2021年2月の注目本!トレンドワードまとめ

本の感想・レビューが集まる日本最大級の書評サービス読書メーターで、2021年1月にアクセス数が急増した本を紹介!文学賞の受賞作、映画の原作小説、TikTokで紹介されたノンフィクションなど。一部作品には試し読みも。

*感想・レビューはネタバレを含む投稿を除き、ナイスが多い順に自動で表示されます。

注目のできごと

第164回芥川賞『推し、燃ゆ』 第164回直木賞『心淋し川』

#おしもゆ 芥川賞受賞作

推し、燃ゆ
ヴェネツィア

文体の成熟度、完成度は極めて高い。言葉の紡ぎだす世界の信頼度もまたそうだ。その意味では、タイプは全く違うが、『日蝕』でデビューした頃の平野啓一郎を思わせないでもない。ただ、その一方で、内容的には随所に矛盾を孕んでもいる。そもそも、あかりは「推し」に全てを投影しながらも、それに溺れることはなく、いたって自己内省的でクールに冷めている。また、高校を中退した学力と、分析的な思考との乖離もまた大きい。すなわち、この小説は自分自身の存在意義を投影によって確認しようとしつつ、崩壊の予兆を最初から予見していた⇒

ナイス ★1886

ろくせい@やまもとかねよし

自己を問う物語。古くからの主題。しかし、まさに今でしか紡げない作品。主人公の思考表現は、重々しくないが決して軽いものでもなく、宇佐美さんの筆力に感服。自己形成の軸には他者が不可欠。主人公のそれは「推し」。「推し」への利他性を、切ないまで惜しみない利己で発する。偶像である「推し」は別世界の存在。一方「推し」は近親の人間。理想と割り切る「憧憬」の偶像が、現実の生活に「共生」としてが入り込み、この自己意識での曖昧な距離感が、自己を形成する過程を複雑にするのか。いつの時代も人間は自己を支える利他を求めるだろうか。

ナイス ★1762

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#直木賞受賞作 うらさびしがわ

心淋し川
ヴェネツィア

表題作を含めて6つの短篇を収録。いずれも千駄木町の外れの心淋し川の両岸にある心町が舞台。6篇はそれぞれ緩やかな繋がりを持つ。時代小説は制約が大きいともいえるのだが、その反面で封建社会といった枠組みを持つことで夾雑物を追い払えるという小説作法上の利点もある。この時代に女であることは、一層に大きな枷を背負うのだが、本編に登場する男たちもまた同様である。小説集の全体は、そうした生き難さの中で、せいいっぱいに生きる者たちを、哀調を通奏低音としながらも、細やかな愛惜を込めて描き出す。

ナイス ★819

starbro

直木賞候補作になってから、図書館に予約したので漸く読めました。(2/6)西條 奈加、初読です。心町(川)周辺に棲まう市井の人々の人生・機微を描いた時代連作短編集、渋く巧い秀作、直木賞も納得です。オススメは表題作『心淋し川』&『冬虫夏草』です。通常は芥川賞受賞作よりも直木賞受賞作が売れますが、今回は渋すぎて残念ながらあまり売れなさそうです(笑)機会を見つけて著者の他作品も読んでみたいと思います。https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/urasabishigawa/

ナイス ★794

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#文藝賞 宇佐美りん

かか
ヴェネツィア

宇佐美りんの最初の作品。文芸賞と三島由紀夫賞を受賞。実に華やかなデビューである。この独特の文体と小説作方に、新しい文学の期待が集まったのだろう。その後の活躍をみても、その期待には十分に応えているだろう。本作の語りは一筋縄ではいかない。うーちゃんの一人称語りのようでありながら、それは三人称客観体と交錯しあう。そもそも、これは誰に語りかけているのだろう。「おまい」と呼び掛けられるみっちゃんだろうか。ここでもまたそれは錯綜するかのようである。それでは、内なる「かか」にか。また、ここで語られる「愛」は、いたって⇒

ナイス ★617

starbro

先日の「改良」に続いて、第56回文藝賞受賞作のもう1作を読みました。熱量や勢いは感じるものの、20歳の現役女子学生ということもあってか、あまり世界観についていけず、115頁であっさり終了してしまいました。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000256.000012754.html

ナイス ★454

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#半藤一利 昭和史研究

日本のいちばん長い日 決定版 (文春文庫)
ヴェネツィア

1945年7月26日に出されたポツダム宣言を、即刻とは言わないまでも1週間以内に受諾していれば、ヒロシマとナガサキの原爆投下はなかったかと、そんな思いにとらわれる。しかし、それまでに4年間をも戦争に費やし、満身創痍となりながら、なおも本土決戦を叫んでいたのであるから、ことはそう簡単にはいかなかった。本書の中核を成す、最後の1日は、確かに長い長い1日であった。玉音放送にいたるまで、様々なところで、これほどのドラマが演じられていたのである。天皇の宣言受諾の決断(聖断)にさえ、異を唱えかねないのであったから。

ナイス ★692

mitei

先の大戦における日本が降伏する最後のやりとりが克明に書かれていた。この中でも昭和天皇のご聖断が非常に輝いており、感動した。それぞれがそれぞれの立場で考えている中で、昭和天皇のご聖断はもはや別の立ち位置というか、歴史を俯瞰しての発言に感じた。日本人皆が思っている国体護持は今でも護持され続けているし、一番早くに確信を持っていた昭和天皇のそこまでに至る考え方を逆に知りたくなった。阿南陸相の最期は暴発しそうになる陸軍を文字通り一死にて抑える陸軍大臣でしか出来ないことを立派にやられて感動した。

ナイス ★477

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#スマホ脳 スマホ依存

starbro

図書館の配本が遅延しているため、久々本を購入(但し、速攻メルカリで売却)して読みました。世界的ベストセラーになってるだけあって、タイムリーで興味深い内容です。本日もスマホに脳を侵されている人を数多見ました(笑)デジタル・ネイティブが今後どのように育っていくか興味があります。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000047877.html

ナイス ★978

kou

スマホは便利だが劇薬にもなると実感し冷や汗が出た。ここまで集中力を阻害するとは・・・(汗)。正直、どっぷりスマホのある生活にハマっているから、抜け出せる自信が無い。とりあえず運動量を増やしていきたい。

ナイス ★869

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#ファーストラブ 映画原作

三代目 びあだいまおう

ファーストラヴ、初恋。本作を読み終え、タイトルに抱いた印象はまるで違っていた。父親殺しで捕まった女子大生が放った台詞『動機はそちらで見つけて下さい』臨床心理士の由紀と国選弁護人の迦葉は、容疑者や関係者から当時の事情を聴いていく。人によって事実が異なる。嘘を言っている訳ではない。真実が見えない。心の傷、誰にも見えない、自分にさえも。環境という名のフィルターが、まるで雪が大地を覆うように傷を隠す。見えなくする。家族という名の迷宮、タイトルが示す意味はきっと『初めて受ける愛』 そう、家族がくれる愛のこと‼️🙇

ナイス ★334

エドワード

大学生の環菜が父親を包丁で刺した事件の裁判員裁判をめぐる、心理サスペンス。テレビ局のアナウンサー試験を途中退席した環菜に何が起きたのか?臨床心理士の由紀の視点から事件を追う縦糸、由紀の夫・カメラマンの我聞、彼の弟で環菜の弁護士を務める迦葉の三人の関係が横糸、由紀もまた心に傷を負う多重構造が物語に重層性を与えている。迦葉とともに事件を調べる由紀は、少女時代の環菜の極めて特殊な家庭環境を知る。彼女は本当に父親を刺したのか?環菜の初恋の謎は?人は時に心の闇を封じ込める。終盤の裁判劇が実に鮮やか、心地よい終幕。

ナイス ★208

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#あの頃。映画 原作エッセイ

うわじまお

10年ほど前のオタクたちの実話物語。漫画と文章で構成されている珍しいスタイル。主人公である著者とその友人たちが、ハロプロ、松浦亜弥などのアイドルヲタとなり、大阪阿倍野区を根城とし、あほな生活、あほなイベントなどを繰り広げながら、”中学10年生”の遅い青春を謳歌する。今度、松坂桃李主演で映画化されます。なめてたけど、笑えるし、泣けるし、めちゃくちゃ面白かった! 

ナイス ★34

0607xxx

映画化決定!という事で読んだが、とても良かった。モーニング娘。率いるハロプロ全盛期に遅すぎる青春を送った男たちの面白おかしい日々。映画も楽しみ。

ナイス ★9

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#消された一家 TikTok 本の紹介

三代目 びあだいまおう

鬼畜···いやもはや人ではない悪魔。大切な読友さんに教えて頂いた本書、犯人に殺意を覚えるとのことでした。とんでもない!殺意なんてとんでもない!殺意を抱くなら少なくとも相手に近づく勇気も必要。でもこれは次元を越えてる。逃げないと、逃げのびないと殺される!恐怖、凄まじい恐怖しかない!気付くと眉間と口元を歪めながら読んでた!同じ状況に襲われ一体私達の誰が逃げ出せる?無理、きっと無理!北九州監禁連続殺人事件。1つだけ言える事。話の上手い人の『上手い話』には近づくな!触れるな!触れると同時に抜けられなくなる‼️🙇

ナイス ★297

遥かなる想い

2002年に北九州小倉で発覚した監禁・殺人事件を克明に記録したノンフィクション。主犯の男に命じられるままに家族が殺しあったこの事件は正直読んでいて気分が悪くなるほどであった。著者は拷問と虐待でマインドコントロールされた女性加害者に対してやや同情的であるが、その状況下での心理状態はわからないにしても、その場でおこなわれた通電などの拷問は凄惨を極めており、読後感はよくない

ナイス ★270

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#清陰高校男子バレー部 小説

ゴンゾウ@新潮部

ユニとチカ、面倒くさすぎる。ここまで引っ張るなよ。でも青春ですね。やっと清陰高校バレー部が始まる。ユニとチカの物語が始まる。名門ユニチカのように。【ナツイチ 2017】

ナイス ★105

ユーさん

色々な性格の登場人物、地方の公立高校が舞台、そして弱小部活に実力者が揃う。王道ですね。方言交えた彼らの遣り取りは、やはり面白い。次巻にも期待。

ナイス ★104

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#明石家さんま プロデュースアニメ

ヴェネツィア

タイトルはやはりあまり感心しない。「肉子」という言葉にはどうにも馴染めないのだ。さて、西加奈子の小説にはアタリ・ハズレがあるのだが、これはアタリ。語り手であるキクりんの肉子に対する批評意識が、肉子の造型を膨らませてゆくばかりか、小説そのものの推進力となっている。そして、その批評はキクりん自身にも及び、彼女の内省を促しもする。これによって小説はさらに深みを加えることになる。それになにより読んでいて文句なく面白い。ペーソスの味付けも充分にある。重松清の女性版という気がしなくもないのであるが。

ナイス ★1174

鉄之助

港にある「うおがし」という焼き肉屋が舞台。これだけで、面白いではないか! 毎日新鮮な魚ばっかり食べていると、「やぱっり肉が食べたいな」。わかる、わかる。その気持ち。肉子ちゃんは、決まって”糞野郎”にだまされる→ボロボロになる→夜の店で働く、の繰り返し。「人間関係の始め方も、下手くそ」だが、みんなに愛される。彼女の娘・キクりんとの掛け合いが、たまらなく心地よい快作だった。

ナイス ★987

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#教場 原作

ehirano1

当方は風間教官に逢いたくて教場を読んでいるようなものです。風間教官は今回もキレッキレでした。因みに、前作程のなんかこう居心地が悪いというかなんというか、まあそんな読後感(苦笑)はありませんでした。

ナイス ★236

教場の続編。相変わらず鋭い風間公親。彼の一言一言が私の背筋をまっすぐにしてくれるようで小気味よかったです。

ナイス ★206

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#殺し屋ファブル 映画原作

mitei

殺し屋が命令で一時的に殺さない人になる話し。2人のコンビがまた面白いな。こういう超人的な能力だけど、誰にでも出来そうな気がするくらいの絶妙な超人加減が良いのでついつい私もこうなってみたいと思える。

ナイス ★186

yoshida

「喧嘩稼業」が休載中のヤンマガで楽しみにしている作品。驚異的な強さで「ファブル」の異名をもつ殺し屋。意味合いは「寓話」。雇い主から一年間の休業を命じられ、相棒と一般人として潜伏する。一般人としての名前は佐藤兄弟。今まで殺しを稼業として来た佐藤だけに当然にトラブルは起きる。のんびりした空気を出しながらも、プロとしての驚異的な動きを見せるファブル。理論に裏打ちされた動き。普段の「佐藤」と、殺し屋「ファブル」としてのギャップが面白い。実に緻密な取材と調査による「ファブル」の技術を興味深く読む。妹役も実に良い。

ナイス ★102

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