言動が変わっていて我が道を行く成瀬だけれど、そこには正義感と地元愛があり、柔軟さもあって、さすが成瀬！と思わせる。もっと成瀬を見たい！

『汝、星のごとく』が良かったので、続編なんて・・・と思っていたが、読んでよかった！　特に気になっていた北原先生の過去。北原先生のことがちょっとわかった気がする。

どこまで作者自身が投影されているのだろう？　小説家になったのか、小説家にしかなれなかったのか。小説家になれてしまうその才能は、やっぱりうらやましいけれど。

「医療の力なんて、本当にわずかなものだと思っている」「医療がどれほど進歩しても、人間が強くなるわけじゃない。技術には、人の哀しみを克服する力はない」「暗闇で凍える隣人に、外套をかけてあげることなんだよ」大学病院では医療の進歩を目指している。すごい外套を作ろうとしている。ならば地域病院では凍えそうな患者に寄り添い、その患者にあった暖かい外套をかけているのではないか。医療には両方が必要なのだ。

カバヒコに触ることが、自分と向き合うきっかけになっているのかな。どのお話も読んだ後にあたたかな気持ちになれる。

いろんなタイプの変な家の間取りから考察していくだけと思っていたので、この１軒からこんな因習めいたストーリーになるとは予想外だった。でも不動産物件の間取り図に、ベッドやテーブルが描いてあるものだろうか…造り付け？

ちゃんと読者に必要な情報を提示したうえでの挑戦状と、謎解きものとして分かりやすい形をとっていて、子どもの本格ミステリ入門としてよいと思う。しかし本屋大賞にノミネートされたほうが、謎…。

言動が変わっていて我が道を行く成瀬だけれど、そこには正義感と地元愛があり、柔軟さもあって、さすが成瀬！と思わせる。もっと成瀬を見たい！

ユリアが『レーエンデの聖母』と呼ばれることになるとは、まさにそのままの意味だったんだね。