読書メーター KADOKAWA Group

那由田 忠さんのお気に入られ
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  • オカピー
    • 1957年
    • A型
    • サービス業
    • 神奈川県

    読書が好きなシニア世代です。最近の読書傾向は、ジャンル問わず、読んだことの無い作家さん、興味があったら手あたり次第読んでます。ブックオフも好きで、大型店舗、グランドオープン、行ったことが無い店舗に行くことが趣味です。ブックオフオンラインも利用します。

  • ラジオリスナー

      読書メモさせてもらってます。昔、人に薦められた本を読むようにしてます。司馬遼太郎さんや吉川英治さん、北方謙三さん、山岡荘八さん等が好みですが、ロシア人の文学にも手を出して挑戦しています。良い作家さんがいたら教えてもらえると有難いです。

    • 道楽モン
      • 東京都

      還暦を超えると1年が本当に早い。不動産会社勤務でござる。

    • yujiru2001

        活字が大好き!
        2024年は年間150冊を目標にして読みたいな

      • 誠也
        • 2003年
        • A型
        • 大学生
        • 滋賀県

        「なぜ」が世界を変える

        一章 死んだ教室

        黒板に書かれた公式を、誰も見ていなかった。

        春日高校3年B組。窓の外では桜がとっくに散り、五月の風が体育館裏のネットを揺らしている。教室の中は、ノートを枕にした頭と、スマホを膝に隠した手と、どこでもない虚空を

        見つめる目ばかりだった。

        前任の数学教師、田村が異動になったのは三週間前のことだ。

        田村の授業は「板書が速く、説明がない」という様式美で成立していた。公式を写す。問題を解く。答え合わせをする。そのサイクルが三年間、一度もブレたことがない。誰も何も理解していなかったが、誰も何も困っていなかった。定期テストの範囲さえ覚えれば、点数は取れた。

        「じゃあ静かにしてろ」

        自習監督に来た英語の松本が教卓に文庫本を広げた瞬間、後ろの席の川島涼太は盛大なため息をついた。

        「物理も数学も詰んだ。もう諦める」

        隣の席の小野寺実が細い声で言った。「受験、どうすんの」

        「知らん。文系にする。けど古文も詰んでる」

        「それ全部詰んでるじゃん」

        「そう。俺の高校生活、詰んでる」

        涼太はそのまま腕に顔を埋めた。

        扉が開いたのは、そのときだった。

        二章 最初の五分間

        入ってきた男は、教師にしては若すぎた。

        三十代前半だろうか。スーツではなく、白いシャツに黒のスラックスという格好で、持っているのはチョーク一本だけだった。荷物も、教科書も、出席簿さえない。

        「あ、田村先生の代わりに来た桐島です。よろしく」

        それだけ言って、桐島は黒板の前に立った。

        松本がバツの悪そうな顔で文庫本を閉じ、教室から出て行く。誰も桐島を見ていなかった。川島涼太も、顔を腕に埋めたままだった。

        桐島は黒板を消すこともなく、静かに言った。

        「一個だけ聞かせてください。サイン、コサイン、タンジェント。何のためにあるか、知ってる人」

        沈黙。

        「知ってる人じゃなくていい。なんとなく聞いたことある説明、なんでもいいです」

        最前列の優等生、橘花が恐る恐る手を挙げた。「直角三角形の、辺の比、です」

        「そう。それは正しい。」桐島は頷いた。「じゃあ、なんで人類はそんなものを作ったの?」

        また沈黙。

        涼太は顔を埋めたまま、耳だけ動かしていた。

        「答えは、海で死にたくなかったからです」

        教室の空気が、わずかに変わった。

        三章 話の背骨

        「紀元前の船乗りを想像してください」

        桐島はチョークを持ったまま、歩き始めた。教壇ではなく、教室の中を。

        「GPSもない。地図も大雑把。嵐が来たら終わり。そんな時代に、人間には一個だけ頼れるものがあった。星です」

        窓際の席の女子が、スマホから目を上げた。

        「北極星の角度を測れば、自分が地球のどの緯度にいるか分かる。でも角度を距離に変換するには、計算が要る。弧の長さと角度の関係。それを扱う道具として、三角比が生まれた」

        桐島は黒板に、三角形ではなく、円を描いた。その円の中に、小さな船のシルエットをざっくりと書き加える。

        「だからサインとコサインは、最初から『回転』と結びついてるんです。直角三角形の話じゃなかった。人間が空を見上げて、自分の位置を知ろうとした話だった」

        涼太は、いつの間にか顔を上げていた。

        「で、ここが大事なんですけど」

        桐島の声が、少し速くなった。

        「多分今、半分くらいの人が『じゃあ直角三角形の説明はなんだったんだ』って思ってる」

        涼太は思っていた。まさにそれを。

        「それ、正しい疑問です。答えは、円と直角三角形は実は同じものを見ている、です。円の中に直角三角形を書いてみると分かる」

        チョークが動いた。円の中に、斜辺が半径と重なる直角三角形が現れた。

        「角度が変わると、縦の長さが変わる。それがサイン。横の長さが変わる。それがコサイン。つまりサインとコサインは『角度が変化したとき、縦と横がどう動くか』を表してるだけ。波の形をしているのも、音が波打っているのも、交流電流がぐにゃぐにゃしているのも、全部これが理由です」

        橘花がノートに何かを書き始めた。急いで、でも丁寧に。

        四章 つまずく前に

        桐島は一度立ち止まり、教室全体を見渡した。

        「ここで絶対に混乱する人が出るので、先に言います」

        涼太は背筋を伸ばした。自分のことを言われている気がした。

        「サインが『縦』でコサインが『横』って、逆じゃないかって思う人がいる」

        涼太はまさに思っていた。

        「コサインの『コ』って、英語でco-、つまり『補角の』って意味なんです。サインの補角がコサイン。だから横なんじゃなくて、サインを基準にして、それを90度回転させた相棒がコサイン、と覚えると混乱しにくい」

        川島涼太は、手を挙げていた。自分でも気づかないうちに。

        「あの」

        桐島が目を向ける。

        「じゃあタンジェントは」

        「いい質問です」桐島は笑った。「タンジェントは、英語でtangent、接線って意味です。円に接する線の長さ。縦と横の比を取ると、円の傾き、つまり坂の角度が分かる。スキーのゲレンデが何度の斜面かを知りたいときに使います」

        「スキー場」と涼太は呟いた。

        「そう。人類はスキー場より先に、山の傾斜を測って安全な道を切り開くために使ってた」

        五章 放課後の黒板

        授業が終わった後、涼太は席を立てなかった。

        頭の中で何かが繋がり続けていた。サインとコサインが船乗りの道具で、タンジェントが山の傾きで、波の形が交流電流で。バラバラだったピースが、一本の糸で縫われていく感覚。

        桐島が黒板を消しながら、涼太の視線に気づいて振り返った。

        「何か残ってる?」

        「いや」涼太は言葉を選んだ。「なんか、気持ち悪かったものが、急に気持ちよくなった感じがして」

        「それ、一番いい感覚です」

        桐島はチョークを置いた。

        「公式って、誰かが必死に考えた答えなんですよ。問いがあって、試行錯誤があって、やっと辿り着いた形。だから公式を覚える前に、その人がどんな問いを持っていたか分かれば、覚えなくても導ける」

        「導ける、か」

        「数学も物理も、暗記科目じゃないです。推理小説です。どうしてそうなるのか、追いかけていくと、必ず理由がある」

        涼太は窓の外を見た。五月の空が、夕方の色に変わり始めていた。

        「推理小説か」

        声に、どこか火がついたような響きがあった。

        六章 一ヶ月後

        川島涼太の数学の点数は、赤点ギリギリから学年十七位まで上がった。

        それよりも変わったのは、授業中の顔だった。

        桐島が何かを説明し始めると、涼太は必ずどこかで「あ」という顔をした。声には出さない。でも眉が上がって、目が少し細くなって、口の端がわずかに動く。

        小野寺実はそれを「涼太の理解顔」と呼んで、いつしか自分もそれを待つようになっていた。

        桐島の授業には、不思議なリズムがあった。

        疑問を育てる。疑問が熟したところで答える。答えが新しい疑問を生む。そのサイクルが、五十分をあっという間に変えた。チャイムが鳴るたびに、教室のどこかで小さな舌打ちが聞こえるようになった。終わりたくない、という音だった。

        エピローグ 問いを持つ人間

        十一月。模試の返却日。

        涼太の答案には、物理の大問に、見慣れない記述があった。

        公式を使う前に、三行の説明が書いてあった。「この状況で保存されるのはエネルギーであり、なぜなら——」

        採点者のコメント欄には赤ペンで一言あった。

        「理解している」

        涼太はその答案を、机の引き出しにしまわなかった。

        桐島の授業が始まる前、机の上に広げておいた。理由は自分でもうまく説明できなかったが、なんとなく、見えるところに置いておきたかった。

        扉が開いた。

        「今日は慣性の話をします」桐島は言った。「まず聞きますけど、なんで止まってるものって、動き出しにくいんだと思う?」

        川島涼太は、一番最初に手を挙げた。

      • みき
        • ムラサキ
          • 大学生
          • 東京都

          漫画から純文学までなんでも読みます
          物理学専攻

        • 広井啓

          趣味は読書の他、競馬、株、パズルゲーム、詰将棋、邦画鑑賞など。
          読書傾向は小説ならほのぼの系や家族ものが中心。政治、経済、日本史などノンフィクションも読みます。
          村上春樹は全読破。他に、重松清、白石一文、浅田次郎など。女流は特定の作家に拘らず幅広く。

        • tai
          • のんちゃん雲に乗る
            • B型
          • よむよし

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            よろしくお願いいたします💌

          • Kircheis
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            • 専門職
            • 大阪府

            名前はキルヒアイスと読みます。
            田中芳樹さんの作品『銀河英雄伝説』の登場人物からお借りしています。

            読書の感想を残しておくことで、何年かしてからその時の感情などをふと思い出したりできるのではないかと思い、『読書メーター』を利用しはじめました。

            他の人の

            感想を読むのも大好きです!
            感想読んだらナイスしていきますが、お気になさらず(+o+)
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            あと、感想は備忘録的に書いていることから、(フィルター付きではありますが)ネタバレ全開のものもありますのでご了承下さい。

            主にミステリーというか、ラストに大どんでん返しが待ってるような話が好きです( ^ω^ )
            あと哲学系も好きです!
            それと弁護士をしているので、法関連の本の感想を書くことがあります。

            ほとんどの感想に付いている★マークの意味は

            ★★★★★(最高!傑作!)
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            ★★☆☆☆(時間つぶしにはなる)
            ★☆☆☆☆(つまんなかった)

            です。
            あくまで個人的な好みですので悪しからずm(_ _)m

            こんな感じですが、宜しくお願いします(≧∀≦)

          • ポルコ
            • 東京都
          • Totsuka Yoshihide
          • r691

              エンタメ枠(主に歴史小説)、技術書枠、教養・経済枠(株含む)。

              (新刊待ち)
              - 北条氏康 巨星墜落篇(富樫倫太郎)
              - パンプキンシザーズ(25)?
              - 凪のお暇(12)????/??/??

              2026/5/9〜
              +10(2026/6/24)

            • 学生

                色んな本を読んでいます。
                家にある本を読んでいこう。

              • カワサキゴロー🍺📚🐈🐴
                • IT関係

                立ち飲ミスト
                読書/猫/競馬/経営

              • 与作
                • あかまる
                  • 1990年
                  • A型
                  • 技術系

                  本から著者の哲学を自己解釈するのが好きです。

                  小説だけでなく、学術文庫もよく読みます。

                • だんぼ
                  • ガテン系
                  • 埼玉県

                  さされませんようにぼくはいのった
                  せんせいやともだちのわらいごえはきこえなかった
                  とうめいになりたかった

                • 全194件中 1 - 20 件を表示

                ユーザーデータ

                読書データ

                プロフィール

                登録日
                2011/12/31(5306日経過)
                記録初日
                2011/06/05(5515日経過)
                読んだ本
                1202冊(1日平均0.22冊)
                読んだページ
                317971ページ(1日平均57ページ)
                感想・レビュー
                1102件(投稿率91.7%)
                本棚
                2棚
                性別
                血液型
                B型
                自己紹介

                 ずっと公民科の教員だったので政治哲学系の本がそこそこあると思います。関連して生徒会などのマイナーな研究をしていて、ほとんど誰も読まない本を時々読みます。社会科学や哲学の古典を読みたいと思っていますが、中々進まないです。でも、頑張ります。
                 以前は毎日読書の連続記録を狙っていましたが、定年後に暇になったら読書が減ってしまった。困ったもんだ。
                 小説は、読書メーターに加入以来爆発的に読み漁った結果、完全に村上主義者と化しました。(真正主義者とまで言えませんが)古い順に小説を一巡読みする計画を進めています(4回目をそやっています)。同様の才能と見込んだのが綿矢りさです。まるで違う資質ですが、深いものを感じます。しかし、村上春樹比べると作品が少ないのが残念です。それを考えると、春樹が毎日規律正しく生活していることの凄さを改めて感じます。私には到底真似ができませんが。

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