仕事と子育ての合間に毎日本を読んでいます。
一般向けサイエンス本が好きで、
宇宙や生物、自然科学全般よみます。
そのほか海外小説、SF、エッセイやビジネス書など
ナイスやコメントくださる方、ありがとうございます!
感想は、ちゃんと読んでからナイス押し
てます。
文章が上手な方ばかりで勉強になります。
感想の「もういい」とか「もう読まん」は、その作家の本は二度と手に取らないということです。
24歳女、通信制大学で心理学を学んでおります。
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最近は図書館や書店に行くたび、「ここにある本の量のうち、どれくらいを生涯で読むことができるのだろうか」と思います。
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読書はコスパのいい旅。
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本の世界にどっぷり浸るのが至福のひととき。
紙の手触りや
、めくるときの音がたまらなく好きです。
積読本がどんどん増えていっているのが幸せな悩み。
小学生の頃は本が好きで読んでいましたが、中高で離れ・・・
うつ病の影響もあり、読めない日々が続きました。
24歳になり、うつも落ち着き、図書館も活用しながら読書を楽しんでいます。
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好きな作家
村山由佳さん、辻村深月さん、道尾秀介さん、窪美澄さん、乙一さん。
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好きな本
『龍神の雨』、『蜜蜂と遠雷』、『模倣犯』、『向日葵の咲かない夏』、『ふがいない僕は空を見た』、『告白』。
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読書以外の趣味は、
フルート、音楽鑑賞(クラシック)、バレー観戦。
ノンフィクション、歴史小説、時代小説、花街などの風俗やアンダーワールドとかなりの乱読です😅
★お気に入りの登録、解除はご自由にどうぞ。
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まぁ読書はかなり好きですSNSは@toosekitetu/@tohsekitetu等、そこそこしておりますね。ちょっと諸事情で、今は障害年金等で細々と暮らしております。
困ったことに、説明も一切ないままAmazonカスタマーレビューが凍結されましたし、アメ
ブロまでそんな感じなんで、読書メーターで再起をはかります。長い感想等は別途twishortにまとめますね。FacebookやInstagram等のSNSも使っていますよ。
過去分も極力、記憶の範囲で取り上げていますが、読了日、概ね記録・記憶等がしっかりしていないものも多いので、日付は目安と思っていただければ幸いです。
雑食ですので、古典的な文学作品から陳腐?な成人まんが等々まで載せていますので、その辺はご留意ください。
本を読むことで、様々な世界や考え方に触れるのが楽しみです。ジャンルを問わず、新しい発見がある本が好きです。読了後には星評価をつけていますが、あくまで個人的な感想と自分のための備忘録です。皆様の感想も選書の参考にしており、楽しく読書メーターを利用しています。
4児子育て中。
基本的には読書記録。
あとは、話題書探したり、いろいろな方の感想を読んで選書したり。
読書の時間があまりないのと遅読で「読む」のは月に2〜3冊ですが、最近Audibleを利用するようになり、思考が必要ない洗い物、掃除、家庭菜園などの時間によ
く聴いていて、「聴く」のは月4冊前後かな。
ジャンル的には、青春もの、部活もの、恋愛もの、ヒューマンドラマ、ミステリー、サスペンス、ファンタジー、ラノベを読みます。
ミステリーは好きだけど、いろいろ時間を犠牲にしてしまうのであまり手を出しません。
ホラー、ノンフィクション、翻訳、ビジネス書、実用書は読まないですね。
私は批評家でも評論家でもなくどこまでも「読者」です、あくまで「感想」を書いてます。
何を書くかは自由ですが、時折、この表現がよくない、構成が悪い、ありきたりなど書評する方を見かけますが、合う合わないはあるので、好き嫌いは感想でいいと思いますが、良し悪しは感想ではないかなと思って気をつけてます。
他ユーザーさんとの関わり方がイマイチわからないので、こちらからコメントすることはほぼないと思いますが、こっそり「お気に入り」にさせてもらおうかなと思います。
何か失礼がありましたらご容赦ください。
雑多な読書をしています。年間100冊読破を目指すも、なかなか。とくに好きな作家と作品は、池澤夏樹(静かな大地)、船戸与一(蝦夷地別件)、宮部みゆき(時代小説群)、五木寛之(初期の小説群、エッセイ)など。民俗学、社会学の本もよく読みます。南方熊楠、塩見鮮一郎
、赤坂憲雄、内田樹など。エンタメノンフと呼ばれるジャンルも好き。なかでも高野秀行、角幡唯介。関野吉晴、長倉洋海なども好きな書き手です。最近は桐野夏生の小説に嵌っています。
高校から大学までは色々と本を読んでいましたが、ふと最近読んでいないなぁと思い、また読み始めました!
2025年以降に読んだ本を記録しています。
推理小説、SF小説、歴史小説が好きです。
ビジネス書も読みます。
好きな作家さん
・有川浩
・東野圭吾
・北
方謙三
読書を趣味にしたくて最近色んな本を読みはじめた、読書初心者です🔰どうぞよろしくお願いいたします🙏
今年になって本読み始めるようになりました。
なるべく同ジャンルの本を同時期にまとめて読むのが目標です。
結末まで読んで再読に気が付いたショックをきっかけに「読んだら書く」を原則にして投稿率100%を維持。文字制限にピタリと収める快感に目覚めた。還暦までの1,000レビュー達成は、3年遅れた。この間、喜びも悲しみもあった。次の1,000レビューは途方もない目標
に感じている。読んだ本が次に読むべき本を教えてくれるようになった。名作にも駄本にも独自の命がある。デジタル世界においては、紙の本の読書は内省という貴重な時間。例えると只管打坐。これからも良い読み手でありたい。
自作の短編小説( 科学 × 哲学 )
『量子の彼方で眠るもの』
第一章 シュレディンガーの囁き
僕が彼女と出会ったのは、五次元通信の実験中だった。
「この宇宙は無限に分岐している。観測するたびに、私たちは新たな世界を生み出す。」
彼女——アマリリ
ス・シュレディンガーは、そう言いながら、美しく配置されたフェルミオンのように微笑んだ。その瞬間、僕の意識は複数の現実へと引き裂かれる感覚を覚えた。
僕の名は相澤凛久(あいざわ りく)、20歳。大学で理論物理学を専攻しながら、量子情報転送の研究をしている。だが、彼女の言葉が僕の知識を遥かに超えていたことは明らかだった。
「君は、どこから来たんだ?」
「私は、ここにいるし、いないわ。」
彼女の声は、まるで観測されることで確定する電子のように曖昧だった。
僕たちの会話は、通常の言語では成立しない領域へと突入していた。情報エントロピーを越えた何か——彼女はそれを「メタ実在」と呼んだ。
「この世界は、私たちの認識が生んだ結果にすぎないの。観測者がいなければ、世界は存在しない。そして、あなたは既に観測者ではない。」
彼女の瞳には、宇宙のすべての確率波が重ね合わされたような深淵があった。その瞬間、僕の脳内に高エネルギー粒子が衝突し、新たな現実が生成される感覚が走った。
僕は確信した。
この世界は、僕の知る宇宙ではない。
第二章 量子幽霊
目の前のアマリリスが、波動関数の崩壊のように揺らめいた。まるで確定していない存在。
「僕は……観測者ではない?」
「そう。あなたはすでに、この宇宙の基底状態には存在しない。」
彼女の声は、量子トンネル効果のように、僕の理解をすり抜けた。
「待て……どういうことだ?」
僕は自分の手を見た。だが、そこにあるべき固有の質量感がなかった。まるで、僕自身が確率波の重ね合わせになっているような——。
「あなたは、ある決定的な瞬間において、観測の主体ではなくなったの。だから、今のあなたは存在と非存在の狭間にいる。」
「そんなはずはない! 僕は今こうして……」
「あなたの身体は、観測者としての実在を失ったのよ。」
彼女が手をかざすと、僕の身体の一部が透けて消えかけた。脳が警報を鳴らす。僕は、いま、存在そのものを失おうとしているのか?
「……それじゃあ、僕は幽霊になったのか?」
「違うわ。あなたは"観測される側"になったのよ。」
その言葉の意味が、すぐには理解できなかった。
アマリリスは、僕の思考が収束するのを待つように、静かに続けた。
「これまでのあなたは、観測者として、宇宙に干渉する立場だった。だが、ある瞬間から、あなたは"観測される側"へと移行した。つまり……」
「……僕は、宇宙そのものの一部になった?」
彼女は微笑んだ。それが肯定のサインであることは、言葉を交わさずとも分かった。
僕は今、この宇宙の"背景ノイズ"になったのだ。観測する主体ではなく、確率波の一つ。単なる情報の束。
「でも、なぜ?」
「あなたがそれを選んだからよ。」
「僕が?」
「ええ。あなたは量子実在の本質に近づきすぎた。そして、世界の裏側を"知る"という選択をした。結果、あなたは観測者ではいられなくなったの。」
彼女の瞳には、無数の可能世界が映っていた。それは、量子コンピュータが同時に演算する無限の選択肢のように——。
「じゃあ、僕はもう元には戻れないのか?」
「戻れるかどうかは……あなたの観測次第ね。」
彼女の指先が僕の額に触れると、世界が再び波動関数のように揺らぎ始めた。
——僕は、まだ"存在"するのか?
第三章 シュレディンガーの牢獄
僕の意識は、空間の裂け目に落ち込むように揺らめいていた。
彼女の指先が離れた瞬間、世界は無数の可能性に分岐し、僕の存在はその狭間に浮遊している。
「観測次第……?」
言葉を発したはずなのに、僕の声は響かなかった。まるで、言葉そのものが物理法則の影に埋もれてしまったかのようだ。
「そう。あなたは今、"決定"の外側にいる。」
彼女の声だけは、明瞭に届く。僕は自分の手を見つめる。やはり、それは半透明のままだ。
「……どうすれば、戻れる?」
「簡単なことよ。"観測"を取り戻せばいい。」
「観測……?」
「あなたは今、シュレディンガーの猫の状態にあるの。存在と非存在の重ね合わせ。そのままでは、あなたの確率波は収束しない。」
僕は思考を巡らせる。つまり、このままでは、僕は永遠に**"決まらない"存在**ということか。
「じゃあ、誰かが僕を観測すれば……?」
「ええ、でも問題があるわ。」
「何だ?」
「この状態で、あなたを観測できるのは、あなた自身だけよ。」
僕は思考を停止した。
「……僕自身が、僕を観測する?」
「そう。でも、いまのあなたには"観測者としての主観"がない。」
「それって……どういうことだ?」
彼女は静かに目を伏せる。
「あなたは、自分が今どこにいるのか、確信が持てないでしょう?」
そう言われて、気づいた。
僕は、"ここ"にいるはずなのに、"ここ"がどこなのか、わからない。
この感覚は奇妙だった。まるで、座標軸のない空間に投げ出されたような感覚。いや、それだけじゃない。僕が"僕"であるという確信すら、ぼやけている。
「観測とは、自己の確定行為でもある。けれど、あなたはいま、"自己"を持たない存在になっている。だからこそ、あなた自身があなたを観測できないの。」
僕は、理解した。
今の僕は、"僕"であると断定できない。だから、存在も確定しない。つまり、僕が自分を観測できるようにならなければ、ここから抜け出せないのだ。
「……じゃあ、僕はどうすれば?」
「"自分自身を観測する"という行為を取り戻すしかない。」
「そんなこと、可能なのか?」
「ええ。可能よ。」
彼女の指先が、空間をなぞると、そこに数式が浮かび上がる。
Ψ(x,t) = Σ C_n φ_n e^(-iE_nt/ħ)
量子力学の波動関数。その数式の意味は、一つしかない。
「僕の存在は……確率の海に溶けてしまっている?」
「そう。でも、完全に消えたわけじゃない。"選択"さえすれば、あなたは再び一つの存在として収束できる。」
「選択……?」
「あなたは、どの"僕"でありたい?」
その瞬間、僕の前に、無数の"僕"が広がった。
ある"僕"は、別の世界で生きていた。
ある"僕"は、既に死んでいた。
ある"僕"は、まったく違う人生を歩んでいた。
そのすべてが、"可能性"として揺らめいている。
僕は、自分がどの"僕"であるかを、決めなければならない。
選ばなければ、僕は永遠に、観測されない亡霊のままだ。
——僕は、どの"僕"を選ぶ?
第四章 波動関数の崩壊
無数の"僕"が、確率の海に漂っている。
ある"僕"は、平凡な日常を送る会社員。
ある"僕"は、研究者として量子力学の真理を追い求める科学者。
ある"僕"は、既に死んでいる。
僕は、そのすべてを同時に認識していた。
「選ばなければ、あなたは存在として確定しない。」
彼女の声が、遠くで響く。
だが、僕は選ぶことができるのか?
何を基準に?
どの"僕"が、本当に"僕"なのか?
—— いや、違う。
この問いの前提が間違っている。
僕が"僕"であることは、選択によって初めて確定する。
つまり、「本当の僕」が存在するのではなく、選んだ僕こそが本当の僕になるのだ。
僕は、決断した。
「……この"僕"だ。」
僕が指を伸ばした瞬間、空間が収縮する。
無数の可能性が一つに収束し、僕の意識が強烈な引力に引きずり込まれる感覚。
空間が折りたたまれ、すべての"僕"が重ね合わせから外れる。
視界が、一瞬、真っ白になった。
第五章 観測者の眼
意識が戻ると、僕は見覚えのある場所に立っていた。
—— 自分の部屋だ。
机の上には、開いたままの量子力学の本。
デジタル時計が、午前3時42分を指している。
僕は、震える指で自分の腕をつねった。
痛い。
「……戻ってきたのか?」
僕は存在する。
"僕"が"僕"であると確信できる。
それこそが、"観測"の意味。
だが、一つだけ違和感があった。
部屋の片隅に、彼女が立っていたのだ。
「おかえりなさい。」
彼女は、あの場所から消えたはずではなかったのか?
「……どうして、君がここに?」
彼女は、穏やかに微笑んだ。
「あなたが"僕"を選んだからよ。」
僕は、一瞬息をのむ。
「まさか……?」
「ええ。あなたが戻ってくる"この世界"を選んだということは、"この世界の私"もまた、選ばれたということ。」
—— そうか。
波動関数が崩壊するということは、僕だけでなく、世界そのものも"決定"されたということなのだ。
「これが……観測者の役割?」
彼女は、優しく頷く。
「あなたは、存在を確定させた。だけど、これで終わりではないわ。」
「どういうことだ?」
彼女は、部屋の窓の外を指差した。
僕は、ゆっくりと窓に近づく。
そして、カーテンを開けた瞬間——
世界は、僕の知っているものとは違っていた。
第六章 特異点の向こう側
窓の外に広がる風景は、見覚えがあるようで、どこか違っていた。
—— 夜の街。だが、静かすぎる。
車のエンジン音も、人々の話し声もない。
ビル群は確かに存在しているのに、すべての光が奇妙に歪んで見える。
まるで、現実が波紋のように揺らめいているかのように。
「ここは……本当に"僕の世界"なのか?」
僕は、振り返って彼女を見る。
彼女は、相変わらず穏やかな表情を浮かべていた。
「そうね。あなたが"選んだ"世界ではあるけれど、完全に元の世界とは一致しないわ。」
「どういうことだ?」
「あなたは今、"観測者"として世界を再構築しているの。」
彼女は、机の上に置かれた量子力学の本を指差した。
「あなたが選んだ"現実"は、観測した瞬間に固定される。でも、それは"以前と全く同じ"という保証にはならない。わずかに異なる世界が形成されることもある……あなたは、そのことをすでに理解しているはず。」
僕は、喉の奥で息を詰まらせた。
—— そうだ。
シュレーディンガーの猫の思考実験でも、観測によって状態が確定する。
しかし、観測する前の可能性は無限に存在し、"どのように確定するか"は完全には制御できない。
つまり、僕が戻ってきたこの世界は、元の世界と極めて似ているが……完全には同じではない。
「それじゃあ、ここは……"パラレルワールド"なのか?」
僕の問いに、彼女は首を横に振った。
「"あなたにとっての唯一の世界"よ。でも、それは必ずしも"以前と同じ世界"とは限らない。」
「じゃあ、どこが変わったんだ?」
彼女は、窓の外の街を見つめた。
「それを確認するのは、あなた自身の役目よ。」
第七章 不連続性の証明
僕は、部屋を飛び出した。
—— 街へ行けば、違いがわかるかもしれない。
階段を駆け下り、エントランスのドアを開ける。
その瞬間、空気の密度が違うことに気づいた。
夜のはずなのに、空は不自然なほど暗い。
街灯はついているが、どれもぼんやりとした光しか放っていない。
道路に出る。
誰もいない。
—— いや、違う。
"誰も"が、"いる"。
道の向こう側、建物の隙間、交差点の角……
視界の端に、"何か"が見える。
人影のようなものが、こちらを見ている。
しかし、視線を向けると、それは消えてしまう。
まるで、量子もつれのように。
—— "観測"できないものは、存在しないのと同じ。
「……これは、どういうことだ?」
僕は、背後に気配を感じた。
振り返ると、彼女がそこに立っていた。
「あなたが戻った世界は、"完全なもの"ではないの。」
「どういう意味だ?」
「あなたは"観測者"として、この世界を選んだ。でも、世界は"完全に確定"したわけではない。まだ、不確定な部分が残っている。」
僕は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「それが……"見えない人影"の正体か?」
彼女は静かに頷いた。
「あなたが"観測"しなければ、彼らは存在しない。だけど、あなたが"観測"しようとすると……彼らは消える。」
—— まるで、電子の二重スリット実験のように。
観測すると、状態が確定する。
しかし、この世界にはまだ"確定していない部分"が残っている。
「じゃあ……僕はどうすればいい?」
彼女は、一歩僕に近づき、低い声で囁いた。
「"すべてを観測"すればいい。」
「すべて……?」
「そう。すべての"不確定なもの"を、あなた自身の意識で確定させるの。」
彼女の瞳が、深い深い夜の闇のように揺らめいていた。
僕は、息を呑んだ。
—— もし、"すべてを観測"したら……
この世界は、本当に"僕の世界"になるのだろうか?
それとも——
第八章 観測者の代償
「"すべてを観測する"とは、どういうことなんだ?」
僕の問いに、彼女はゆっくりと微笑んだ。
「文字通りの意味よ。この世界の"未確定の部分"を、あなた自身の意思で確定させるの。」
僕は街を見渡した。
ぼんやりとした光、視界の隅に現れては消える影。
確かに、この世界には"不完全さ"がある。
「でも、それが本当に可能なのか?」
「可能よ。あなたはすでに"観測者"になっているもの。」
彼女が、そっと僕の額に触れた。
—— その瞬間、視界が変わった。
街の建物、道路、標識……すべてが、"数式"のように組み立てられたものに見える。
まるで、この世界が"コード"で構成されたシミュレーションであるかのように。
「……これは?」
「あなたの認識が変わったの。いま、あなたは"この世界の本質"を見ている。」
僕は驚愕しながらも、一つの疑問を抱いた。
「もし僕がこの世界を"観測し尽くしたら"……何が起こる?」
彼女は少しだけ表情を曇らせた。
「それは……"世界の決定"を意味するわ。」
「決定?」
「今はまだ、不確定な可能性がこの世界には残っている。でも、あなたがすべてを観測し、確定させた瞬間……この世界は固定され、二度と変化しなくなる。」
僕の心臓が、ドクンと鳴った。
「つまり……僕がすべてを観測すれば、この世界は"完成"する。でも、それはもう"変化しない世界"になってしまう、ということか?」
「そうよ。」
彼女の声は静かだったが、その響きは恐ろしいほどに冷静だった。
—— 変化しない世界。
—— 確定された未来。
それは、ある意味"永遠"に等しい。だが、"自由"とは正反対の概念でもある。
「もし僕が観測しなければ?」
「この世界は不安定なまま。あなたが意識を向けた部分だけが確定し、他の部分は"未確定のまま"揺らぎ続けるわ。」
—— どちらを選ぶ?
完璧に確定された、変化しない世界。
それとも、不完全であり続ける、未確定の世界。
「……選択肢は、二つしかないのか?」
彼女は少しだけ考える素振りを見せたあと、静かに答えた。
「"第三の選択肢"を見つけられるかどうかは、あなた次第よ。」
「第三の選択肢……?」
彼女はそれ以上何も言わなかった。
—— ならば、僕が見つけるしかない。
僕はゆっくりと街を歩き始めた。
目の前の世界は、まだ揺らいでいる。
だが、その揺らぎの中にこそ、"新しい可能性"が眠っているのかもしれない。
そして僕は、この世界の"本当の法則"を理解するための旅を始めることにした。
第九章 第三の選択肢
僕は街を歩いた。
視界の端で、世界が僅かに揺れているのが分かる。
ビルの輪郭が曖昧になり、信号機の色がぼんやりと滲む。
路地裏の奥に広がるはずの風景は、まだ"未確定"のままだ。
すべてを観測すれば、この世界は固定される。
観測しなければ、不確定なまま揺らぎ続ける。
ならば、"第三の選択肢"とは何なのか?
考えながら、ふと気づく。
通りを行き交う人々の顔が……見えない。
彼らは確かに存在する。歩き、話し、何かを考えているように見える。
でも、その表情の細部は"ぼやけたまま"だ。
"僕が観測していないから"か?
試しに、一人の男の顔をじっと見つめた。
次の瞬間——
彼の顔がクリアになり、細かいシワや瞳の色までもが鮮明に見えた。
それと同時に、男はふっとこちらを振り向く。
「……お前、誰だ?」
僕は言葉を失った。
なぜなら、彼は"僕の存在"を認識した瞬間、まるで"確定されたキャラクター"のように意識を持ったのだから。
—— まさか。
僕は次々に人々の顔を観察した。
すると、観測した人物だけが"意識を持ったかのように"こちらを見返してくる。
それ以外の人々は、背景の一部のように曖昧なままだった。
「……これが"観測の力"か?」
背後から、彼女の声が聞こえた。
「ええ。あなたは今、この世界を作っているのよ。」
僕は息を呑んだ。
"観測"とは、ただ見ることではない。"存在を確定させること"なのだ。
つまり、この世界は"観測者によってのみ構築される"。
僕が見なければ、そこに存在しないのと同じなのだ。
—— ならば、"第三の選択肢"とは?
その答えが、ふいに頭をよぎる。
「……僕が"世界を観測する側"であり続ける限り、この世界は僕の認識に依存する。」
「そうね。」
「でも……もし、"観測する主体"を増やしたら?」
彼女は一瞬、目を見開いた。
「つまり?」
「僕だけがこの世界を観測しているから、世界の確定も、未確定も、僕の意思で決まる。でももし、"他の存在も観測者になる"としたら?」
彼女は沈黙した。
僕は続けた。
「もし、僕だけでなく、他の人間がそれぞれ独立した"観測者"になれたなら……世界は僕の意識だけで決まらなくなる。"不確定"と"確定"の間に、新しい均衡が生まれる。」
「……でも、それは簡単なことじゃないわ。」
「そうだろうな。」
この世界の住人たちは、基本的に"観測される側"だ。
彼らが"観測者"になるには、自分の世界が未確定であることを理解し、意識的に世界を"見る"必要がある。
だが、それが可能なら……
"世界は固定されず、それでいて揺らぎすぎることもない。
"観測者の集合知"によって、新しい現実が動的に形成され続ける。"
「……おもしろい発想ね。」
彼女は微笑んだ。
「でも、どうやって人々を"観測者"にするの?」
僕は街の人々を見渡した。
彼らの多くは、ぼんやりと歩いている。
まるで、"自分の生きている世界"について考えたことすらないかのように。
「まずは、彼らに"気づかせる"しかない。」
—— 世界は確定していないこと。
—— 自分たちは"観測する力"を持っていること。
—— そして、世界は"見た者の数だけ変わる"ことを。
僕は深く息を吸い、決意した。
「……実験してみるよ。」
彼女は静かに頷いた。
そして、僕は最初の一歩を踏み出した。
第十章 集合知の覚醒
—— まずは、一人目だ。
僕は目の前にいる男を見つめた。
彼の顔は、すでに"観測"によって確定されている。
だが、彼はまだ"観測者"ではない。
「君は、今ここにいることを意識しているか?」
唐突な問いかけに、男は戸惑った表情を浮かべた。
「……どういう意味だ?」
「自分の意識が、この世界を形作っていると考えたことは?」
「何を言ってる? 世界は最初から存在しているものだろう?」
予想どおりの反応だった。
彼は"観測される側"の人間だ。
今まで、この世界を"疑う"ことすらなかったのだろう。
「なら、ひとつ実験しよう。」
僕はゆっくりと視線をそらし、彼から意識を外した。
—— すると。
彼の輪郭が、徐々に揺らぎ始める。
背後のビルの影と溶け合うように、存在が曖昧になっていく。
「な、何だこれは……?」
彼の声がかすれ、視界が揺れる。
彼自身も、自分が"消えかけている"ことに気づいたのだろう。
「おかしい……俺は、ここにいるはずなのに……!」
「そう。君は"いる"んだ。」
僕は再び彼を見つめ、意識を集中させた。
すると、彼の体が再びクリアになり、輪郭がはっきりと戻ってくる。
「……どういうことだ?」
「君が"自分自身を観測しない限り"、君は存在しないんだ。」
男は呆然とした。
「でも……そんなバカな……!」
「信じられないか?」
男は震えながら、自分の手を見つめた。
確かにそこにある。だが、一瞬前までは"曖昧な存在"だった。
「……これが"観測の力"だ。
僕だけでなく、君もこの力を持っている。ただ、それを使っていなかっただけだ。」
「俺も……観測者になれるのか?」
「できるさ。だが、そのためには"世界を疑う"ことから始めなければならない。」
男は目を閉じ、深く息を吸った。
そして、ゆっくりと目を開く。
「……見える。今まで見えなかったものが。」
彼の瞳が、確かな意志を持ってこちらを捉えた。
彼は"観測者"になったのだ。
—— 一人目、成功。
だが、これは始まりに過ぎない。
まだ無数の人々が"観測される側"のまま、曖昧な存在でいる。
彼らに気づかせなければならない。
この世界は"決まっているものではなく"、"観測によって変わる"のだと。
—— もし、すべての人間が"観測者"になったら?
世界は、どこまでも流動的なものになる。
個々の意思が、"確定"と"未確定"を行き来し、新たな現実を生み続ける。
固定された秩序は崩れ、絶え間ない変化が訪れるだろう。
それは"混沌"なのか? それとも"究極の自由"なのか?
—— 僕は今、その境界線に立っている。
「……やるべきことは決まったな。」
僕は、新たな観測者となった男とともに、歩き出した。
第十一章 観測者たちの夜明け
彼が"観測者"になった瞬間、世界はわずかに揺らいだ。
目に見えないはずのものが、彼には"見えた"のだ。
彼の視界には、これまで気づくことのできなかった無数の"選択肢"が浮かび上がっていた。
「……これは、一体……?」
男は息を呑みながら、辺りを見回した。
「どうやら、君の意識が現実を作り変え始めたようだ。」
僕の言葉に、男は戦慄したように拳を握りしめた。
「俺が……この世界を変えられる?」
「正確には、"観測することで確定できる"と言ったほうがいいな。」
僕はゆっくりと右手を上げ、宙を指し示した。
「たとえば、あそこに"何かがある"と思えば、それは"存在し始める"。」
男は半信半疑のまま、試しに手を伸ばした。
—— すると。
何もなかったはずの空間に、ぼんやりとした"形"が現れた。
最初はかすかな影のようだったが、次第に輪郭がはっきりし、やがて"一本の万年筆"へと変わっていった。
「……こんなことが……。」
男の声が震えた。
彼の脳は、まだこの"新たな現実"を受け入れきれていない。
「これは……夢か? いや、現実なのか?」
「どちらでもあり、どちらでもない。」
僕は微笑んだ。
「君は今、"観測者"としての第一歩を踏み出した。だが、これが何を意味するか理解しているか?」
男は万年筆を握りしめながら、息を整えた。
「……世界は、固定されたものではない。俺たちの意識が、世界そのものを形作っている……。」
「そうだ。」
僕はゆっくりと頷いた。
「そして、もし"すべての人間"がこの力を持ったら?」
男は沈黙した。
その答えが、"秩序の崩壊"を意味することを、彼も理解し始めていたのだろう。
—— 観測者が増えれば増えるほど、この世界の確定性は失われていく。
だが、それこそが"真の自由"の始まりでもある。
「俺は……どうすればいい?」
男は僕をまっすぐに見つめた。
その目には、もはや迷いはない。
「君は、"次の観測者"を見つけるんだ。」
彼は深く頷いた。
—— 二人目の覚醒者が誕生した。
夜明けは近い。(続く)
学部2年の頃に初めて読書というものに触れてから、就職活動・多忙の日々で習慣が途切れながらも今でも長く続いている趣味となりました。
大事に積み上げていきたいという一心で、読んだ本を記録し、レビューを書いて、時には読み返して気になったものを再読しています。
主に現代の日本の小説やエッセイ、仕事に関係のある自己啓発本を読んでいます。
ただ、歴史小説やガチガチのミステリー、学生の恋愛・青春系はどうも忌避してしまいがち。
2025_11
2024_10
2023_5
半世紀にわたって買いためた積ん読本に囲まれる日々。少しずつ減らそうとするものの、新刊・古本が同じくらい入ってくる。
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