幼少期を団地で過ごした者としては、著者ほどの強烈な経験はないものの、興味を惹かれるものがあります。団地という存在が社会主義的な理想を反映しているというのは、薄々感じるものですが、それを実際の政治動向や市民活動、住宅政策、運輸業界の思惑と紐づけて実証するまでに至るのは、神業的なセンスと技術を感じます。しかも、団地妻から孤立の進展を指摘するのは、新たな研究を触発する可能性も含んでいます。本書は、どんなものにも等しく真理が宿っており、それを明らかにできるかは見る側の問題だということを証明する実例になっています。

「まどマギ」が注目されているから魔法少女特集というのは安直だけどセンスがいい。自己言及を繰り返しながら変化してきたジャンルの歴史を踏まえないと、「まどマギ」がなぜ傑作だったのかを完全に理解できません。その中でも、魔法少女モノは、対象の性別と年齢が入れ子のように複雑に絡み合っているので、歴史観というものが重要です。加えていつものことですが、インタビューが多いのもいいですね。特に虚淵さんの、過激なフィクションは残酷な現実への予防接種なんだ、という説にはうなりました。まあ、ヤマカンさんはよくわからん。

幼少期を団地で過ごした者としては、著者ほどの強烈な経験はないものの、興味を惹かれるものがあります。団地という存在が社会主義的な理想を反映しているというのは、薄々感じるものですが、それを実際の政治動向や市民活動、住宅政策、運輸業界の思惑と紐づけて実証するまでに至るのは、神業的なセンスと技術を感じます。しかも、団地妻から孤立の進展を指摘するのは、新たな研究を触発する可能性も含んでいます。本書は、どんなものにも等しく真理が宿っており、それを明らかにできるかは見る側の問題だということを証明する実例になっています。

テレビ番組、アニメ、ゲームを実地調査し、その特徴をまとめるとともに比較した名著。個人的にはアニメ業界しか知りませんが、正確な情報が簡潔にまとめられていると思います。今後、2000年代初頭はこうだったという歴史資料にもなるだろう貴重な仕事です。アニメ関連では、テレビ制作との比較も垂涎の論考でしょう。ただ、本書の意義は娯楽コンテンツの制作環境の理想として「冗長性」の重要さを指摘したことにあると思っています。単発の成否からポートフォリオと確率の高低へ、この分野の評価基準をひっくり返すものになるように思います。

著者の動画に感銘を受けてファンになったクチなので、一冊は持っておきたいなと手に取りました。内容としては動画の内容と大差ないのですが、手許に置けるという出版メディアのよさを感じます。これまでこんなテーマを深堀する人が、こんなに身近になることはなかったので、著者はSNSのメディアとしての意義を示したのではないかと思います。不動産小バブルが再来し、物件を小分けにして債権化したり、分有したりするスキームがさも新しいかのように宣伝されているのを見たりするので、このような記録はしっかり目に見えるところにあるべきです。

主に売春のため、海外に売られた女性たちについての本。ただかわいそう、酷いというだけでなく、その背景にある文化とその変化にも目配りをした良著でした。主な輩出元であった天草地方の堕胎しない習慣、性的におおらかな風土、身近な出稼ぎを前提としながら、それが生き抜く努力と評価されていた時代から、単なる恥辱となる時代の変化と、それが当事者の尊厳に与える影響までしっかりと記述しているのは貴重です。人がのびやかに生きられる世が来たら、「娼婦のさがおものびのびと育てよう」と言ってのける著者の見識あってのものでしょう。