聖人ではなく、心の弱い、臆病な人間の隣に寄り添う、同伴者としてのイエスを描く。遠藤周作の真骨頂。『イエスの生涯』や『キリストの誕生』よりも先に読んでいたら、もっと感激も大きかっただろうが、イエスの処刑の日と現代パートが交互に語られるのは読みやすい。とにかく構成がうまい。なにを読んでも信頼できる作家です。

聖人ではなく、心の弱い、臆病な人間の隣に寄り添う、同伴者としてのイエスを描く。遠藤周作の真骨頂。『イエスの生涯』や『キリストの誕生』よりも先に読んでいたら、もっと感激も大きかっただろうが、イエスの処刑の日と現代パートが交互に語られるのは読みやすい。とにかく構成がうまい。なにを読んでも信頼できる作家です。

かたや世界の鬼才、かたや当代一の大プロデューサー。同時代を生きてきた者同士が語る、映画やその裏側の話。押井守相手だからか、宮崎駿の次回作の可能性や、君たちはどう生きるかの解説、東京五輪への誘いを五回も断った裏話など、聞いたことのない話がポロポロ出てくる。一方の押井守はいつもと変わらずしゃべりにしゃべりまくり、楽しそう。いつか監督とプロデューサーで組んでほしいけど、この友情があるからこそ、それはあり得ないだろう。映画館で爆睡したガルムウォーズを、また見たくなった。

ある少女が、不思議な人々の集うお屋敷で暮らした一年の物語。うーん、メルヘンといえばそうだけど……。伯父さんの不倫や直面する別れなど、不穏なものを漂わせつつ、結局そこには踏み込まない。作中のパレスチナとイスラエルへの言及もなんだか表層的だなぁという印象。ぼくとは合わないのだろう。それにしても、この少女はお母さんに会いたいとか一切思わないのだろうか。

長らく読まなきゃと思いつつ放ってきた本作。平野啓一郎の三島評を聞いて読みたくなり、購入。読みはじめは眠くて失神しかけたけど、話が進むにつれてどんどん面白くなっていった。第一部は許されざる恋物語。いくらなんでも皇族の婚約者はタブーだ。清顕の祖母や門跡のキャラクターがよい。第二部はどんな物語になるのだろうか。

庄野潤三はいい。もはや面白いかどうかという次元ではない。大阪の昔の市井の暮らしを、親族たちから聞き取り、その過程も含めて書き記した物語。丁稚奉公ってたまに聞くけど、なにをするものなのか、具体的に知れて良かった。現代人には耐えられない暮らしだ。「必ずしも商家に限らないが、古い大阪の街なかの空気を吸って大きくなった人に会って、いろいろ話を聞いてみたらどうだろう。おじいさんかおばあさんのいる家なら、なおいい。」という書き出し。よく読むとすごい始まりだ。庄野潤三展を今度神奈川でやるらしいから行きたい。

期待したけどこれはあんまりだった。テロの過程、悪魔の思想、残虐さ、すべてが中途半端でなにを取っ掛かりにして読めばいいのかわからず。平野作品は説得力のあるネーミングが光るのだが、「悪魔」はしっくりこなかったなぁ。結末も、なんだか投げやりな感じ。こうならない答えにたどり着く物語だと思っていたのに。