
あまり役に立つことをしない男ばかり出てくる。売れない花火師、詩人、教養博士、資源ゴミ転売、年中車の下に潜り込んで機械をいじってはダメにしてしまう男がいちばん面白かった。市井の人々といってもややワイルドな連中だが、戦前の植民地時代はまだ世の中アバウトだったのかな?個人的には苦手な分野だが慣れると読める。
さすがに賢者と言われるだけあってユダヤ教徒ナータンは、ユダヤ教ばかりでなくキリスト教・イスラム教も、宗教の構造というものは同じであるという寛容な態度である。ここには作者レッシングの周辺他宗教も踏まえて全ての宗教を対象化してとらえる優れた視点があり、現在の我々読者から見ても清々しい思いだ。
統治者であるイスラム教徒サルタンも理解ある柔軟な人間。一人興奮しているのがテンプル騎士団の青年騎士で、彼の揺れ動く心がドラマを面白くしているようなものだ。その他、托鉢層や修道士など各派フリーな立場の人間がいい味出している。エルサレムはやはり多様性を尊ぶ寛容な街であってほしい。
もともとお転婆で、村人からは悪魔の如く蔑視されていた少女ファデット。本当は愛に溢れた賢い彼女が、はたして幸せになれるか心配でハラハラしながら読んだ。素直で清冽な10代の少年少女たちの細やかな心の動きを、わかりやすい表現で描いていて快感を得た。昭和34年の訳文だが充分に現代的で驚いた。
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もともとお転婆で、村人からは悪魔の如く蔑視されていた少女ファデット。本当は愛に溢れた賢い彼女が、はたして幸せになれるか心配でハラハラしながら読んだ。素直で清冽な10代の少年少女たちの細やかな心の動きを、わかりやすい表現で描いていて快感を得た。昭和34年の訳文だが充分に現代的で驚いた。