一つの肉体に共棲する双子、メルヒオールとバルタザールの転落の物語。一つの肉体に二人の人間が棲んでいるという奇怪な設定だが、すぐに物語に引き込まれて、その奇怪さにすぐ慣れてしまった。舞台はウィーン。丁度ナチスが台頭している時代。その辺の歴史も丁寧に描かれており、双子の奇怪さとその時代の暗さがとても合っている。これが著者のデビュー作とは恐れ入る。このような該博な知識をどこで手に入れたのだろう。最後まで読んだ時、表紙の「ET IN ARCADIA EGO」の意味がわかり、物語として本当に良くできていると思った。
★★★★☆