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2024年3月の読書メーターまとめ

ましろ
読んだ本
15
読んだページ
3736ページ
感想・レビュー
10
ナイス
194ナイス

2024年3月に読んだ本
15

2024年3月のお気に入られ登録
3

  • 煩先生
  • のりまき
  • oga

2024年3月にナイスが最も多かった感想・レビュー

ましろ
文章の余韻に心掴まれて、一編読むごとに嗚呼と浸り込む至福の時があった。すべてを描かない余白。解釈を委ねられている心地良さに物語の奥行きを思った。様々なアプローチで魅せ、独白も、人の意識が流れてゆく様も、そこにある心の機微、他者の視線の先を見留め、知りながら人知れず小さく傷つく者の姿も逃さない。細やかな揺らぎを文章の中に感じながら、読む自分の心の動きも追っている。そうして読みながら疼く感情を其処彼処に見つけ、そのたびに惹きつけられてゆく。気づかずに流れてゆく意識の行方と共に投げ出されたその先を巡らせていた。
が「ナイス!」と言っています。

2024年3月の感想・レビュー一覧
10

ましろ
人には自分だけの誰にも立ち入らせない領域が必要だということを、改めて巡らせてしまう。必要とし、必要とされる関係。身を捧げるように尽くしたとて、それでもなお別々に分かれ生きなくてはならない人生があったのだ。友情こそ歩むべき道だとして、長きに渡りキャサリン・マンスフィールドに尽くしたアイダの言葉に、読むほどに心打たれた。キャサリンはキャサリンだった。実生活でも作品の中でも、彼女は常にキャサリンだった。その特別な個性を理解し、配慮し、時を経て自分の至らなさも悔いる。立ち入れない大きな愛の前にただ胸一杯になった。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
人生の濃密さをずしりと感じる厚み、読み応えに圧倒された。そうして日々変化の流れを見せる思いを綴る言葉と変わらない芯にある愛や情熱が印象に残った。ティッグからウィッグへ。大切な人に向けられる言葉の親密さには、きっとどれほど読んでも立ち入れない部分がある。手紙だけでは理解し得ないこと、何を指しているのかわからない部分も含め、そこに込められた思いの息遣いや生の痕跡の一部を感じ取ることのできる貴重な資料として、どの頁も興味深い。とりわけ編集したマリの言葉は、マンスフィールドという人、その人生を語る深い声に思えた。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
何だか煙に巻かれたようにして、ただただ愛しい思いで満たされてしまった。人と人、その小気味よい会話、何だか悪い気はしない言葉のやり取りの流れに、自然と心掴まれてしまったのだった。端々で感じる詩情も心地良く流れている。どうにも頼りないようでもある夢を追い求める憎めない存在感の大人たちと、妙に頼りになる現実的な子どもの対比もまた面白い。それが反転するように、ふいに現実を見る大人の視点と夢を見る子どもの視点も可笑しい。そればかりでは生きられない人間の多面的な姿を映し出すようで、サローヤンの作品の魅力を再発見する。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
やがて流れるように日々感じたことを描き尽くしてゆく文章が、一つ一つ作品ごとく発想の源として伝わり、読み応えと共に、書くことへの情熱や苦悩が奥底に響いてくる。何とも愛情深いラムの手紙に対する言葉はあまりに率直で、思わず笑みがこぼれた。『アロエ』に関する記述も興味深く、登場人物たちへの思い入れを改めて再確認する。作品のもととなる場面の断片の記述など、貴重な創作過程を垣間見ることもでき、興味は尽きない。病床に在る思い、人との関係、友よとチェーホフに語りかける言葉、際限のない苦しみの先、書き尽くせない魅力を思う。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
表題作「桃の宿」は、馴染み深いその土地ならではの視点と外からの視点、自然のものと人工的なもの、花の季節の甲州や花見を巡る矛盾や違和感を鋭く捉えていて、そういうものを皆含め、頷きと可笑しさの狭間で愛しさを抱かせた。白樺派の面々、志賀直哉を囲む人々のエピソードはやはり面白く、立ち位置が興味深い。遠慮ない関係性あってこその吉行淳之介についての追懐の文章は、著者ならではの視点によって知られざる姿や最期も立ち現れ、それでもなお人間的魅力を放っている。対談を通して魅力を知った向田邦子への思いもその死を悼みじんとくる。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
評伝を読み、出来事の流れの細部に著者自身の経験の一端を知ればこそ、きゅっと心締めつけられる言葉や場面がいくつもある。幼き日のこびりつくように残る記憶の根深さを巡らせば、思っている以上にその目は物事の細部を見ているのだと改めて省みる。またどの視点に立っても共通する、自分を巡る問いが切なるものとして響く。こう在りたい自分も、他者から望まれる自分も、演じている自分に過ぎないとしたら、本来の自分はどこに在るのか。自分の見ている世界と実際の世界、生きることそのものや日常の揺らぎも思う。漂流し続け、陥る永遠を思った。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
愛すべき随筆。楽しみや好きなもの、師と仰ぐ人、文士たち、船旅汽車旅などを語る文章に始終惹き込まれた。名刺入れを失くし、遠足に出かけるようにうきうき取りに行くまでの過程と、自分の中での納得からの幸せな気分での家路を描く「奈良青天」が心愉しく微笑ましい。菊池寛と志賀直哉の関係にふれた文章も忘れ難く、ときに手厳しくも敬愛の思いが結ぶ文士らしい関係を語る文章に感じ入った。『暗夜行路』掲載までのエピソード、『真珠夫人』を話題にする人々に出会う光景も、その時代の空気が伝わってくる。里見弴、遠藤周作に纏わる話も印象的。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
文章の余韻に心掴まれて、一編読むごとに嗚呼と浸り込む至福の時があった。すべてを描かない余白。解釈を委ねられている心地良さに物語の奥行きを思った。様々なアプローチで魅せ、独白も、人の意識が流れてゆく様も、そこにある心の機微、他者の視線の先を見留め、知りながら人知れず小さく傷つく者の姿も逃さない。細やかな揺らぎを文章の中に感じながら、読む自分の心の動きも追っている。そうして読みながら疼く感情を其処彼処に見つけ、そのたびに惹きつけられてゆく。気づかずに流れてゆく意識の行方と共に投げ出されたその先を巡らせていた。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
思わず愛しくなる主人公の眼差しに惹きつけられ、夏を共に過ごした心地でいる。言葉も山中の集落も若き日に置かれた境遇も、近くも懐かしい、親しい記憶を呼び起こすように疼き、物語をまるごと抱き留める思いになった。大人にならざるを得ない状況下で、それでもまだどうにもならない未熟さ、無力さ、どうしたって人の中に見つけてしまう驕りも、手を握る相手がいなくとも、心強く感じられるものを求める思いにも、切なく共感する。名づけようもないソレとの対峙は、護られるべきものが大切に護られる、在るべき一つのかたちだったのかもしれない。
が「ナイス!」と言っています。
ましろ
理解のその先を感じる、心通う評伝を読んだ。作品と出会い、その人生にふれることで見えてくるもの、ときに通じ合うことで友にもなれる、読書の醍醐味を改めて思う。漂泊者として追い求めた妥協のない姿、ヴァージニア・ウルフとの友情、作品に残る面影、献身的に尽くしたアイダの存在、望み通り夫マリに見送られての最期、書き手としての矜持。大きな幸福を感じ取りながらも、多くの幻滅もする。その繰り返しもまた人生の一面として印象的。危険をかきわけて進み、代償を払い、経験を作品に活かす。嗚呼と寄り添う思いでその生涯と作品を巡らせた。
が「ナイス!」と言っています。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2008/07/21(5753日経過)
記録初日
2004/09/24(7149日経過)
読んだ本
3661冊(1日平均0.51冊)
読んだページ
790199ページ(1日平均110ページ)
感想・レビュー
1451件(投稿率39.6%)
本棚
34棚
自己紹介

あくまでも自分のための記録、読みたい本の管理の場として。ただただ黙々と、興味のままに読み耽る愉しみ。日々の慰め、その繰り返し。
無理なく気持ちの赴くままに、レビューは書いたり、書かなかったり。

*

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