本を読めない、というわけではないのだけど、「思ったようなペースで読めないな」とは常々思っていて、100分de名著でも度々拝見する若松先生は何を書いているのかな？と思い手に取る。繊細な植物がエンボスであしらわれた、上品な装丁が素晴らしく、内容の方も、語りかけるような文章を読んでいると心が落ち着く。本を読む楽しみの多面性が形になっているようだと感じた。自分は楽しみよりも、効率だとか、役に立つだとかいう目的が先に立っていたという気づきがあった。簡易な内容だけど、読書に対する姿勢が変化した良い一冊。

病院を舞台とした短編集かな？と思いながら読み進めていると、物語同士の意外な接点がどんどん増えていく。次々に登場する人物たちの人生を通して、“街”がどんどん立体的になり、そして自ずと韓国社会が透けて見えてくるのがとても面白かった。読んでいると、昔ニュースで少し聞いたことがある、という程度の知識の人間にすら、かつて韓国で起きた事件を度々想起させられる。(そうした事件に関する補足があとがきに記載されていてとても助かった。)悲しみや苦しみの中に存在する、愛や親切が際立つ素晴らしい物語だった。

本を読めない、というわけではないのだけど、「思ったようなペースで読めないな」とは常々思っていて、100分de名著でも度々拝見する若松先生は何を書いているのかな？と思い手に取る。繊細な植物がエンボスであしらわれた、上品な装丁が素晴らしく、内容の方も、語りかけるような文章を読んでいると心が落ち着く。本を読む楽しみの多面性が形になっているようだと感じた。自分は楽しみよりも、効率だとか、役に立つだとかいう目的が先に立っていたという気づきがあった。簡易な内容だけど、読書に対する姿勢が変化した良い一冊。