特徴的な文章に複雑・矛盾した感情と思考がわだかまり、短いながらもゴリッゴリに質量と迫力のある作品。「母娘」「女性性」がテーマとなっているが、そうした概念にロジカルに解きほぐすのではなく、言葉にしにくいそれを言葉で格闘していく、そんな勢いのある小説でした。

特徴的な文章に複雑・矛盾した感情と思考がわだかまり、短いながらもゴリッゴリに質量と迫力のある作品。「母娘」「女性性」がテーマとなっているが、そうした概念にロジカルに解きほぐすのではなく、言葉にしにくいそれを言葉で格闘していく、そんな勢いのある小説でした。

合わない人は徹底的に合わないだろう。自分も初読の際に途中で挫折してしまった。その理由は、語りが線になっておらず、あっちこっちに目的地もなく縦横無尽に語りが迷走するところにある。なので、ストーリーに起承転結などを求める人はストレスが一瞬でマックスになるのでやめた方がいい。 一方で、九州のある小さな「浦」を舞台としつつ、多様なキャラクターと時間的な奥深さが混じった本作は、他にない四次元的な語りを作り出すことに成功している。特にこれを感じられた表題作は（挫折しておきながら）個人的にハチャメチャにハマった。