コロナ禍ということで読み始めた角川版漱石全集。先月は三冊を読んで、欠巻と別冊を除いて全巻読んだ。まさかコロナ禍がこんなに続くとは想像だにしなかった。その分、読書は充実したが。先月は豪雪で孤軍奮闘の除雪。腰や腕を傷めてしまった。 2021年1月の読書メーター 読んだ本の数:12冊 読んだページ数:4782ページ ナイス数:8799ナイス ★先月に読んだ本一覧はこちら→ https://bookmeter.com/users/556130/summary/monthly
ちなみに、題名の「ヒエロニムス・ボスのオレンジ」だが、有名な「天国と地獄」や「最後の審判」のグロテスクで幻想的な世界とは違って、「至福千年」は楽園を描いていて、訳者によると「ミラーはそこにボスの魔術的ビジョンを、「現象的世界を透視し、それを透明にし、かくて原初のすがたをあらわにし」た異様なリアリティを発見した」という。ミラーはボスの絵に感じたオレンジとは?
本書の最後でミラーは、「この驚くべき土地を見たとき、ぼくはひそかに思った――「ここならば平和が見いだせるだろう。ここならばおれがやるべく定められた仕事をする力を見いだすだろう」と書いている。
フィクションの形を借りた自叙伝。訳者によれば、「作者の小説作法は、自らの体験を誇張したり、虚構化したりすることをできる限り避け、ありのままの真実をきわめて正直に書き綴るというもの」。登場人物の名前は実名でないが、あとはほぼ事実の叙述に終始している。簡単なようで実に難しい。しかも、読む手を止めさせない無類の面白さ。ブコウスキーという酒と喧嘩と女。全編酒と喧嘩と言っていい。
こんな本に古書店で出会うというのも、何かの縁なのだろうか。教育上いいとは言い難い内容から文部省推薦図書にはなりえないが、並の微温的な小説に飽き足らない文学好きなら、とっくに知悉している作家なのだろう。
『出雲国風土記』の時代、幕末に出雲を旅した和四郎、その和四郎の足跡を彼の日記を手に旅した十数年前の出雲(本書は2005年の刊)、そして仮に今、旅したとしたら、四つの時代の出雲を訪ねることになる。失われた神社もあるようだ。干拓などで地形自体変貌している。それでも、神主さんら関係者が懸命に地道に古来の事績を保っておられる。こうした本や旅の試みは貴重だ。
欧米の思想や文化に影響を受ける前の中国は、欧米にとってもだが、中国の民にとっても、科学的観察や分析の及ぶ前の秘境であり幻想の世界であり、奇譚の巣窟だった。人間の想像力の限りを尽くしてきた。まさに、「中国の幻想・綺譚の世界に遊ぶ夢と幻の博物誌」といった書。
本には著者のプロフィールが書いてなかった: 「中野 美代子(1933年3月4日 - )は、日本の中国文学者、作家。北海道大学文学部、言語文化部教授を経て、北海道大学名誉教授。『西遊記』などの中国文学、中国文化をテーマに、論考・エッセイを多数発表。」 存命?
波乱に満ちた人生だが、晩年は女性であることへの偏見差別も含め、一層険しいものとなった。主著「沈黙の春」は、出版前から話題沸騰 騒然。害虫駆除の薬剤の無節操な散布がもたらす健康被害や自然の動植物被害に端を発しての環境への関心の高まり、化学薬剤への警戒感。本の歓迎の一方で、化学薬品業界からの猛烈な反撃。渦中のレイチェルは、癌が末期症状に。成功の喜びと迫る死との狭間に何を思うか。
「主人公に負けず劣らず奇矯な教師との絡みが波乱含みの予感」と書いたが、下巻では、まさに波乱そのもの。呆気にとられる展開。プロテスタントとローマカトリックとの相克もあって、安直な仏教徒の吾輩には理解など及ばない宗教的煩悶も読みどころ。詳しくは書かないが、本書は読み手によって評価がはっきり分かれるに違いない。吾輩も途中で、ストーリーテラーならもう少しうまく話を展開させるんじゃないかと疑問めいた感懐も抱いたほど。だが、それはとんでもない勘違い。底の浅い理解に過ぎない。
シャーロット・ブロンテ(の「ジェイン・エア」)ファンの吾輩は、小説の主人公というより、まさにシャーロット自身に限りなく迫っているようで、忘れがたい読書体験となった。個々の場面での情景描写は、現代文学でも並び立つ世界は得難いのではなかろうか。
クリスティーヌ=レヴィ(ボルドー第三大学教授)が幸徳秋水の『二十世紀之怪物帝国主義』をフランス語に翻訳して紹介してくれたのですが、彼女は幸徳の友人である堺利彦が大逆事件後の冬の時代においてもなお売文社という行き場のない社会主義者たちを集めて政治色のない機関誌を発刊していたんですね、それについて「(特高がいるから活動が)できないからやらない」のではなく「できなくてもやる」という分析をしていました。やいっちさんのおっしゃる通り勇気も正義感も事件を生き抜いた者としての使命感もあったんでしょうね。
おにくさん コメント ありがとうございます。ロシアとかミャンマー、香港など、政府の圧政に命を賭して闘っている人達の活動。明治から戦前戦中での日本の嘗ての姿や歴史を重ねて見てしまいます。今の日本も右傾化してキナ臭いと感じています。だからこその関連書読みです。
「『唐詩選』は、明の李攀竜が編纂したといわれる唐代の漢詩選集」だが、日本人に親しまれるのもこちらのほう。但し、著者によると、「初唐と盛唐に重点が置かれ過ぎて、中唐の白居易などは一首も収録されていない」という。他にもいろんなアンソロジーがあるが、本書はまさに著者の性格と好みの現れであると、自身があとがきで認めている。
本文を通読してみてレベル高過ぎが正直なところ。常識的な唐詩は自家薬籠してないと味読は出来ない。我輩は、苦読にもならんかった。でも、意地で通読したの。何が残った? ま、雰囲気だけでも味わえて良かったと思いたい。
この辺りのことは一昨日も書いた:「ここに孤独の理解者がいる」 http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/2021/02/post-4a1100.html
読むこと、書くこと、居眠りすることが好き。
読書範囲は、哲学や文学から物理学や天文学、生物学、古代史、考古学、絵画や音楽と幅広く。
苦手なのは、法律やマニュアル本など。
自分で小説やエッセイを書いたりしてます。
旅行やグルメ、スポーツ、コンサートも楽しみたいけど、こっちはなかなか実現しない。
外部ブログも15年以上になります:
日々の日記:「壺中山紫庵」 http://atky.cocolog-nifty.com/bushou/
創作の館:「壺中方丈庵」 http://atky.cocolog-nifty.com/houjo/
この機能をご利用になるには会員登録(無料)のうえ、ログインする必要があります。
会員登録すると読んだ本の管理や、感想・レビューの投稿などが行なえます
やいっちさん。『タタール人の砂漠』も読んでみます( ̄ー ̄)b