ぼくはミステリーやホラーはあまり読まないし、この作家さんも１冊読んだだけだ。それでも、この短編集の質の高い濃密さは好きだ。謎めいた筋立てやひたひたと迫って来る恐怖もある。それだけでなく人物の造形や物語の語らせ方もとても巧みで、たやすく引き込まれてしまう。 中でも、「玉野五十鈴の誉れ」の最後の一行の怖さ、ここまで持ってくる上手さと言ったら。

ぼくはミステリーやホラーはあまり読まないし、この作家さんも１冊読んだだけだ。それでも、この短編集の質の高い濃密さは好きだ。謎めいた筋立てやひたひたと迫って来る恐怖もある。それだけでなく人物の造形や物語の語らせ方もとても巧みで、たやすく引き込まれてしまう。 中でも、「玉野五十鈴の誉れ」の最後の一行の怖さ、ここまで持ってくる上手さと言ったら。

我が身の筋肉を意識しながら読んでしまう筋肉小説。まず、指導者のO島やＴ井が登場した時、自動的に男性をイメージしたことを告白して懺悔します。 まさにこういうバイアスのない、筋肉だけが正義の筋トレに励み競技に臨む女性。でも現実はね、ということで弾けます。主人公の内面語りもツボ。筋トレのマニアックな蘊蓄だけでもとても面白い。自分がやったら血圧が上がって怖いことになりそうだけど。

大河ドラマは全く見ておりません。源氏物語に取り憑かれた編集者・ライター達が学問的研究や先人作家の考察を紹介。以下、印象的な内容：紫式部の手による源氏物語は存在しない。我々が読んでいるのは後世の人間が多くの写本から復元したもの（の一つ）。そもそも紫式部が作者だという決定的証拠はない。構成、文体などに違いがあり、写本が繰り返される中で複数の書き手が参加か。紫の上系とされる巻だけでお伽話として成り立つ。賛否あるものの、これに玉鬘系と呼ばれる巻が後に挿入されたとする説。匂宮三帖、宇治十帖はそれまでと異質。etc

作者の分身だろう自称長女の次男がいい人なのはご愛嬌として、長男も三男も変わらずダメ人間で都合よく改心したりしないところが現実的で清々しい。 70年連れ添い、夫の介護を受け車椅子でニコニコしているからといってそれまでの妻の心がずっと平穏であったはずはない。義母の心ない言葉や仕事中心の家庭生活に対する恨みはしこりとなる。それが意固地なまでの財産の取り分に対する執着だったんだろう。 最後の「反乱」は僕だったら寂しいな。奥さんは幸せだったんだろうか。

源氏物語って女性の人格人権無視の無節操男の物語だし？平安時代の女性が夢中になり、令和の女性にも受け入れられる心理がよくわからなかった。 酒井さんによれば、光源氏を狂言回しにして紫式部は自分の湿った欲望を紙の上に吐き出したのだとか（ざっくり）。それは「今を生きる私達の中にも、確実に存在するもの」だそう。なるほど。若干、牽強付会のところはありそうですが納得しました。