ただ、この物語の描く貧困に美を見出してしまったこと(本当は貧困に美などない)、今現在苦しんでいるような自分の弟をこの物語の弟に重ねてしまったこと、そう意味でとても辛い物語でした。
この本の趣旨そっちのけで自分の話ですが、人間というのはこうも金銭的にも育ってきた環境においても同じ環境や思想の人と固まりがちで、無意識に視野が狭くなっていくのだなと驚いています…。特に私の周りの友人は政治的に保守的な人が多く、そんな彼らを対岸の火事としながらも、正直移民問題に関しては根本的に同じような思想を持っていたのだと気づきました。
もちろん一つの意見を聞いたあとに短絡的に考えを変えるべきではないと思いますが、もう少し色々な物事を俯瞰して物を言うようにならないとな、と思えるような本を今読めてよかったと思います。
さてこの中のいくつかの短編を読んで驚いたのは、「マジックリアリズム」の技巧。『百年の孤独』を読んだ後もあり、そのあまりの似通っているメンタリズムというかそういったものに結構感動しました。女性作家について、現代アートについて等々、今に至るロシアでの芸術的思想というか系譜のようなものが分かりやすくまとまっており勉強になりました。
三島由紀夫とフランス文学が好きですが、図書館に行った際に片っ端から新刊を読むのでジャンルはバラバラです。
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ただ、この物語の描く貧困に美を見出してしまったこと(本当は貧困に美などない)、今現在苦しんでいるような自分の弟をこの物語の弟に重ねてしまったこと、そう意味でとても辛い物語でした。