼女たち。そこに横たわる「愛」のかたち、「愛」のようなもの。愛を欲しがってはそこに遊び、それを失っては途方に暮れる。裏切られたことに気づかないふりをしながら心を壊していく…。悲惨な事件にすら、甘い蜜をたらすことができてしまう山田詠美さんの世界。読後は自分のなかの空虚が認識され、少し苦しくなるのです。