手記やルポルタージュ、ネット掲示板の書き込みといった断片的な文書から、とある地域にまつわる怪談を追う形式のホラー小説。もともとホラーに興味がないせいか、読んでいても今一つピンとこなかった。

手記やルポルタージュ、ネット掲示板の書き込みといった断片的な文書から、とある地域にまつわる怪談を追う形式のホラー小説。もともとホラーに興味がないせいか、読んでいても今一つピンとこなかった。

1880年代(光緒年間)の香港を舞台としたシャーロック・ホームズのパスティーシュ。主人公は胡琴と阿片をこよなく愛する満洲旗人の福邇。当時の欧化しつつある香港の、ホームズが活躍したロンドンを思わせる異国情緒と、清朝を取り巻く国際情勢とが上手く重なって一種の時代劇としても読める。

民主党時代から枝野議員を追いかけてきた毎日新聞記者による枝野氏のインタビューを収録。政策や理念については『枝野ビジョン』により詳しいが、本書では立憲民主党結成時や今までの代表選での動向について触れられている。昨年の代表選で吉田晴美氏が消費減税を訴えたことで、かえって枝野氏が自ら掲げる給付付き税額控除について説明する場面が増えて浸透しやすくなったこと、党内右派とされる野田氏が選択的夫婦別姓導入のような左派的な政策を掲げることに意味がある、という考え方は、そういう見方もあるのか、と勉強になった。

谷垣氏は加藤の乱のときに森内閣不信任決議に賛成の意を示した加藤紘一氏を涙ながらに説得しようとしたことや、野党時代の自民党総裁として党を空中分解させずにまとめ上げたことが印象的で、学ぶところがあると思って読んだ。代表を務めた宏池会らしい、保守的だが頑迷ではなく合意形成を重んじる誠実な政治家という印象を受けた。政治資金、自助・公助・共助、派閥政治といった事柄には賛成できない面もあるが、自身の豊富な経験に裏打ちされた理論には一定の説得力があった。あと野田代表(当時は総理)への評価が高い。

完結巻も読み応え抜群。ある事件から敵と味方が入れ替わり、朱瞻基たちの壮絶極まる帰還劇は続く。朱瞻基が後の宣徳帝であることを知っていた身としては、黒幕はあの人物という気はしていたが、最終盤での展開には度肝を抜かれた。糾える縄のように複雑に絡み合った運命が絡み合う壮大な物語であることは承知していたが、こういう展開になるとは思っていなかった。蘇荊渓にまつわる諸々のエピソードに作者の現代の作家としての価値観や問題意識が色濃く投影されているように思う。

時間がかかったけど今年一発目。南京に向かった明朝の皇太子・朱瞻基が乗った船が何者かに爆破される事件が起き、混乱の中、父である洪煕帝の容態の悪化が報じられたことで、北京への期間を余儀なくされる。タイムリミットは十五日。まだ話はこれからだが、一癖も二癖もある登場人物、三国志をはじめとした中国史・中国古典要素、緊迫する逃避行や壮大な冒険、当時の民衆社会や生活やおいしそうな料理の描写、と自分好みの要素全部盛りという感じで、今後も目が離せない。