精神病患者を「患者」としてではなく、「一個の人間」として相対し触れ合おうとする彼の姿はヒューマニズムの体現そのものに見えた。寛解患者のほぼ安定した生き方の一つは、巧みな少数者として生きることであると思う、と彼は書いている。多数者であれば享受しうるものを断念しなければならない、しかし、その中に愛や友情や優しさの断念までが必ず入っっているわけではない、と続く。そのためには、治療者というものは社会の多数者の価値感から自由である方が良いという。治療者こそが巧みな少数者として、患者の理想モデルとなり得るのだろう。
脳の多様性やHSPを一種の選民意識としてはならない、と釘を刺す。参考文献一覧を見ると、テンプル・グランディン、綾屋紗月、ウタ・フリス、東田直樹などさまざまな発達障害当事者の引用を踏まえていることがわかる。読者で第二章が分かりづらい方は、第三章の小説風の部分を読むと良いと思う。バカすぎて笑えるが、第二章の内容を上手く盛り込んでいる。また著者は宗教2世でもある。少年時代の描写には目を覆いたくなる部分もあった。よくぞ生き残ったという気持ちと同時に、彼の絶望感が消えることは一生無いのだろうという恐ろしさを感じた。
真の理解とは読書することそのものではなく、読書の後に反芻し、自らの体験へと受肉させた先にある。 本書でも、単純に本を読むことを称揚しているのではなく、本から得たものをどのように利用するのかという話につながっていく。 主人公モンターグ(MONTAG)は、ドイツ語で月曜日を意味する。 新たな日々がここから始まろうとしているのだろう。
本作はその延長線上にあって、より対象を絞ったものとなっている。何よりも本書の中心にあるのは、料理人そのものだ。彼らが成し遂げた成果や、彼らがつくる料理以上に、彼らそのものが対象として描写されていることに著者の誠実さと信念が見える。
昔から翻訳小説が好きで、いまだその深みにはまってます。
長編、劇作、詩、コミカルなものが好き。
短篇集、日本の小説、ミステリー、ファンタジーは苦手。
最近は、中央・東ヨーロッパの作家に焦点をあてて読んでます。
好きなシリーズ
文学の冒険(国書刊行会)
プラネタリー・クラシクス(工作舎)
東欧の想像力(松籟社)
大人の本棚(みすず書房)
好きな作家
高行健
グレアム・スウィフト
チェット・レイモ
ローレン・アイズリー
ライナー・マリア・リルケ
マルセル・プルースト
クラフト・エヴィング商會
フリードリヒ・デュレンマット
コニー・ウィリス
イタロ・カルヴィーノ
イスマイル・カダレ
ナイスについては、基本的に自分が読んだことのある本につけていますので、偏るかと思いますがご了承ください。
読みたい本リストはEvernoteで管理しているので、こちらでは登録していませんが、皆さまの読書記録を日々参考にさせてもらっています。
大学図書館で働いています。
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真の理解とは読書することそのものではなく、読書の後に反芻し、自らの体験へと受肉させた先にある。 本書でも、単純に本を読むことを称揚しているのではなく、本から得たものをどのように利用するのかという話につながっていく。 主人公モンターグ(MONTAG)は、ドイツ語で月曜日を意味する。 新たな日々がここから始まろうとしているのだろう。