⇒浦和市郊外の別所沼のほとりに、その小さな5坪ばかりの家は佇んでいた。詩人の詩に多く現れる「やさしさ」や「しあはせ」という言葉を具現化したような、詩人の夢の結晶のような、明るく心地よい空間であった。 「建築は凍れる音楽」という言葉があるが、大学で建築を学んだ立原道造のソネット形式の詩は、詩集の題名のように、優しく穏やかな旋律が全体を包んでいる。信州軽井沢の豊かな自然の中で作られた、多幸感に満ちた詩も多く、優美で可憐な詩風は一見星菫派のように見える。しかし、生きる意味を問うような詩も時折現れ、
⇒ため息の出そうな美麗な写真に目が奪われがちになるが、様々な言葉は決して添え物ではなく、それ自体が光を放っている。とりわけ、沖縄で長く大切に受け継がれてきた「黄金言葉(くがにくとぅば)」は、琉球、沖縄の長い苦難の歴史の荒波を、悲しみを乗り越えてきた人びとの優しく、しなやかな強靭さを感じさせる。 「苦(くる)しみぬ水(みじ)ん 飲(ぬ)でぃぬ後(あとぅ)からどぅ 楽(たぬ)しみぬ水(みじ)ん 味(あじ)や知(し)ゆる」
「苦しみの水を飲んで(人生の苦労を経験して)、初めて、本当の喜びや楽しさの水の味を知ることができます」 「なんくるないさ」の本当の意味を記してくれているのも嬉しい。沖縄のおじいやおばあから受け継がれる言葉は、いついつまでも輝き、次代を生きる人びとの進む道を照らし続けるのだろう。 「真(まくとぅ)そーけー なんくるないさ」(人として正しい行いをしていれば、自然となるようになる。)
国内外の小説、詩、短歌、俳句など幅広く好きです。歴史や美術、社会科学にも興味があります。
最近は、辻邦生、宮沢賢治、丸谷才一、須賀敦子、藤沢周平、柴田元幸などをよく読んでいます。
心あたたまり、人生を豊かにしてくれるような本との出会いを、これからも大切にしていきたいです。
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⇒浦和市郊外の別所沼のほとりに、その小さな5坪ばかりの家は佇んでいた。詩人の詩に多く現れる「やさしさ」や「しあはせ」という言葉を具現化したような、詩人の夢の結晶のような、明るく心地よい空間であった。 「建築は凍れる音楽」という言葉があるが、大学で建築を学んだ立原道造のソネット形式の詩は、詩集の題名のように、優しく穏やかな旋律が全体を包んでいる。信州軽井沢の豊かな自然の中で作られた、多幸感に満ちた詩も多く、優美で可憐な詩風は一見星菫派のように見える。しかし、生きる意味を問うような詩も時折現れ、