リオンクール戦記
物語
妻子持ちの会社員『田中正』は、
病気を患い41歳の若さで亡くなる。
落下する感覚の後に目を覚ますとそこは異世界で、
正は、王都で暮らす貴族である
リオンクール家の7歳の息子バリアンに転生していた。
当初は言葉が通じず苦労するが、
徐々に異世界の言葉や常識を身に着けていき、
文明が発達しておらず、衛生も整備されていない、
この世界での生活に順応していく。
バリアンが突然別人のようになったことを、
周囲は当初警戒していたが、
以前のバリアンは素行に問題があったこともあり、
勤勉な性格になったバリアンを前向きに受け入れる。
そんな中で、以前のバリアンが顔に傷をつけたという、
屋敷で働く奴隷階級の少女ロナと、
その弟ロロにはずっと避けられていた。
しかし二人が足踏みで苦労して洗濯しているのを見て、
バリアンがこの世界に存在しなかった洗濯板を、
自作してプレゼントしたことをきっかけに、
謝罪して二人と友達になった。
ある日、薪集めと狩猟に出かける
父ルドルフと兄ロベールを城門まで見送ったバリアンは、
その帰り道に、糞尿が散らばり、
異臭を放つ不潔な町並みを見て吐き気を催す。
同行していた世話係のジローに、
ここは貧民地区ではあるがスラムではないと教えられる。
今まで、不衛生で治安が悪いと思っていた場所は、
貴族街という最高級の環境であり、
世界全体の水準はもっと低い事を理解したバリアンは、
自分の持つ知識を活用し、
生活水準を向上させて豊かな地を作る事と、
実現させる為、人を統べる事を目標に定めた。
その後、ロナたちに文字を教えつつ、
ロロと共にジローから剣を教わったりしていると、
狩猟から帰ったルドルフにそのことを注意される。
しかしそう言われる事を予想していたバリアンは、
この世界の宗教である聖天の教えを交えつつ、
誰もが飢えずに清潔な生活ができる地を作りたいと夢を語る。
バリアンの夢に理解を示したルドルフは、
その目標には"力"が必要になると言い、
領地リオンクールで戦士として教育を受けさせるため、
今暮らしている王都を離れて、
家族全員でリオンクールに戻ることを決定する。
引っ越しをする事をロナに伝えると、
彼女は、悲しそうな顔をしつつも理解を示す。
バリアンは、ロナが自分に抱く好意に気付いていたが、
身分の違いがある事と、
元の年齢もあり、さすがに子供に恋愛感情は持てず、
あえて気付かない振りをしており、
踏み入る事はせず、別離を選ぶ。
そして、少しでも良い嫁ぎ先が見つかるようにと、
バリアンはロナに文字だけでなく、
計算も教えることを決めた。
こうして冬が明け、春が近付いた頃、
バリアン達は一月弱に渡る馬車での旅を乗り越え、
リオンクールに戻る。
そこでバリアンは、自身の教育係となる、
執事のアルベールと出会う。
歴戦の猛者であるアルベールの過酷な特訓により、
徐々に転生前の価値観を破壊されていく中、
ある日、病気の奴隷と罪人を殺すように言われる。
困惑するバリアンだったが、
ルドルフも了承済みの話だと聞き、
転生前の価値観やキレイ事だけでは、
"バリアン"として戦乱の世を生き抜き、
目標を達成する事はできないと覚悟を決め、
初めて人を殺す経験をした。
こうして、戦士としても鍛え上げられたバリアンは、
夢の実現のため、戦乱渦巻く世界を闘い抜き、
後の世で、"最も偉大な王"と呼ばれる事となる。
これは、その始まりの物語。
登場人物紹介
41歳の会社員であった男性、
『田中正』の転生先。
伯爵家の三男であり、黒髪の少年。
物語開始時点では7歳。
元の人格は、素行不良の問題児だったが、
周囲からは、記憶喪失によって、
勤勉で落ち着いた少年になったと認識されている。
兄二人と妹一人がいるが、
兄の一人と妹は愛人の子であり、
実質的に次男として扱われている。
異世界での暮らしを知るうちに、
誰もが飢えず凍えず清潔な生活が出来るように、
環境を整えていくという夢を持つようになる。
伯爵家の当主。32歳。
戦いの義務がある貴族の身分であり、
「リオンクールの鷹」と呼ばれる武人。
家族思いな性格で、
妻のリュシエンヌとの関係も良好。
素行が悪かったバリアンを折檻している最中に、
正が転生してきて、
傍から見ると記憶喪失の状態となった為、
自分の責任として、少し引け目を感じている。
使用人として働く奴隷の少女。10歳。
ロロという弟がおり、
普段は二人一緒に働いている。
正が転生する前のバリアンに、
石をぶつけられたことで、
額に傷跡が残っている。
このため、当初はバリアンを避けていたが、
正が転生した後のバリアンから洗濯板を送られ、
過去のことを謝られたことをきっかけに、
和解して友達となる。
バリアンに淡い恋心を抱いているが、
本人も身分の違いを現実的に理解しており、
その想いを外に出すことはない。
リオンクール家の執事。50前後の初老の男性。
バリアンが持つ執事のイメージとは異なり、
顔中に無数の傷跡を持つ歴戦の武人。
口が悪く、差別的な発言や、
際どい冗談をよく口にする。
バリアンの教育係を務め、
その価値観を破壊するほどの、
過酷な特訓を課した。
このアルベールの教えは、
バリアンに大きな影響を与える。
『リオンクール戦記』作品情報
イラスト:toi8
発行 :ツギクル
発売 :SBクリエイティブ
発売日 :2018年9月10日(月)