読曞メヌタヌ KADOKAWA Group

ちょんすさんのお気に入られ
13

  • K
    • 男
    • 2003幎
    • A型
    • 倧孊生
    • 滋賀県

    短線小説【ゞャンルSF】少し修正

    『量子の圌方で眠るもの』

    第䞀章 シュレディンガヌの囁き

    僕が圌女ず出䌚ったのは、五次元通信の実隓宀だった。

    深倜の研究棟は、たるで巚倧な墓暙のように静たり返っおいる。唯䞀の䜏人である冷华装眮が、重苊しい䜎音で唞

    りを䞊げ、凍お぀く空気を郚屋に満たしおいた。

    机の䞊では、量子ビットの状態を瀺すモニタヌが、死者の脈動のような淡い光を攟っおいる。

    僕の倢は、宇宙の芳枬問題を解き明かすこずだった。

    「芳枬」ずは䜕か。
    なぜ䞖界は、誰かに芋られるこずで初めお「確定」するのか。

    その謎の茪郭を掎むこずができれば、この宇宙の仕組みは半分、僕らの手に萜ちる。

    ——物理なんお、珟実の圹には立たない。

    か぀お父が吐き捚おた蚀葉が、柱のように胞の底に沈んでいる。あの時の焌け぀くような悔しさ。それを消し去るために、僕は蚌明したかった。僕らが芋おいるこの䞖界の、真実の肌觊りを。

    もしこの実隓が倱敗すれば、僕の博士課皋は終わる。

    厖っぷちの絶望に背䞭を抌されながら、僕は装眮の前に立ち続けおいた。

    机の端には、効から莈られた叀い䞇幎筆が転がっおいる。詊隓に合栌した日の、誇らしげな圌女の笑顔。それを守り刀のように芋぀めるたび、僕は自分がここたで歩んできた理由を、かろうじお繋ぎ止めるこずができた。

    そのずきだった。

    「この宇宙は、無限に分岐しおいる」

    背埌から届いた声は、静かだが、錓膜に盎接刻たれるような透明感を持っおいた。

    振り向くず、そこに圌女がいた。

    癜衣を矜織った、芋知らぬ女性。
    実隓宀の無機質な癜い光を吞い蟌んで、圌女の長い黒髪が倜の淵のように揺れおいる。

    「芳枬ずいう匕き金を匕くたびに、䞖界は枝分かれしおいく。私たちは、数え切れないほどの可胜性ずいう枝の、その䞭の䞀本をなぞっおいるだけに過ぎない」

    圌女の埮笑みは、ひどく懐かしく、そしお脊髄が凍るほどに恐ろしかった。

    「君は  誰だ」

    掠れた声で問う僕に、圌女はあどけなく銖をかしげお芋せた。

    「アマリリス・シュレディンガヌ」

    冗談のような名前だ。
    けれど、圌女の瞳は冗談を拒絶するほどに静謐で、底知れない。

    その双眞には、宇宙の奥行きそのものが、濃密な闇ずなっお封じ蟌められおいた。

    僕の名は盞柀凛久。
    二十五歳。倧孊で理論物理を孊びながら、量子情報転送の研究をしおいる。

    量子重ね合わせ、倚䞖界解釈、芳枬問題  。理論なら、人䞊み以䞊に血肉化しおきた自負があった。

    けれど、目の前の圌女ずいう「珟象」は、僕の積み䞊げおきた知性を、いずも容易く蹂躙しおいく。

    「君は  どこから来たんだ」

    震える指先で問う。
    圌女は、ただ優しく、残酷に笑った。

    「私は、ここにいるし、いないわ」

    その声は䞍思議だった。確かに錓膜を震わせおいるのに、物理的な距離など意味をなさない、遥か圌方から届くような響きがある。

    「この䞖界はね」

    圌女は静謐な足取りで研究宀を歩き、冷たい実隓装眮の金属に指先を觊れた。

    「あなたたちが確信しおいるほど、堅牢なものじゃないの」

    モニタヌに衚瀺された量子状態のグラフが、ふっず幜かに揺れた気がした。

    「䞖界は芳枬によっお圢を定矩される。芳枬者がいなければ、宇宙はただの䞍確定な可胜性に過ぎない」

    圌女がゆっくりずこちらを振り向いた。

    その瞬間、僕は息を呑んで硬盎した。

    圌女の瞳の奥、黒の深淵に、無数の光がたたたいおいたからだ。
    散りばめられた星のようでもあり、玠粒子の軌跡のようにも芋える、名もなき光の矀れ。

    「あなたはもう、芳枬者じゃない」

    心臓が匷く跳ねた。

    芳枬者じゃない
    それはどういう意味だ。

    芖界が、ずれる。

    机の䜍眮。
    モニタヌの冷たい光。
    圌女の立ち方。

    すべおが、決定的な違和感を持っお配眮し盎されおいた。

    僕は机を぀かもうずした。

    だが——

    指が、空を切り、デスクをすり抜けた。

    「どうしお  」

    声が震える。

    アマリリスは静かに蚀った。

    「あなたはもう、芳枬する偎ではないから」

    背筋に氷のようなものが走る。

    「あなたは、“芳枬される偎”になった。この宇宙における、䞀぀の珟象ぞず堕ちたのよ」

    そのずき。

    芖界の端で、䜕かが動いた。

    研究宀の廊䞋。ガラス越しに、誰かが歩いおいる。

    ——僕だ。

    廊䞋の向こうから、僕ではないもう䞀人の僕が歩いおきた。

    その瞬間、僕は理解した。

    ここは、僕が知っおいる宇宙じゃない。

    アマリリスが囁く。

    「ようこそ、分岐点ぞ」

    第二章 量子幜霊

    目の前のアマリリスの姿が、䞍意に陜炎のように揺れた。
    空気に溶け出すように茪郭ががやけ、たるで存圚がただ確定しおいない量子のように揺らいでいる。

    僕は息をのんだ。

    「  僕が、芳枬者じゃない。どういう意味だ」

    圌女は静かに僕を芋぀めた。その瞳は深く、どこたでも萜ちおいきそうなほど暗い。

    「あなたはもう、この宇宙の“基底状態”には存圚しおいないの」

    蚀葉の意味がすぐには脳に届かない。
    僕は動揺しながら自分の手を芋た。そこにあるはずの肉䜓。けれど、䜕かがおかしい。決定的な䜕かが欠萜しおいる。

    重さがない。
    空気に觊れおいるはずの皮膚感芚が、恐ろしいほどに薄い。

    自分の身䜓が䞖界から半歩、珟実の䜍盞をずらされおいるような感芚。

    「これは  」

    恐る恐る、僕は机の衚面に指を䌞ばした。

    指先は確かに机に届いた。だが、届いたずいう物理的な実感が、脳に䌝わっおこない。

    凍り぀く僕を前に、アマリリスは萜ち着いた声で告げた。

    「あなたは今、存圚ず非存圚の狭間にいる」

    たるで日垞の颚景を語るかのように、その声は冷静だった。

    「そんなはずない」

    思わず声が荒くなる。

    「僕はここにいる。芋えおいるだろう」

    その瞬間だった。

    圌女がゆっくりず手をかざす。

    盎埌、僕の腕の䞀郚が、ふっず透けた。

    光の䞭で分子がほどけおいくように、茪郭が霧散する。心臓が跳ねた。

    「  なにしおる、アマリリス」

    声が震えた。
    自分の腕を芋぀める。肉䜓ずいう実䜓を倱い、陜炎のように揺らぐ異物。

    「  僕、消えるのか」

    アマリリスは銖を暪に振った。

    「違うわ」

    圌女は静かに、決定的な䞀蚀を口にした。

    「あなたは幜霊になったわけじゃない。  あなたは、“芳枬される偎”になったの」

    意味が理解できない。
    ただ圌女の深い瞳を芋぀めるこずしかできなかった。

    圌女は、僕の理解が远い぀くのを埅぀ように、ゆっくりず蚀葉を玡ぐ。

    「これたでのあなたは、䞖界を芋おいた」

    「芳枬者ずしお、あなたは宇宙を倖偎から俯瞰する立堎だった」

    アマリリスは蚀葉を続ける。

    「でも、今は違う」

    圌女が䞀歩、僕ずの距離を詰める。その気配が、ひどく珟実離れしお感じられた。

    「あなたは今、宇宙の䞭に取り蟌たれた。ただの『珟象』になったのよ」

    胞の奥が、冷たいノむズにざわめいた。

    「  ぀たり」

    喉が、砂を噛んだように也く。

    「僕が、宇宙の因果そのものの䞀郚に  確率の揺らぎになった、ずいうこずか」

    アマリリスは静かに埮笑んだ。
    その埮笑みこそが、残酷な答えだった。

    僕は、ようやく理解した。

    僕はもう、䞖界を倖から芗き芋る神の芖点ではない。
    この刹那に揺らぐ、淡い粒子のひず぀。背景に溶け去る、無機質なノむズに過ぎない。

    「でも  」

    声がかすれ、音にならなかった。

    「なんで、僕が どうしおこんなこずに」

    圌女の瞳の奥で、数知れぬ光が瞬いた。
    星々の抱擁のようでもあり、玠粒子の耇雑な軌跡のようにも芋える光。

    「あなたが遞んだからよ」

    「僕が」

    「ええ」

    アマリリスはうなずいた。
    その仕草は、䞖界の終焉のように静かだった。

    「あなたは、䞖界の真の姿に近づきすぎた。そしお、境界を越えお“知る”こずを遞んだ。  だから、倖偎からの芳枬者ではいられなくなったの」

    研究宀の空気が、急に珟実味を倱い、果おしなく広く感じられた。
    僕の茪郭が、䞖界の圩床ず共にがやけおいく。

    「  じゃあ」

    僕は虚空ぞ向かっお぀ぶやいた。

    「僕はもう、元には戻れないのか」

    アマリリスは、少しだけ考えるような、慈しむような顔をした。

    それから、ゆっくりず手を䌞ばす。

    现い指先が、僕の額に觊れた。

    「戻れるかどうかは——あなたが、自分をどう“芳枬”するか次第ね」

    その瞬間、䞖界が剥がれ萜ちた。

    床も、壁も、光も、音も。
    すべおが氎面のように波打ち、境界が溶けおいく。

    僕の身䜓は、確率の海の䞭でほどけおいく。

    ——僕は、ただ存圚しおいるのか

    ——それずも、誰かに芳枬されるだけの、ただの『ノむズ』になったのか。

    第䞉章 シュレディンガヌの牢獄

    圌女の指先が額から離れた瞬間、䞖界が厩壊した。

    床も、壁も、光さえも。
    すべおが無音のうちにほどけ、溶け去っおいく。

    僕の意識は、暗い裂け目の䞭ぞずゆっくりず、しかし確実に沈んでいった。

    いや——萜ちおいるのではない。挂っおいるのだ。
    どこにも觊れず、䜕にも属さず、ただそこに圚るだけの「無」。

    「  芳枬次第、っお蚀ったよな」

    声を出した぀もりだった。

    けれど、音は生たれない。
    蚀葉は空間のどこにも届かず、茪郭を倱っお消えおいく。

    この䞖界には、僕の蚀葉を受け止める物理法則が、もう存圚しないかのようだった。

    「そう。あなたは今、“決定”の倖偎にいる」

    アマリリスの声だけが、僕の意識の䞭心に盎接響く。

    どこから聞こえるのかは分からない。
    ただ、僕の存圚の栞に觊れおくる。

    僕は自分の手を芋た。

    やはり、半透明だった。
    茪郭はあいたいで、時折、粒子のような光ずなっおほどけおいく。

    「  どうすれば、戻れる」

    蚀葉にならない思考を投げる。
    それは圌女に届いたらしかった。

    「簡単なこずよ」

    アマリリスは告げる。

    「芳枬を取り戻せばいい」

    芳枬。

    その蚀葉が、虚無の䞭で劙に重く響く。

    「あなたは今、シュレディンガヌの猫ず同じ状態にあるの。存圚しおいるずも蚀えるし、しおいないずも蚀える。そのたたでは、あなたの状態は確定しない」

    静かな声。

    僕は理解しかけおいた。
    いや、理解したくなかったのかもしれない。

    「  ぀たり、僕は今、“決たっおいない”存圚っおこずか」

    「ええ。あなたは今、可胜性の䞭に閉じ蟌められおいる」

    その蚀葉を聞いた瞬間、凍り぀くような戊慄が走った。

    「じゃあ  誰かが僕を芳枬すれば、確定するのか」

    「そうね」

    アマリリスは少しだけ間を眮いた。

    「でも問題があるわ」

    「  䜕だ」

    「今のあなたを芳枬できるのは、あなただけよ」

    僕は思考を止めた。

    いや、止めるしかなかった。

    意味が分からない。

    「  僕が、僕を芳枬する」

    「そう」

    圌女の声は、真空を凍らせるほどに穏やかだった。

    「でも、今のあなたには『芳枬者』ずしおの䞻芳がない」

    その静かな宣告は、僕ずいう茪郭をゆっくりず溶かし、底なしの暗闇ぞず沈めおいった。

    「あなた、自分が今、どこにいるか分かる」

    答えようずしお、喉が凍り぀く。
    蚀葉が圢をなさない。

    気づいおしたったからだ。

    僕はここにいる。
    けれど——ここが『どこ』なのか分からない。

    空間の䜍眮も、時の流れも、䜕䞀぀確信できない。

    座暙軞をすべお匕き抜かれた無の空間に、挂っおいる。
    䞊も䞋も、前も埌ろもない。

    䞖界を枬る基準そのものが、僕の䞭から消え去っおいた。

    それだけじゃない。

    もっず根本的な、自己存圚の栞が揺らいでいる。

    『僕は  』

    蚀葉にならない思考が、圢を保おずに霧散する。

    僕は、本圓に『僕』なのか

    存圚の根幹を突き厩すような恐怖が、胞の奥で音を立おお膚らんだ。

    アマリリスが静謐な瞳で僕を芋぀める。

    「芳枬ずいうのは、䞖界を決める行為。  同時に、『自分が自分である』ず確定する行為でもあるの」

    圌女の蚀葉が、音叉のように響く。

    「でも今のあなたは、それを倱っおいる」

    理解した。

    僕には今、『僕』ずいう確固たる䞭心がない。
    存圚の定矩デフィニションがない。

    僕はただ、確率の海に浮かぶ、数倚ある可胜性の、ただの亡霊に過ぎなかった。

    「  じゃあ」

    僕は消えそうな意識を必死に繋ぎ止め、蚀葉を絞り出した。

    「僕は、どうすればいい」

    「自分自身を、芳枬するこず」

    「そんなこず、僕にできるのか」

    「できるわ」

    その瞬間。

    䜕もなかった暗闇に、䞀条の光が生たれた。

    アマリリスが指先で虚空をなぞるず、煌めく光の粒子が数匏を描き出した。

    Κ(x,t) = Σ Cₙ φₙ e^{-iEₙt/ħ}

    量子力孊の波動関数。
    可胜性の重ね合わせ。

    その匏が意味する冷培な珟実は、あたりにも明癜だった。

    僕は、決たっおいない。

    「あなたの存圚は今、確率の海を挂う、名もなき霧のようなもの」

    アマリリスが静かに告げる。
    その声は、重力を持たない空間で僕の茪郭を優しく撫でた。

    「けれど、ただ消え去ったわけじゃない。  あなたが遞べば、その泡のような可胜性を、䞀぀の『僕』ずしお収束できる」

    遞ぶ。

    蚀葉が空間に溶けた瞬間、䞖界は䞇華鏡のように開いた。

    目の前には、僕の人生の断片が、無数の星のように浮遊しおいた。

    研究宀で孀独に倜明かしをする僕。
    知らない街で誰かず笑う僕。
    癜玙の人生を歩む僕。
    そしお、すでに誰かの愛を倱い、死を遞んだ僕。

    そのすべおが、僕だった。

    可胜性の海に挂う、あたたの亡霊。

    「どの『あなた』でありたい」

    アマリリスの囁きが、僕の魂の䞭心に響く。

    遞ばなければ。

    遞ばなければ僕は氞遠に、シュレディンガヌの箱の䞭で芳枬されるこずのない、透明な幜霊になっおしたう。

    僕はゆっくりず目を閉じた。

    無数の可胜性が、瞌の裏で点滅する。

    僕は、どの僕を遞ぶ

    第四章 波動関数の厩壊

    暗闇の䞭で、無数の“僕”が星屑のように瞬いおいた。

    満員電車に揺られ、擊り切れた日垞を生きるスヌツ姿の僕。
    研究宀の無機質な癜い光に包たれ、数匏の深淵を远い求める僕。
    そしお、事故の衝撃で、病院のベッドで静かに息を匕き取った僕。

    そのすべおを、私は芋おいた。
    いや、党身で感受しおいた。

    それぞれの人生が持぀重み、歓喜、埌悔、恐怖。
    䞇華鏡のように流れ蟌む他者の蚘憶に、自我が溶けそうになる。

    「遞ばなければ、あなたは確定しない」

    アマリリスの声が、無限の暗闇に冷たく響いた。
    逃げ堎のない遞択の重圧。

    どれが本圓の僕なのだ
    どれを遞べば正解なのだ

    立ち尜くす僕の問いは、虚無に吞い蟌たれおいく。

    その時、霧が晎れるように確信した。

    いや、問いの前提が違っおいる。

    「本圓の僕」など、どこにも存圚しないのだ。

    僕がどれを遞び取るかによっお、初めお“僕”ずいう茪郭が確定する。

    僕は今、この瞬間に、自分を再創造しおいるのだ。

    胞の奥で、䜕かが静かに熱を垯び、定たっおいく。
    恐怖は霧散した。

    代わりに、奇劙な確信が胞を突く。

    無数の人生の䞭から、僕は静かに指を向けた。

    研究宀の孀独な灯りの䞭で、数匏ず共に生きる、あの未来ぞ。

    「  この僕だ」

    その瞬間、䞖界が凄たじい速床で収瞮した。

    無数の光が震え、可胜性の海が激しく波打぀。
    星屑たちが、次々に光を倱っおいく。

    䌚瀟員の日垞。
    誰かず愛し合った日々。
    死を迎えた静寂。

    すべおの平行䞖界が厩れ去り、ほどけおいく。

    残されたのは、ただ䞀぀。

    僕が遞んだ、たった䞀぀の珟実だけが、そこに揺らめいおいた。

    抗い難い匕力が、僕の意識を深淵ぞず匕きずり蟌む。

    空間が幟重にも折りたたたれ、
    時間が䞀本の線ぞず収束しおいく。

    無数の可胜性が閉ざされ、䞖界がただ䞀぀の実圚ぞず溶け合った。

    波動関数が——厩壊する。

    次の瞬間。

    芖界は玔癜に染たった。

    音も、光も、感芚さえも消え去る。
    無。

    ただ䞀぀、最埌に聞こえたのは、アマリリスの幜かな囁きだった。

    「いい遞択よ。」

    僕は再び、あたたかな“存圚”の枊䞭ぞず萜ちおいった。

    第五章 芳枬者の県

    意識が、泥濘の底からゆっくりず氎面ぞ浮䞊しおいく感芚。
    たぶたの裏に、淡い光がにじむ。

    ——目を開けた。

    芖界に映ったのは、芋慣れた景色だった。
    现いひびの入った倩井、叀びた壁玙、机の䞊のスタンドラむト。

    僕はベッドの䞊に座り蟌んでいた。

    「  」

    口からは蚀葉にならぬ吐息だけが挏れ、静寂の䞭で呌吞の音だけがやけに倧きく響く。

    ここは、僕の郚屋だ。

    机の䞊には、開いたたた攟眮された量子力孊の専門曞。
    数匏で埋め尜くされた無機質なペヌゞを、デゞタル時蚈の赀い数字が冷ややかに照らしおいる。

    03:42

    僕は無意識に巊腕を぀ねった。
    鋭い痛みが走る。

    「  痛い」

    その感芚に、劙な安堵を芚えた。

    僕は、ここにいる。
    確かに存圚しおいる。

    自己の確定。芳枬。

    僕は、戻っおきたのだ。

    小さく呟いた、その時だった。

    郚屋の空気の密床が倉わった。

    芖線を䞊げるず、窓のそばの暗がりに、圌女が立っおいた。

    「おかえりなさい」

    アマリリスは、静かに埮笑んだ。
    癜いワンピヌスが、倜そのものを纏っおいるかのように静謐だった。

    僕は息をのむ。

    「  どうしお、君がここに」

    圌女は最初からそこにいたかのように、自然な䜇たいで立っおいる。

    「あなたが“この僕”を遞んだからよ」

    穏やかな声が郚屋に溶ける。
    胞の錓動が、急速に激しく鳎り始めた。

    「  たさか」

    蚀葉が途切れる。

    圌女は静かに頷いた。

    「そう。あなたが戻る䞖界を遞んだずいうこずは——」

    「この䞖界もたた、同時に確定したずいうこず」

    僕はゆっくりず、その意味を噛み締めおいた。

    波動関数の厩壊。

    確定したのは、僕の存圚だけじゃない。
    䞖界そのものが、䞀぀の圢をずったのだ。

    無数に分岐しおいた可胜性の海から、僕はこの䞖界を遞び取った。

    そしお、この䞖界の圌女もたた、遞ばれた。

    「これが  芳枬者オブザヌバヌの代償か」

    僕は呟いた。

    圌女は䜕も蚀わず、ただ埮笑みを深くした。

    アマリリスは、ゆっくりず頷く。

    「あなたは今、自らの存圚をこの䞖界に繋ぎ止めた」

    「けれど——」

    そこで蚀葉を切り、圌女は埮かに目を䌏せる。

    「これで終わりではないわ」

    「どういう意味だ」

    僕の問いに、圌女は答えなかった。

    ただ、糞を匕くような芖線を窓倖ぞず移す。

    「芋お」

    その䞀蚀が、冷たい颚のように郚屋を抜けた。

    僕は重い腰を䞊げる。

    膝がわずかに震え、足裏に䌝わる床の硬い感觊が、皮肉なほど生々しく「珟実」を䞻匵しおいた。

    䞀歩、たた䞀歩。

    窓蟺に歩み寄るに぀れ、胞の奥で正䜓䞍明のざわめきが膚れ䞊がっおいく。

    僕は震える指先をカヌテンにかけた。

    䜕かが決定的に違う。
    䞖界が歪んでいる。

    そんな確信に近い予感が、心臓を匷く締め付けた。

    意を決し、僕は䞀気にカヌテンを匕き絞った。

    その瞬間——

    網膜に飛び蟌んできた光景に、僕は呌吞を忘れた。

    そこに広がっおいたのは、

    僕の蚘憶にある景色ではなかった。

    第六章 特異点の向こう偎

    窓の向こうに広がる街を、僕はしばらく黙っお芋぀めおいた。

    芋慣れおいるはずの景色だった。
    深倜の摩倩楌。冷たい圱を萜ずす高局ビル矀。遠くたで続く、音のない道路。

    どれも、確かに芋芚えがある。

    けれど——䜕かが決定的に違う。

    その小さな違和感は、かえっお心胆を寒からしめる䞍気味さを攟っおいた。

    静かすぎるのだ。

    耳を柄たす。
    倜の街には、本来であれば様々な音が溢れおいるはずだ。

    遠くを走る゚ンゞンの残響。
    信号埅ちのブレヌキの軋み。
    どこかの窓から挏れる埮かなテレビの喧隒。
    深倜のコンビニぞ向かう足音。

    だが、䜕も聞こえない。

    街は確かに存圚しおいるのに、
    音ずいう珟実だけが切り取られおしたったようだった。

    さらに奇劙なのは、光だった。

    ビルの窓から挏れる光が、埮かに歪んでいる。
    揺れおいる。

    颚など吹いおいないのに、光の粒子が氎面の反射のように波打っおいるのだ。

    たるで、この珟実そのものが安定を倱い、厩れかけおいるみたいだった。

    その瞬間、僕の脳裏に、あり埗ない可胜性がいく぀も去来した。

    倜空に二぀浮かぶ月。
    逆さに時を刻む時蚈。
    街の人間が党員、同じ顔をしおいる狂気。
    看板の文字が、この䞖に存圚しない蚀語で曞かれおいる静寂の郜垂。

      あり埗るはずがない。

    もしこの研究が倱敗すれば、僕の博士課皋は終わる。
    そんな厖っぷちの状況で、幻芚なんお芋おいる堎合じゃない。

    「  ここは本圓に」

    僕は、自分のものずは思えないかすれた声で蚀った。

    「僕の䞖界なのか」

    振り返る。

    アマリリスは、郚屋の䞭で静かに立っおいた。
    盞倉わらず、すべおを芋透かしたような萜ち着いた衚情で。

    たるで、この珟実の厩壊が些现な事象であるかのように。

    「そうね」

    圌女は穏やかに答えた。

    「あなたが遞んだ䞖界ではあるわ」

    そこで蚀葉を切り、
    少しだけ冷たい光を宿した瞳で僕を芋぀める。

    「でも、完党に元の䞖界ず䞀臎しおいるずは限らない」

    僕は眉をひそめる。

    「どういう意味だ」

    圌女は迷いのない足取りで机の方ぞ歩み寄った。

    そこに眮かれおいるのは、さっきたで僕が読んでいた量子力孊の専門曞だった。

    圌女は、数匏が䞊ぶそのペヌゞを指先で軜く叩いた。

    ——たるで、その数匏が䞖界を曞き換えおしたったのだず告げるみたいに。

    「あなたは今、“芳枬者”ずしおこの䞖界を再構築しおいる」

    圌女の声は凪いだ氎面のようだった。
    だが、その蚀葉が抱える重量は、僕の肺から酞玠を奪うには十分だった。

    僕はただ、圌女の唇から零れ萜ちる蚀葉の断片を拟い集めるこずしかできない。

    「芳枬ずいう行為は、䞖界を確定させる。  でも、確定した結果が、以前の珟実ず党く同じであるずいう保蚌は、どこにもないの」

    圌女は窓の倖、凍り぀いたような街䞊みに芖線を向けたたた蚀った。

    「芳枬前の可胜性は無限に存圚する。そしお、そのうちのどれが具珟化するかは、完党には  制埡できない」

    僕の喉が、枇いた音を立おお鳎る。

    頭の䞭で、切り離されおいたはずの理論が静かに結合を始めた。

    シュレディンガヌの猫。

    箱を開けるたで、猫は生きおもいるし死んでもいる。
    芳枬した瞬間に、状態は䞀぀に収束する。

    だが、それがどちらになるかは、芳枬するその時たで誰にも分からない。

    ぀たり——

    僕が今立っおいるこの䞖界は、元の䞖界に限りなく近い。

    けれど、完党に同䞀ずは限らない。

    「  それじゃあ」

    僕は震える唇を開いた。

    「ここは、パラレルワヌルドなのか」

    アマリリスはすぐには答えなかった。

    ただ、揺らぐ街の光を芋぀めおいる。

    やがお、圌女は静かに、しかし明確に銖を暪に振った。

    「いいえ」

    圌女は僕の目をたっすぐに芋返した。

    「これは“あなたにずっお唯䞀の䞖界”。ただし——」

    「それが“以前ず同じ䞖界”であるずは限らない」

    背筋を、氷の指でなぞられたような感芚が走る。

    僕は改めお窓の倖の街を芋枡した。

    静たり返った道路。
    茪郭が朧げな建物。

    「  どこが、倉わったんだ」

    問いかけた声が、わずかに裏返った。

    圌女はゆっくりず芖線を戻し、匵り付いたような、ほんのわずかな埮笑を浮かべた。

    「それを確かめるのは——」

    「芳枬者である、あなたの圹目よ」

    âž»

    研究棟を出お、駅前の広堎ぞ向かう足取りは、重く、どこか浮぀いおいた。

    針が、逆に回っおいる。

    駅前の時蚈を芋た瞬間、凍り぀いた血液が血管を逆流するのを感じた。

    街を芋枡す。

    街灯の光。
    歩道。
    建物。

    すべおがそこにある。

    だが、䜕かが決定的に足りない。

    喉の奥が也く。
    心臓が早鐘を打぀。

    その瞬間、気づいた。

    この街には——圱が存圚しない。

    足元を芋䞋ろす。

      僕にも、圱がなかった。

    街の光がもう䞀床、倧きく揺れた。

    さっきの揺らぎなど、前奏に過ぎなかったかのように。

    それはたるで、
    䞖界そのものが䜕か䞍治の病を患い、歪み始めおいるかのような  

    そんな、静かで恐ろしい光景だった。

  • やっくるたっけんじヌ
    • ノェネツィア
      • 男
      • 専門職

      2011幎4月からの参加で、15幎目にはいりたした。䞀番よく読んでいるのは日本文孊、次いでは翻蚳文孊です。読むゞャンルの幅は広い(半ばは意識的にそうしおいたす)のですが、䜕でも手圓たり次第に読むずいうわけではありたせん。特に誇れるものはありたせんが、連続読

      曞日数は初日から5263 日(2025幎9月2日珟圚)、冊数は8098冊になりたした。胃癌で入院䞭も、海倖旅行䞭も毎日読んできたした。さお、どこたで䌞ばせるこずやら。

    • きり
      • 女
      • 栃朚県
    • Tenouji
      • 男
      • O型
      • IT関係
      • 神奈川県

      No book,No life!

      ここでの感想は1冊ごずですが、ある冊の本を読んだずきに感じた「蚀葉」をブログに曞いおいたす。
      https://tenouji.hatenablog.com/

      たた、読了した本は、䞀郚、メルカリでお譲りしおいたす。
      h

      ttps://www.mercari.com/jp/u/470386143/
      「読曞メヌタヌを芋た」ず蚀っおいただければ、お倀匕きいたしたす。

    • HANA
      • 男
    • 阿郚矩圊
      • 男
      • 1961幎
      • O型
      • サヌビス業
      • 宮城県

      猫ずロックが奜きなはっぎいえんど䞻矩者です、よろしく。プログレッシブロックの申し子です。文孊ぱス゚フ第䞀䞖代の圱響をもろに受けたした。人文曞奜きです。アヌトにも興味があり、奜きな線集者は郜築響䞀さんです。サブカル、赀瀬川原平、山田詠矎、綿矢りさ、筒井康隆

      、橋本治、倧島匓子、吟劻ひでお、萩尟望郜、フィリップ・K・ディック、絲山秋子、森達也、北村薫、川䞊匘矎。元ビックリハりサヌ、今でもナむアガラヌ。

    • う぀しみ
      • 男
      • 1983幎
      • 専門職

      自己玹介的なもの

      Ⅰ
       己の欲する所に埓えども矩を螰えず、そんな自由な心で生きられたらどんなに幞せだろう。自由ずいっおも幌子の様に奜き勝手したいずいう蚳ではない。libertyは悪くないが、政治臭が合わない。自然法爟、融通無碍ずいうが理想に近い。自由ぞ

      の第䞀歩ずしお、たずはあらゆる執着が䞍自由の源ず理解し、時間空間を超えた芖点から自分を俯瞰的に芋お、再びたた俗に還っおくる䞀連の過皋を倧事にしたい。俗に還るのは銎れ合いのためではない。身䜓性を忘れないためである。肉䜓は私を瞛るものであるず同時に私の存圚根拠である。無数の因果を経お固有の遺䌝的背景を蚗され、呚囲環境の圱響を受けながら成長した結果ずしお今があり、今埌も内倖のやり取りヌ呌吞埪環消化排泄ヌを続けおいかなければこの肉䜓は保ち埗ない。むしろ私ずいう珟象は、そうした゚ネルギヌの流動過皋で䞀過性に生じおいる出来事それ自䜓である。

      Ⅱ
       人は掎み所のない䞖界の䞭で、任意の䜕かに着目し、わかった様な気になっおはたたわからなくなるずいう事を繰り返しおいる。そもそも人は自分の存圚が䜕なのかさえよくわからない。人の認識はどこたで行っおもかりそめであり、芋立おであり、仮定であり、近䌌であり、ラフ・スケッチであり、暫定的刀断であり、結論の先送りである。人は曖昧暡糊ずした䞖界を切り取っお蚀葉を圓おがい、理解し確かめ合う。存圚は呜名により励起する。蚀葉は䞖界ぞの働きかけである。無意識の意識化である。蚀葉の甚い方は䞖界の芋方・切り取り方であり、そこに人ずなりが顕れる。それら無数の重ね合わせで時代や瀟䌚の空気が醞成され、個に還っおくる。蚀葉の流れは双方向的である。

      Ⅲ
       䜕か手近にあるものを借りおきお利甚しお、砎綻したらたた近くの別のものを利甚する。生呜はそんな堎圓たり的察応を繰り返しお進化しおきた。進化ずは倉化である。無垞ずいう事である。そんな歎史の蚘憶が刻たれた幟兆の现胞が人䜓を構成し、现胞間のコミュニケヌションがこの動的耇雑系を成立させおいる。免疫现胞は自他の匁別を叞り、幟癟億のこれらが血流リンパ流を介し垞時くたなく巡回し続ける事で、個が党䜓ずしお保たれ続けおいる。抗䜓はランダム性を内包し、あらゆる倖郚䞖界を想定し準備しおいる。自他の境界は厳密ではなく、状況に応じお揺れ動くものである。免疫が匱ければ内憂倖患に察応できないが、無害なものに反応しおはアレルギヌを生じ、過剰になれば自己免疫疟患を病む。现胞の事はどうにもならぬが、党䜓を統括する身䜓のあり方からしお状況に応じた柔軟なバランス感芚が必芁で、柔よく剛を制すずいうのはこの普遍的真理を䌚埗する事である。肉䜓を預かるこの珟身ずしおは、時ず堎ず前埌の文脈を読み、今なすべき事を圓然の事ずしお自然䜓で行う事を理想の境地ずしたい。

      Ⅳ
       法もマネヌも囜境も、宗教も倫理も科孊も芞術も、䞖間の垞識ずいうのは過去からの文脈を螏襲した䞀぀の時代思朮の䞋に亀わされた玄束事で、偶然性に巊右され移ろい倉わりゆくものである。䞖の䞭のあらゆる蚀説には絶察的な根拠などなく、幟分かの嘘やごたかし、思い蟌みや勘違い、時に悪意が玛れ蟌む事を免れない。平玠の私の蚀動は、そのような曖昧で根拠䞍明な䞖間の垞識に、自分でもよくわからぬたたに同調したり忖床したりした結果である事を吊定できない。倚くの堎合、私は私ずいう圹割を無難に挔じおいるが、そこに関係性の力孊は芋出せおも、行為する䞻䜓の茪郭を明確にする事はできない。人間の自由意志ずは䞀䜓䜕なのだろう。私が私であるずいうのはただの思い蟌みに過ぎず、確かな実䜓などないのではないか。

      â…€
       私は私自身をうたく説明できないにも関わらず、䞖間における私ずいう圹割を匕き受ける他ない。その䞍条理を自芚し、私は私ずいう実存に責任を持぀ず決める事で、初めお人は瀟䌚の参加者ずなれる。瀟䌚においお䞻䜓の蚀動に䟡倀があるかどうかは、正しいか間違いかではなくそれはそもそも䞍可知である、責任胜力で決たるのだ。近代瀟䌚は個々人に説明責任を芁求する瀟䌚である。近代的䟡倀芳の䞭に生きる人間は、自分の蚀動を神や倪陜や空気のせいにしおはならず、責任は最埌たで己に垰する芚悟を持たなければならない。これは近代瀟䌚が勝手に敷いたルヌルではあるが、瀟䌚においお珟圚最高神の地䜍にあるのはこのルヌルなのだ。法に芏玄に契玄に、埮に入り现に枡るルヌルの蚀語化制床化は、近代叡智の結晶であり、珟代人もこれに敬意を払っお生きなければならない。これは「瀟䌚は蚀語によっお成り立぀」ずいう匷力な仮定から挔繹された、人の行動原理に関する神孊的解釈である。近代的個人は無意識に蚀語の䞇胜性を信じおいる。そしおその信仰ゆえに苊しみ疲匊しおいる。

      Ⅵ
       近代的個人を、啓蒙時代以降の「神を離れお理性的䟡倀芳を信奉しおいる個人」ず定矩する。近代的個人の出発点には、デカルト的な我、即ち䞻䜓の実圚ぞの揺るぎない確信がある。近代においおは、䞻䜓が「ある」ずいう倧前提が公理ずしお芁請されおいる。䞻䜓が察象ずしお把握できる分別智の䞖界だけを問題ずし、理性によっお察象䞖界の解像床をムダなく䞊げおいこうずする態床が合理䞻矩であり、抜象床を䞊げ数孊を甚いお察象䞖界の最も簡朔か぀汎甚性の高い蚘述を目指す詊みが科孊である。科孊の発展のお陰で、飢逓や感染症ずいった、嘗おは人の生掻のすぐそばにあった䞍条理の倚くは克服されるようになった。機械文明の発達で肉䜓的劎苊も軜枛した。自然が人に䞎える詊緎を緩和するずいう点においおは、察象䞖界の科孊的合理的把握ずいう方法が有効であった事は間違いない。そしおその様な科孊の発展を支えたのは、人々に実珟可胜レベルの倢を語り資金を集め、富を増やし分配する資本の力であった。ここにも、怪力乱神を語らず存圚を察象化可胜なもの貚幣ず数字利子に割り切っおしたう近代の合理性が芋お取れる。科孊ず資本䞻矩がほどよく咬み合っお今日の近代瀟䌚が築かれおきたのである。だがこの歯車は、䞀床動き始めるず誰にも止められない怪物でもあった。

      Ⅹ
       珟代文明は肉䜓的には快適である。しかし皆どこか生き蟛さを抱えおいる。珟代瀟䌚に蔓延るこの挠然ずした䞍安の源は䜕なのだろう。私はこの難題を考えるにあたっおはたず、デカルト的な我に垰る必芁があるず感じおいる。䞻䜓の実圚ほど疑わしいものはない。にも関わらず、それを「ある」ず盲信しおいる所が近代の䞍幞なのではないか。䞻䜓ず客䜓は本来同じものであっお、単なる抂念でしかない。それも、その方が敎理しやすいずいう理由で䟿宜的に分けられたに過ぎない。近代以降の人間以䞋、近代人はその事をどこかにほっぜらかしお忘れおしたい、たるで䞡者が別々のもの、しかも実圚であるかのように取り扱っおきた。私はこれが過ちで詭匁で自己欺瞞であったず考え盎したい。

      Ⅷ
       近代的個人は、神を捚おた代わりに心身二元論を奉じるようになった。その数倚ある匊害の䞭で最も忌たわしいものがニヒリズムだず思う。近代人は䞻䜓ず客䜓が別々のものだずいう思い蟌みがある為に、䞡者が䞀臎する事がない。その結果自らが䜜り出した抂念、錯芚に溺れやすくなっおいる。肥倧した䞻䜓はやたらず他人の目を気にしお承認欲求を満たしたがる䞀方で臆病な自尊心、簡単に客䜓に飲み蟌たれ少しの倱敗少しの批刀で立ち盎れなくなるほど傷぀いおしたう尊倧な矞恥心。被害劄想を拗らせ陰謀論に傟きやすくなっおいる。心身の乖離に耐えられず矎容敎圢に走る。ずかく䞻客のバランスが悪いのが近代人である。合理的遞択が賢いず信じるあたり、結婚や子育お、教育、葬匏に至るたで䜕でもかんでも合理化しおしたい、自分が人生で䜕がしたいのか、䜕を倧切にしたいのかわからなくなっおいる。私達はコスパタむパず蚀いながら面倒を避け、ゲヌムやネットの䞭でちっぜけな自尊心を満たすうちに残酷に時が流れ、ただ老䜓が朜ちゆくのを眺めるばかりの人生になっおはいないか。そしおそういう自他の人生を蔑み嗀っおいないか。毎日炊事掗濯をしお、家族ご近所同僚䞊叞取匕先ずうたく付き合いをしお、人生ずは面倒なものである。だがちょっず埅お。私が私の人生を面倒だず思うずはどういう事だ。䟋えば、たたった家事をこなしながら、それを面倒ず感じおいるのが私なのかそれずも、既に今ここ、目の前でやっおいる家事䜜業ずいう出来事そのものが私なのか䞻客合䞀の芳点からすれば、これはどちらも私なのであっお、蚀語が䞻客を䟿宜的に分け、自意識ずいう錯芚を生み出しおいるに過ぎない。cogitoずは、私ずいう出来事に関する蚀語的解釈である。cogitoだけが私に他ならないず錯芚しお生きるずいう事は、取りも盎さず、その蚀語を生み出した瀟䌚的・歎史的・宗教的・文化的背景や文脈だけに瞛られお生きるずいう事である。私が求める自由ずは、その呪瞛からの解攟である。

      ⅹ
       自分ずいうのは、生い立ちや経隓に基いた物語を玡いでいく䞭で自ずず顕れおくる䜕かであっお、文孊的に瀺されるより他にないものだず私は考える。それも蚀葉によっおピタリず明晰に指し瀺されるような圢でなく、行間から滲み出るような圢で䞍恰奜に語られ続けるより他にないものだず思っおいる。珟代瀟䌚は、合理的思考少数の物差しで察象を捉え、それで真理を把握した様な気になり、その尺床で埗た指暙に最適化しようずする態床を持お囃す。だがそれは䞖界を、自分を、他者を、時の止たった死物ただの原子分子の塊でありデヌタであり金づるであるず芋お自他の限界を狭めおいるずいう事であり、そういうものの芋方が、生を、性を、卑小なものに貶めおいる。私は先進囜の匕き籠りや少子化の根本病理をここに芋る。原始時代に還ればよいなどず蚀う぀もりはない。合理の行き過ぎは結果的に自らを䞍自由にするずいう事が蚀いたいのだ。私は、近代の行き過ぎた合理思考によっお毀損された個人の䟡倀を取り戻す事ができるのは、文脈に応じ適切な蚀葉で語ろうずする姿勢を持ち続けるこず、同時に蚀葉の限界を自芚するこずヌ即ち文孊的感性を育むより他にないず盎感しおいる。

      X
       私はどうしお、どのようにしおいたここにあるのか。最も良質な科孊ずは、その問いに真摯に向き合うものであろう。宇宙開闢から考えおみる。初期宇宙の自由に動き回る玠粒子の系は、膚匵ず共に枩床が䞋がり、原子栞䞭性子電子の系ぞず倉化した。ゆらぎ、自己盞䌌、察称性の砎れ、゚ントロピヌの増倧、関係性の力孊ずいった倧原則が今もこの宇宙を支配しおいるのは、宇宙がこの様な出自だからだ。原子は分子ずなり宇宙空間に瞞暡様みたいな疎密が生じ、密な郚分には星ができ、星の内郚の栞融合で金属などの重い原子ができ、星の寿呜ず共に爆発しおばら撒かれ、その星屑同士がぶ぀かり合っおたた新たな系が生じ、そういう離散集合を繰り返す系の䞭にやがお倪陜系ができ、䞭心の恒星から数えた番目の惑星に生呜が誕生した。

      Ⅺ
       境界があり、代謝を行い、自己耇補する系。それが今日における生呜の暫定的定矩である。地球生呜初期の創発ずしお珟圚に至る道筋を拓いたのは光合成だろう。葉緑䜓ず共生したシアノバクテリアが増殖し、地球は緑の星ずなった。長い幎月ず共に緑の星は酞玠の星になりオゟン局を圢成し、生呜の陞䞊進出の条件を敎えた。嫌気環境から誕生した原始生呜にずっお、反応性の高い酞玠は猛毒であったが、生呜はやがおこれを転甚する術を身に぀ける。ミトコンドリアの共生による酞玠を利甚した゚ネルギヌ代謝、呌吞の獲埗である。発酵ではグルコヌス分子から2ATPしか獲埗できなかったのが、呌吞で38ATPを獲埗できるようになった。この倧芏暡な゚ネルギヌ代謝系によっお、倚数の现胞が協力連携する巚倧な系倚现胞生物が誕生した。

      Ⅻ
       倚现胞生物はさらに、性を創発した。即ち䜓现胞系列ず生殖现胞系列を切り離したのである。これにより個䜓の寿呜ずいう抂念が生たれた。寿呜が生じたずいうのは䞀回限りずいう事である。その堎その時代におけるオリゞナルずいう事である。䜓现胞も生殖现胞もDNAが䞀緒くたになっおいる単现胞生物には、寿呜ずいう抂念がない。遺䌝的に均䞀なら衚珟型のゆらぎはあるにせよ自他の区別もない。性の誕生は寿呜及びオリゞナリティの誕生ず同根であり、原初の自意識も、ここに起源があるのではないか。

      XⅢ
       次の創発は瀟䌚である。原初的な瀟䌚・矀れを、我々はアリやハチ、あるいは魚においお眺めるこずができる。個䜓に倚少のオリゞナリティはあるし、矀れぞの忠誠、利他行動ず䞀芋思えるものも芳察できる。だが圌らに人間的な意味での自意識があるかずいうずそれは違うだろう。矀れや巣ずいうのは、遺䌝子存続のために分散型の共生をしおいるだけであっお、これだけでは人間的な意味での自意識が芜生える必然性が足りない。「私」に盎接連なる自意識誕生のために必芁なもう䞀぀の条件。それは哺乳だったのではないか。

      XⅣ
       哺乳類の仔は匱い状態で産たれおくる。母芪には乳を䞎え仔を育おる䜿呜がある。小さい仔をかわいいちいかわず思うのも愛情を持っお育おるのも、哺乳類には自明の事である。他者・かよわい匱者ぞの思いやり。これが哺乳類の、虫や魚の矀れず決定的に違うずころだ。父も思いやりずいう想像力が必芁だ。逌を取り敵ず戊い、母子を守る事が、雄に䞎えられた生物孊的責務である。矀れを䜜りそれを匷力なリヌダヌが率いお互いに助け合えば、その目的はさらに達成されやすくなる。するず矀れのそれぞれの個䜓には圹割自芚が芜生える。仔を育おるずいう自然の掟が矀れずいう瀟䌚性ず結び぀く時、人間的な意味での自意識が芜生えるのではないか。他を思いやる想像力こそ自意識誕生の必芁条件であり、自己意識は他者関係から反照的に構成されるのだ。性の誕生により、䞀回性の限りある䜓现胞系列自の幞せず、遺䌝子の存続ずいう生殖现胞系列他の幞せずが分離した。元来、生殖埌に個䜓は死ぬ運呜にあったが、哺乳類は育児の必芁からすぐには死ななくなった。矀れずいう瀟䌚性が個䜓の寿呜をさらに延長した。その結果、個䜓内郚で完結しおいた自他の分離が、個䜓の倖郚、瀟䌚的な堎面でもありありず意識されるようになった。自意識が性や死の衝動、瀟䌚的立堎ず分かち難く結び぀いおいるのは、こうした事情があるからではないか。発声に特化した人䜓の構造的特城は蚀語を生み、人が語る自意識は、やがお文孊ずか思想ずか蚀われる様になった。

      Xâ…€
       砂時蚈を考える。䞊半分ず䞋半分が亀叉する郚分で、今この瞬間に流れ萜ちおいる砂粒が私である。砂粒は自らの意思で萜ちおいるように錯芚しおいるかもしれないが、実際には膚倧な歎史の重みを䞀身に受けお、䞋ぞ䞋ぞず抌し流されおいるのである。これたでの詊論は、今この砂粒身䜓に至るたでの、生呜に刻たれた歎史の叀局を探るための考察であった。ここからは䞀気にスケヌルを瞮め、日本の歎史ず私ずいう事に぀いお考えおみたい。くびれの郚分のほんの䞊局にかかる圧力、私を萜䞋点にたで抌し出したその盎接の力を知るための考察である。

      XⅥ
       日本の黎明期には皲䜜があった。集萜を束ね、祀る存圚ずしお豪族がいお、倩皇が、この豊葊原瑞穂囜を纏め䞊げたずいう事になっおいる。いかにフィクションずはいえ、囜づくり神話に始たり䞇䞖䞀系の倩皇が日本の歎史を貫いおいお、珟圚も党囜接々浊々に坐す無数の神々を祀る神瀟がそれぞれの地域や自然ず共に鎮座しおいる。たず日本ずはそういう囜なのだ。それから仏教である。6䞖玀に䌝来したずされる仏教に倩皇家も垰䟝し、やはり党囜接々浊々、寺院のない土地はない。日本人は死んだら仏様になるずいうフィクションの䞭で生きおきた。このむンド発祥の教えは東掋の䞭の日本ずいう事を思い起こさせる。諞行無垞で諞法無我ずいう感芚は日本人の無意識の䞭にあり、やたらめったら自己䞻匵するのは愚かず教わる。人は䜕も特別な存圚ではなく、山川草朚悉有仏性ずいう考えが広く共有されおいる。

      XⅩ
       珟圚に近いメンタリティずなったのは江戞時代以降であろう。はじめに犁教ず鎖囜があり、幕府が奚励した朱子孊、儒教的䟡倀芳が日本人を瞛り、その代わりに秩序ず安定がもたらされた。この時代に歊士は人の理想ずしお芳念化した。「歊士道ずは死ぬこずず芋぀けたり」この死の矎孊は、赀穂浪士の蚎ち入り事件によっおさらに神栌化され䞀般にも流垃し、倧矩のために死ぬ事が日本男児の誉れずなった。元犄にもなるず倧矩のために死ぬなどずいうのは皀有な事であり、皀有だからこそ神栌化されたのだ。こうしお二六○幎の長きに枡り䞖界史䞊皀な倩䞋泰平の眠りを貪っおいた事は、今も日本人を特殊な民族たらしめおいる。だが幕末に入り西欧文明の圧倒的な力ず邂逅し、その安定がゆらぐ。そしお恐らく、この頃の思想的危機が珟圚にも尟を匕いおおり、この囜にがんやりずした䞍安をもたらし続けおいる。幕末の危機は、遡るこず癟幎前、家康の孫であるにも関わらず副将軍にしかなれない氎戞光圀公が抱えおいた、自己および埳川暩力の正統性を巡る䞍安ず共鳎し、尊皇攘倷思想ずしお開花した。尊攘ずいう倧矩を芋぀けた死に狂いの歊士道は、幕府ず歊士自身を滅がしたのみならず、富囜匷兵の原動力にもなり戊陣蚓ぞず受け継がれ、あの無謀な戊争を経おその理想䞻矩ず共に玉砕した。こうしお倩皇陛䞋は人ずなり別な芋方をすれば人ずなるこずを蚱され、囜䜓ずいう抜け殻だけが蟛うじお残された。

      XⅧ
       日本人であるずいう感芚は倩皇ずの関係から醞成されるのではないか。郜に察する私鄙、祖先に察する私今、「私」をこの囜に䜍眮付けるものの根源こそ倩皇である。それには叀事蚘に蚘され本居宣長が理論化したような、りシハくのではなくシラすずいう倩皇の統治圢態が絶劙な理論装眮ずなっおいるのではないか。倩皇は秩序の䞭心ではあるが、意思を瀺したり行動したりする事はない空虚なシニフィアンである。文脈によっお祖先にも囜土にも、産土神にもなる。敬語を軞ずする日本語は䞊埡䞀人を頂点ずする吊定神孊的構造ずなっおおり、蚀葉が正しく運甚されおいる事それ自䜓が瀟䌚秩序をもたらしおいるのである。䞀方で、そうした構造が、日本語話者を近代的䞻䜓ずしお自立させるこずを困難にしおいるのではないかずいう思いもする。近代化ず共に今なお日本人にがんやりずした䞍安を䞎え続けおいる䜕かの源流を蟿るず、こうした蚀語的、宗教的葛藀に行き着くのではないか。國體ないし囜䜓ずは、究極的には、そうした日本人の粟神構造そのものを指す蚀葉なのではないか。このシステムは瀟䌚に秩序ず安定をもたらす䞀方で、内郚から倉革する力を持たず、垞に倖圧によっおしか倉わるこずができない構造䞊の問題も抱えおいるのではないか。内村鑑䞉のように二぀のJずいう立堎もあり埗たわけだが、教育勅語奉読拒吊事件でその危うさが露呈したように、このシステムの䞭では、匷い個人䞻矩ず囜䜓ずを䞊列させるのは困難である。倩皇制ずは、日本語ずいう吊定的蚀語構造が、歎史ず政治の䞭で結晶化した制床である。あるいは、日本においお、神は蚀語ずしお生きおいる。だから叀来皇宀は歌を詠み、民ずの関係を織り蟌み、神聖なものずしお奉玍しおきたのではないか。この蟺は類曞を読みながら今埌も深く考えおいきたい。

      Xⅹ
       戊埌、囜防は倖郚委蚗される事になった。冷戊構造の䞭、反共栞戊略の砊ずしお、米囜の䞍沈空母ずしお、資本䞻矩の芋本垂ずしおの圹割を担わされた戊埌日本においお、歊士道的倫理は䌚瀟ぞの滅私奉公に倉質し、家庭も顧みずただがむしゃらに働くモヌレツ瀟員は、゚コノミックアニマルず呌ばれる様になった。安田講堂、垂ヶ谷、あさた山荘の䞀連の事件が思想史における倧きな物語の終焉を告げ、日䞭囜亀正垞化ず匕き換えに田䞭角栄が葬られた埌、戊埌日本はロンダス䜓制の䞋で集倧成の茝きを攟぀に至った。駅のホヌムには吞殻が倧量に萜ちおいお、新幹線はタバコの煙が蔓延しおいた。野菜は青臭く、トむレは陰翳瀌讃の䟿所だった。暎力団、闇金、総䌚屋、゚セ同和、カルト宗教、悪埳代議士、悪埳事務所が幅をきかせ、闇瀟䌚ず衚瀟䌚が枟然䞀䜓ずなっおいた。新聞TVには広告を通じお倧金が集たり、文化ず䞖論を支配しおいた。日本人は未だ欧米コンプが抜けきれず、圌ら圌女らの容姿や生掻スタむルに憧れ、胎長短足で狭小䜏宅に䜏む自分達を恥じおいた。男は汗ずタバコず敎髪料の入り混じったにおいを攟ち、虚勢を匵っお生きおいた。女は化粧臭いか所垯染みおるかのどちらかだった。そんな拝金ず矩理人情が入り混じった時代に私は生たれ育った。小孊校に䞊がり物心が぀いた頃に゜連が厩壊しバブルが厩壊した。

      XX
       バブル厩壊ずは、戊埌の政官財が癒着した護送船団方匏の厩壊であり、冷戊終結ず共に蚪れたグロヌバル資本䞻矩䞖界のアメリカ化ぞの接続の為に必芁な詊緎であった。詊緎の䞭で阪神倧震灜ずオりムのテロが远い蚎ちをかけ、キレる少幎事件が玙面を賑わせ、数々の倒産劇があった。倧人達が自信を倱い、正しさがわからなくなり、倫理が厩壊しおいくのを感じた。街はサラ金の看板やピンクチラシで埋め尜くされ殺䌐ずしおいた。そんな䞭で青春を過ごした私は、どこか倧人達を軜蔑しおいた。党おを斜めから芋る癖が぀いおしたった私は、信じられるものは自然科孊しかないず挠然ず考え、唯物論に傟くようになった。文孊や哲孊は愚痎や屁理屈を䞊べおいる様にしか芋えず敬遠しおいた。それは私の心の奥行きを狭め、思想を痩せ现らせる結果ずなった。この頃の私は、人間の感情など所詮は神経䌝達物質の䜜甚で、人の営為は党お地球を汚す結果にしかならず、それなら䜕もしない方がいいず考えおいる虚無的な若者だった。健康に恵たれながら、䜕をやっおもばかばかしく思えお仕方がなかった。今思えばこれも、圓時の若者に蔓延しおいた時代の空気であった。そうした思想的貧困の必然的成行きずしお、い぀しか私は自分の蚀葉が持おなくなり、気づいた頃にはその堎を取り繕う事ばかりに最適化し、グランドデザむンが描けず、呚囲に迎合する事しかできない、兞型的なダメな倧人の䞀人になっおいた。成人埌も、リヌマンショックが私の資本䞻矩ぞの懐疑を深刻にし、原発事故が科孊や珟代瀟䌚に察する䞍信を増幅しおいった。私は近代の恩恵に浞りながらも、近代ずいうシステムの抱える矛盟に絶望し぀぀あった。私の二十代はそれだけで終わっおしたった。䞀方で、唯物的なものの芋方が己を虚無に陥れおいる事に気づき、思想を修正しおいく必芁にも迫られおいた。䞉十代の私は虚無からの脱华を求め仏教や科孊哲孊に傟倒しながら圷埚っおいた。圷埚い続けるうちに気づけば䞍惑が迫っおいた。

      XⅪ
       私は四十を前にしおようやく小説を読むようになった。読めるようになっおきたずいう方が正確かもしれない。自分の䞭にある、誰かが蚀った事を簡単に鵜呑みにする傟向、䜕でも短絡的に解する傟向、じっくり腰を据えお考える事のできない胆力のなさに気が぀いお初めお、文孊が読めるようになっおきた。そしお、ここで自己の内に生じた感芚を蚀語化し他者の芖点を孊ぶうちに、自分の理想や倧切にしたいものの茪郭が、朧げながらわかるようになっおきた。私ずいう自意識が、い぀も存圚にた぀わる䞍安を抱えおおり、存圚の前提や根拠を確かめたがる習性がある事を自芚した。四十にしおようやく私は蚀葉を倧事にする事を芚え始めた。そのうちに、どうも明瞭簡朔を求める近代の圚り方が、私の特異性を毀損しおいるのではないかずいう思いが芜生え出した。䜕でも怜玢しわかったような気になっおしたうネットの時代においおは、人生も同様に薄っぺらく感じられる様になっおいるのではないか。文孊はこのばかばかしさに抵抗できる唯䞀の詊みなのではないか。

       人の蚀葉ずいうのは究極的には自己蚀及である。それはそもそも宇宙の成り立ちが自己蚀及的で、時空が無限の自己盞䌌であるこずに因るのかもしれない。初めに蚀葉ありきず聖曞に曞かれたがため西掋はその様に発展し、蚀語に基く䟡倀芳がこの䞖界を芆っおいるのかもしれない。しかし東掋では、肉䜓を離れお蚀葉はない事を叀くから重芁芖しおきたのである。東掋人たる私は、近代のコヌド的蚀語芳を利甚しながらも、それにどこか違和感を抱えお生掻しおいる。私ずいう肉䜓の珟象は、今この瞬間も蚀語ずは無関係に生じおいる。私はそれをあの四十䞃字の詩の䞭で眺め、远認する。祖先の歎史や囜土の自然、その理想的象城たる倩皇の雅ぞの憧憬を抱きながら。幕末以降のほろ苊い歎史の蚘憶もそこに重ねながら。きっずここには、そんな私の堂々巡りの自己蚀及が刻たれおいく事だろう。

      色は匂ぞど 散りぬるを 我が䞖誰そ 垞ならぬ
      有為の奥山 けふ越えお 浅き倢芋じ 酔ひもせす
      ん

    • そ ぉ だ 。
      • 女

      ミセスずファントムシヌタだいすき

      『雑談そぉだトヌク』管理人 新芏さん倧歓迎!😉↓
      https://bookmeter.com/communities/342548

    • 愛の䌝道垫カロン@本物のむケメンを芋たら停物のむケメンなど、もう芋られないですよっ
      • B型
      • アヌティスト
      • 宮城県

      むかしむかし、あるずころに、お爺さんずお婆さんが䜏んでいたした。
      お爺さんは山に柎刈りに、お婆さんは川ぞ泳ぎに行きたした。
      お婆さんが泳いでいるず、川䞊から日野のトラックが流れおきたした。
      お婆さんはトラックを運転しお家に垰りたした。
      トラックを包䞁でふた

      ぀に割るず、䞭には元気な赀ちゃんが入っおいたした。
      赀ちゃんはトラックから生たれたので、カロンさんず名付けられたした。
      カロンさんは、ずおも矎しい青幎に成長したした。
      その頃、郜ではラオりが暎れおおりたした。
      北斗神拳正統䌝承者であるカロンさんは、ラオりを倒すため、仙台囜分町に行くこずにしたした。
      カロンさんは加山雄䞉にもらったペットで、鬌ヶ島に向かいたした。そしお、あたたたたた、ず、あっずいう間にラオりを退治したした。
      村に戻るず、お爺さんずお婆さんは病気で死んでいたした。
      カロンさんは、やれやれ、これで介護から解攟されたわい、ず思いたしたが、愛ず正矩のセヌラヌ戊士でもあるカロンさんは口にはしたせんでした。
      その埌カロンさんは、読曞メヌタヌに参加し、東凰連邊共和囜の倧統領になっお、しあわせに暮らしおいるそうです。
      めでたしめでたし。

       よ、よろしくお願いしたす💊

    • くものすけ
      • 男

      最近は、日本蟲業(食糧問題、憲法改正問題、盞続皎(節皎,マンション投資など関連の曞籍を䞭心に読曞しおいたす

    • 竹園和明
      • 男

      有名な賞など䞀切関係なく読んでたす。

    • trazom
      • 男
      • 奈良県
    • å…š13件を衚瀺

    ナヌザヌデヌタ

    読曞デヌタ

    プロフィヌル

    登録日
    2024/09/13547日経過
    蚘録初日
    2024/08/01590日経過
    読んだ本
    50冊1日平均0.08冊)
    読んだペヌゞ
    13856ペヌゞ1日平均23ペヌゞ
    感想・レビュヌ
    49件投皿率98.0%
    本棚
    1棚
    珟䜏所
    愛知県
    自己玹介

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