ネタバレ女の子の成長を一貫して手紙形式で描く新基軸の物語。刊行は1912年。天真爛漫で好奇心とユーモアに溢れる主人公の造形が魅力的。手紙の書きぶりや内容が変化することによって4年間の経過を感じさせるなど小説としての可能性を広げていることも見逃せない。人は思いがけない出来事が好き、必要な資質は想像力、不愉快なことも興味深い経験と捉えるなど、生きる上での金言も多い。あしながおじさんの秘密主義ぶりから、その正体は主人公の出生に関係する人物と思い込んでいた。それがジャービーとなると援助する説得力が弱いと思わないでもない。

ネタバレ「村上海賊ミュージアム」を見学した時に、海上軍団なるものに興味を覚えた。折しも現閣僚の一人は村上海賊の末裔だという。一体その実像は？という問いに誠実に答えてくれる良書。地元の歴史を知らない教え子のために地域史の掘り起こしをしたのが、海賊研究を始めるきっかけだったという。明晰だが読者の思考に寄り添った書き振りにも、筆者の研鑽と人柄が窺われる。大きな歴史の流れの中で語られる海賊の変遷は、知られざる歴史の一端として興味深かった。一般的に浸透している族的なニュアンスとは大きく隔たった海賊の姿がここにはある。

ネタバレ食べ物にまつわるエッセイ。川本さんが幼少期や若い頃の思い出をこんなに多く語る本は読んだことがない。今まで、どちらかというと、自身の前半生や家族については触れてこなかったと思う。「あとがき」に「食は思い出と共にある」と述べている。だから、この本に限っては抑制を解いて思い出に浸ったのかもしれない。奥様をなくした喪失感や子どもがいない欠落感が吐露されていて胸が痛む。それでも、早起きをしてお弁当を作ってくれた母親や、もう一人の母として支えてくれた女中さんなどの記憶が川本さんの心を温めてくれるのだろう。

ネタバレ女の子の成長を一貫して手紙形式で描く新基軸の物語。刊行は1912年。天真爛漫で好奇心とユーモアに溢れる主人公の造形が魅力的。手紙の書きぶりや内容が変化することによって4年間の経過を感じさせるなど小説としての可能性を広げていることも見逃せない。人は思いがけない出来事が好き、必要な資質は想像力、不愉快なことも興味深い経験と捉えるなど、生きる上での金言も多い。あしながおじさんの秘密主義ぶりから、その正体は主人公の出生に関係する人物と思い込んでいた。それがジャービーとなると援助する説得力が弱いと思わないでもない。

ネタバレ史実に基づく4篇の歴史小説。「逆軍の旗」は、明智光秀が主君である信長を討つに至った胸中と「本能寺の変」後の孤立感が、ひりつくような悲劇性を生んでいる。「上意改まる」は、ある狷介な当主に下った処遇をめぐる波乱。ひそかに愛し合った男女の末路も哀しい。「二人の失踪人」は、父親の仇討ちが当時の手続きを踏むことによって合法とされ、決行した息子が故郷に帰るまでを描く。「幻にあらず」は、米沢藩の困難を極める藩政改革。長年苦労を共にした藩主の腹心が裏切り行為に走る結末に驚くが、これこそ人間の真実の姿だと思える。