一ヶ月に本を100冊読んだとか、1000冊読んだとかいって自慢している人は、ラーメン屋の大食いチャレンジで、15分間に5玉食べたなどと自慢しているのと何も変わらない。
速読家の知識は、単なる脂肪である。
それは何の役にも立たず、無駄に頭の回転を鈍くしているだけの贅肉である。
決して、自分自身の身となり、筋肉となった知識ではない。
それよりも、ほんの少量でも、自分が本当においしいと感じた料理の味を、豊かに語れる人のほうが、人からは食通として尊敬されるだろう。
読書においても、たった一冊の本の、たった一つのフレーズであっても、それをよく噛みしめ、その魅力を十分に味わい尽くした人のほうが、読者として、知的な要素を多く得ているはずである。
「オレは本を何百冊読んだ!」と言っても、「で?」と笑われるのがオチだ。
しかし、「オレはあの本のあの一節にメチャクチャ感動した!」と言うのは、単純にカッコイイし、その人の人間性について、多くを伝えてくれるだろう。
スロー・リーディングは、5年後、10年後のための読書である。
(平野啓一郎/本の読み方 スロー・リーディングの実践)
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