映画『羅生門』スタイルの登場人物達の語りで物語が進む。朧に見え始めた輪郭に、なるほどそういう話かと読めたつもりでいたら、ゆっくりと足元を掬われた。派手ではないが、生っぽさと嘘臭さの絶妙なバランスの薄ら寒い感触がたまらない。らんちうの姿をどう捉えるか？表紙のイラストが読後、存在感を増して見えてくる。浮遊感あるゆったりとした泳ぎを想像すると、さらに心がザワザワする。何よりもここで描かれる、日本の見えづらいけど強固な階級社会と循環、貧困、搾取、それを利用する存在が一番怖いか。

実写化の話を知り再読。33年振り。すっかり中身を忘れていて、新鮮な驚きが楽しかった。島田荘司が颯爽と登場し新本格が花開いていった頃が懐かしい。嵐の孤島の現代的アレンジで意表をつくトリックと真相に、興奮したのを思い出す。今でもこのトリックは十分に通用するし、作品も色褪せていない。探偵役の１人が島田で立ち振舞いがトリックの阿部チャンなのはご愛嬌だ。若い作家の荒削りも含めて、当時の勢いと気合いを感じる良作。でどうやって映像化するのだろう。驚きの展開をどのように演出するのか楽しみだ。

嗚呼、何たる奇想、何たる漢武。妖艶にして残虐の極み。地獄極楽屍山血河。今この生温い世の中で、面白さと活劇をのみ突き詰めたエログロ爽快痛快妖怪な大活劇物語を読み耽る幸せ。忍法は登場しない忍法帖だが、幻術や奇妙奇天烈摩訶不思議な剣術、果ては豪傑純朴寡の純真と肉欲媚麗な怪女の乙女の祈りまで、あらゆるアイデアが、惜しみ無く留まる事なく投入された、作者以外誰も形にできない唯一無二の娯楽作。

映画『羅生門』スタイルの登場人物達の語りで物語が進む。朧に見え始めた輪郭に、なるほどそういう話かと読めたつもりでいたら、ゆっくりと足元を掬われた。派手ではないが、生っぽさと嘘臭さの絶妙なバランスの薄ら寒い感触がたまらない。らんちうの姿をどう捉えるか？表紙のイラストが読後、存在感を増して見えてくる。浮遊感あるゆったりとした泳ぎを想像すると、さらに心がザワザワする。何よりもここで描かれる、日本の見えづらいけど強固な階級社会と循環、貧困、搾取、それを利用する存在が一番怖いか。