鯨の岬と東陬遺事（とうすういじ）の二部の短編作。 鯨の岬は、これまでの人生を積み重ねて何気ない日常を過ごす中で、誰もが有していると思う心の空虚感を埋めようと、老年期の奈津子が、幼少期を過ごした町をふいに思い立って訪れる中で、自分の心の中で封印していた恐ろしい思い出が蘇るというストーリー。話の展開が意外すぎて、やはりこの作者の才能の一端に触れた思いがしました。 東陬遺事は、タイトルも難しいですが、厳しい自然の中で生き抜く厳しさを扱ったと思われます。賞を取ってますが私には刺さらず。ちょっと難しかったです。

颶風の王、タイトルからは少しもイメージが湧きませんが、読み終えるととてもしっくり心の中で収まった気がします。颶風という言葉自体わかりませんでしたが、『ともぐい』の作者で私の好きな三浦綾子文学賞受賞作品という事で出会えた本ですが、非常に感銘を受けました。曽祖母の時代から馬に関わる壮絶な人生を歩んできた一家が、人馬ともに世代を超え、深い絆で結ばれているという流れですが、文章表現も緻密で情景が映画のシーンのように浮かび上がるようでした。非常に素晴らしくお勧めします。作者の経歴に羊飼いとあったのが更に驚きでした。