全二作で爽やかさを感じさせた三作目は、前作にあった暗転の予感そのままに、序盤からダークサイドに針が振られる。個人的には、「medium 霊媒探偵城塚翡翠」とそれを演じた清原某＆小芝某のイメージが、本作でいきなり桐野夏生作品となったような印象。ネタバレになるのであまり書けないが、この転換ぶりにはビックリである。桐野夏生作品が大好きな私は、もちろん楽しく読めた。シリーズ全作通しで読むと良いエンタメ作品だと思うが、本作単体では説明されていない点（ラクガキ）や収斂のさせ方等、推理小説としては、少々荒っぽいかな。

著者をTVで初めて観たとき、元レスリングか水泳選手で筋肉脳の人かと思っていたら、全く違う妄想家の人であった。東京外大出身で英語が堪能かつ世界遺産検定1級合格者が描く、行ったことがない旅行記は実に味わい深かった。丁寧なイラストも本人の手によるもので、行ったことがないなんて書かなきゃわからないほど巧い。あまり旅行が好きではない私でも行ってみたくなる。チチェン・イッツア、ワルシャワの旧市街、サマルカンド文化交差路あたりに特にそそられる。その後の著者はいくつか赴いたのだろうか。リアルな旅行記も読んでみたい。

「自由研究に向かない殺人（A Good Girl’s Guide to Murder）」「優等生は探偵に向かない（Good Girl,Bad Blood）」「卒業生には向かない真実（As Good As Dead）」のシリーズ三作品の番外編となる本作（Kill Joy）は、ダークサイドの欠片もない爽やかピップと愉快な仲間たちの架空の犯人当てゲーム。ちょっぴりヒネリはあるものの、ピップシリーズを読んでいないと、176頁で税抜800円は高い。

幸いなことに配偶者がいるが、万が一三行半を突きつけられたらば、こんなこと私には無理である。私の友人・知人には、なぜか未婚者が多い。男女含めた５０代以上で優に二桁名いる。そんな彼らとの酒呑みネタに、もちろん上から目線で、本書の話をしようかと思っていたが、自分の幸運を噛みしめさせられた。なお、我が身を振り返らないのであれば、軽妙かつリアルなレポートあるいは体験記として面白く読める。本書に書かれていた「結婚しても働きたい女性は少数派」等々を家内との話のネタに使って、三行半状況回避を図っている。

全二作で爽やかさを感じさせた三作目は、前作にあった暗転の予感そのままに、序盤からダークサイドに針が振られる。個人的には、「medium 霊媒探偵城塚翡翠」とそれを演じた清原某＆小芝某のイメージが、本作でいきなり桐野夏生作品となったような印象。ネタバレになるのであまり書けないが、この転換ぶりにはビックリである。桐野夏生作品が大好きな私は、もちろん楽しく読めた。シリーズ全作通しで読むと良いエンタメ作品だと思うが、本作単体では説明されていない点（ラクガキ）や収斂のさせ方等、推理小説としては、少々荒っぽいかな。

いわゆる犯罪小説を読むための予備知識を仕入れるつもりで、この手のルポを定期的に読んでいる。漫画「ギャングース」の原作者として著者を知っていたのだが、本書の内容はその漫画でほぼ網羅されており新味はなく、経済的ルサンチマンを理由に詐欺師側を擁護する点はわからなくもないが、明確なデータは全く無く、物語仕立てで描かれているため真実味と論理性が嘘くさい。何より詐欺師側を礼賛し過ぎている感があり、反体制側を擁護するきらいがある私でも、これはいかがなものかと感じた。予備知識にもならなかったなぁ。