すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

すべての見えない光の感想・レビュー(259)

第二次世界対戦下のドイツとフランス。命がけで送られるラジオ電波が若きナチス兵と盲目の少女を結びつける。この作品がTwitter文学賞海外文学部門で1位を獲得したのは、苦境の中でも他者の声を聞こうとし、点字や朗読で海外の冒険を求め、遠く広がる地に思いを馳せる海外文学愛のようなものがこの作品自体に満ちているからでもあるだろう。フランス語放送を理解してドイツの振る舞いの見直しを兄ヴェルナーにせまる妹ユッタが印象的。個人が命がけでもなく簡単に情報をやりとりできるこの時代に、この作品が広く読まれていることが嬉しい。
★24 - コメント(0) - 3月26日

ふたりのほんのわずかな邂逅、そこへ至るまでの長い長い積み重ねからは、音や匂い、味や手触りまでがありありと感じられ、文章の力にただ打ちのめされた。
★10 - コメント(0) - 3月21日

われわれは何故ここに存在しているのか・・たった一つの細胞として、埃の粒よりも小さな生を受ける。物質は変化し、原始が流入しては流出し、分子が回転、タンパク質が結合し、ミトコンドリアの酸化還元反応で極小の電子の群れとして生を始める。六兆個の細胞が母親の産道という万力で産声をあげ世界は始まる。エンテロピー、ジュール・ヴェルヌ、科学と文学を融合させた言葉が、口の中を昇る太陽のように光を放ち、音、味、匂いに包まれ、想像力のシロップでいっぱいになった。五感で読む戦争文学。『私の靴が見つからないの』邂逅の場面は白眉。⇒
★61 - コメント(7) - 3月20日

噂に違わぬ傑作。特にマリーロールのパートのダイアモンドが絡むところは、緊迫感があってハラハラしつつも面白かった。エティエンヌ叔父さんがマリーのために家を出るあたりはちょっと泣いてしまった。そして少年と少女の一瞬の邂逅がとても印象的で素晴らしい。ドーアの他の2冊も読んでみたいと思う。
★16 - コメント(0) - 3月20日

「目を開けて、その目が永遠に閉じてしまう前に、できるかぎりのものを見ておくんだ。」 すべての見えない光とは何か。戦時下と戦後において人びとが知覚する光の領域は全く異なるのではないかと思う。戦争というものは、ある一部の領域だけを可視化し、ヴェルナーの視界もまた狭められていく。しかし、彼が瓦礫の下で「海底二万マイル」を聞いたとき、サン・マロの背の高い家の最上階で盲目の少女と無線機を見つけたとき、そして、少女と桃の缶詰を分け合ったとき、ユッタと2人フランス語の科学のレクチャーのラジオを聴いていた頃のように、
★35 - コメント(2) - 3月20日

マリー=ロールとヴェルナーが、パン屋までの道で、すれ違うシーン。打ちのめされる本だ。
★3 - コメント(0) - 3月19日

『All the Light We Cannot See』光、それは私たちにとって守るべきもの。生きてゆくための希望、誇り、愛、友情、そして恋。物語は途中幾度も時空を行きつ戻りつして読者を誘う。重層的に広がり、収束して深まってゆく世界。その中心にいるのは、盲目の少女マリー・ロールと、孤児でナチスの技術兵となった少年ヴェルナー、伝説の宝石〈炎の海〉。舞台は戦火の広がるフランス。全く異なった境遇の二人が、音によってつながる。奇跡の邂逅は、しかし儚い。精緻な構成、哀切な調べを奏でる繊細で美しい文章。まさに傑作。
★91 - コメント(5) - 3月17日

溜息。雑音のない場所で少しずつ読み進めた。 抑えた筆致で交互に描かれる少年と少女の物語は段々と距離と時間が近づいてゆく。終盤はとてもスリリングだった。戦時下の物語で、戦争の空気感や景色は背景に色濃く感じられるけれど、あくまでも緻密に重ねられる一日一日が主役だと感じた。読み終えて、とても贅沢な気持ち。凄く良かった。
★14 - コメント(2) - 3月14日

孤児院で育ち、その才能を活かすためにナチスドイツの技術兵となった少年ヴェルナー。パリの博物館に勤めていた父と共に、サン・マロへ逃れて来た盲目の少女マリー。第二次世界大戦下のフランスで、本来であれば交わるはずもなかった二人の運命は、ラジオという存在によって導かれ、ほんの一瞬だけ重なる。それまで交互に、じれったくなるほどに少しずつ描かれてきた二人の物語は、きっとその一瞬のためにあった。そう思わずにはいられないほど、二人のほんの一瞬の邂逅はどこまでも美しくて、切ない。静かな余韻も残る一冊。
★40 - コメント(0) - 3月14日

孤児でラジオの分解修理が得意だったヴェルナーはドイツ軍の兵士になり、盲目の少女マリーは隠れて音声を流す風変わりな叔父とフランスで暮らす。交互に描かれる彼らの暮らしや環境は決して交わる事がないはずなのに、叔父と共に流した音楽や言葉に導かれ、ほんの一瞬の邂逅の瞬間が訪れる。訳もテンポも繊細ですべてが美しい一冊。
★20 - コメント(0) - 3月14日

描写であっても、過去形が一切出てこない、独特で素晴らしい訳文でした。ヴェルナーもマリー=ロールも、過酷な環境にありながら、大人から存在まるごと愛してもらった経験を持ち、科学の美しさに惹かれたという経験が共通しているのが印象的です。1944年8月7日サン・マロ。一瞬の邂逅の場面がただただ美しく、読み終えてもしばらくの間、何も手につきませんでした。
★35 - コメント(0) - 3月12日

独特の文体なのと、ところどころに見慣れない言葉が出てきて、正直、読むのに骨が折れる。長い!でも、読んでよかった。ナチスドイツの時代の残忍さを描いているにも関わらず、純真な登場人物たちのひたむきな生き方に心が洗われる。
★6 - コメント(0) - 3月12日

第二次世界大戦でのドイツ青年兵士と、フランスの盲目の少女の物語。とにかく文章が美しい。主人公二人の物語が交互に進むテンポも抜群。戦争の悲惨さだけでなく、登場人物たちの生き生きとしたさまが伝わってくるのが良かった。ラジオを「この世の空気には言葉が混ざってる」って表現が素敵。
★14 - コメント(0) - 3月9日

kuu
マリー=ロールとヴェルナーの距離が少しずつ近づいていくことが感じられる文章がとても美しい。過酷な状況下でも希望を失わないマリー。盲目であることも助けとなっていたのだろうか。感性が鋭いし、聡明だ。 二人がそうとは知らずにラジオによって言葉と音楽でつながっていたというのもいいなぁ。 ヴェルナーの妹から渡された模型の中から鍵が出てきた時には、ぐっときた。彼の死は?苦しい状態から逃れるためだけではなかったと信じたい。 好奇心の旺盛さは、長生きさせるのだな。マリーと現代っ子の孫との接し方が印象的だ。読めてよかった。
★14 - コメント(0) - 3月5日

網膜には光を感じる視細胞があり、そこで光の刺激が大脳に伝わり、はじめて物が「見える」。「光を感じる」という、全盲と思われる主人公の少女の体の機能ができないことが、彼女の心はできる。大きな歴史のうねりの中で、「少年が少女に出会う」その一瞬の奇跡のための犠牲や痛みをともなうこの物語は、美しいだけでなく悲惨でもある。物語を読み切るのをこれほどせつなく思ったものは久しぶりだ。もちろんまごうことなき傑作である。アメリカで書かれた、フランスとドイツの第二次世界大戦の話を日本で自分が読めるのもちょっとした奇跡だろう。
★24 - コメント(0) - 3月5日

もっと二人が一緒に過ごすシーンが読みたかった。
★5 - コメント(0) - 2月28日

『「・・知っていますかね」マネック夫人は台所の反対側から言う。「沸いているお湯にカエルを入れたらどうなるか」・・「カエルは飛ぴでてくるんですよ。だけど、冷たい水の鍋にカエルを入れて、ゆっくりと沸かしていったらどうなるか知っていますか? ・・」マリー=ロールは待った。ジャガイモから湯気が出る。マネック夫人は言う。「カエルは煮えるんですよ」(p290)』ゆでガエルになると知識としては知ってはいるが、さて、いつ飛び出すか判断するのは現実にはちと難しい。この本は、ゆでガエルにはならなかった人達の物語。
★9 - コメント(0) - 2月26日

途中何回も考えさせられる場面があった。難しいなと感じることもあったけど、良かった。断章的な文体は初めて読んだけど、思ったよりも状況がわかりやすかった。けれど、ここでまた前年度に戻るのか!きになるのに!となる場面もあって、そわそわするところも(笑) ヴェルナーの最後に少し疑問だった。どうして自分からあの行動をしたのか…?炎の海はどうなったのか? 少し長かったように感じたけれど、存分にアンソニードーアの伝えたいことを感じられたのかなと思う。
★10 - コメント(0) - 2月25日

ああ、一気に読んでしまった。散りばめられた光、うまいなあ。素晴らしい音と匂いと感触と見えない素晴らしい音波の世界。太字って原文も太字なのかな?
★11 - コメント(0) - 2月19日

Anthony Doerr1973年米オハイオ州生まれ。?の終わり方に,ニキータ・ミハルコフのコトフを重ねてしまい悲しかった。戦争で亡くなった兄に向け放送された北部フランスからのラジオ放送を,ドイツの炭鉱の町で聞いていた兄妹。パリ博物館から持ち出されたブルーダイヤは,気の遠くなるような時間を紡ぎ出し,人間の営みすらモノクロ写真に封じ込めてしまう。マリー・ロールの周囲だけがアクセントされることを許される。
★13 - コメント(0) - 2月18日

戦時下ものは辛くて、いつももう読むまいと思うのに、彼の他の作品がとてもよかったので、読まないわけにはいかない。読み始めたら、どんどん惹きこまれてやめられなくなった。独特の表現と描写が美しい。なるほど、最後の余韻がジュール・ヴェルヌみたい。
★9 - コメント(0) - 2月14日

この時期を舞台にした作品は「朗読者」が好みだったが、また素晴らしい作品に遭遇。装丁のムードが作品の背景に終始漂い、筆者ドーアの独特ともいえる詩的文体と相まって、絵を読み解く世界に漂える。かなりボリュームがある為 咀嚼し辛い感じだったが、登場人物の明確な設定のお陰か、容易に気持ちが溶け込んでいけた~マリー・ヴェルナ―・豊かな感性が素敵な妹のユッタ・慈愛に満ちたエレナ先生・・。個人的にはマネック夫人に惹かれた。1944年8月7日に破壊されたサン・マロ~そこから広がる展開の情景の感想が拙過ぎる私には書き尽せない
★66 - コメント(1) - 2月12日

光を失った少女と、兵士となった少年。目の前に敷かれた運命の一本道を、彼らは歩むほかない。狭く険しく光の差さない道だとしても。鍵の束を、標本の貝殻を、桃の缶詰を、手で触れ、形を感じ、物語る。裸足がとらえる台所のタイルの数、指先がなぞる冒険小説。彼が彼女の目となり、彼女が彼の希望となったその日。過去と現在、此方と彼方、小さなつまみで合わせるラジオの周波数のように、幾つもの断片が紡ぐ淡い世界に何度も胸が塞がれる。しかしそれでもなお光を見出そうとする健気さに私は救われた。静かな光に包まれ続けた邂逅の読書だった。
★188 - コメント(10) - 2月11日

戦時下のフランスで、ヴェルナーというドイツ兵とマリー=ロールというフランスの盲目の少女のお話し。ラジオから聞こえる音や声が、二人の心を奇跡的につなぎます。ヴェルナーは、敵の国の少女マリーを助けて、別れます。美しい文章で、表紙の写真もよかったです。戦争とか内戦、テロ いつかなくなる日がくるのかなあ、なくなる日が来て欲しいです。
★37 - コメント(0) - 2月11日

‪昨夜やっと読み終える。戦争の動きがわかるから、ふたりの行く先を考えて途中でページをめくれないこともあったけど、心に残るのは巻貝の感触や海の匂いや優しさや美しい瞬間だった。時系列も、マリー=ロールとヴェルナーの人生がどんどん近づいていく緊張感。ふたりの人生が重なる瞬間、缶詰の桃。輝いているシーンを何度も読み返している。‬訳もとても美しいと思う。ヴェルナーはきっと幸せだったはず。
★12 - コメント(0) - 2月9日

この作品は間違いなく反戦を訴えていると思いました。少女と少年の奇跡的かつ束の間の出会いに心が揺さぶられるのですが、ナチの暴虐によって登場人物は一人またひとりとひっそりと表舞台から消えていく事実に胸が痛みました。物語の進行はどの場面も暗示的で緊張感に満ちています。久しぶりに充分な満足感に浸りました。
★23 - コメント(0) - 2月9日

なんと、美しい……。
★6 - コメント(0) - 2月9日

すべての章が詩的に満ちていて読むだけで心が洗われるような気分に浸ることができました。 何回読んでも飽きないストーリーも魅力です。
★10 - コメント(0) - 2月5日

2015年のピューリッツァー賞(フィクション部門)受賞作品。第二次世界大戦下のフランス北西部のサン・マロの町、盲目の少女マリー=ロールとヒトラーユーゲントの少年ヴェルナーが出会うまでの人生の軌跡が交互に語られる。「子どもたちよ、もちろん脳はまったくの暗闇のなかに閉じ込められているよね。脳は頭蓋骨の内部で透明な液体のなかに浮いていて、光が当たることはない。それでも、脳が作り上げる世界は光に満ちている」――この物語の世界に酔いしれよう!
★101 - コメント(0) - 2月5日

今年読めて本当に良かった一冊。一つ一つの丁寧で美しい描写の余韻がまだ残ってる。アンソニー・ドーア『すべての見えない光』(新潮社) #wtb7
★9 - コメント(0) - 1月29日

過去と未来を行き来する無数のエピソードが、入れ子細工のように人々の日常を組み上げてゆく。戦争という狂気のなかでさえ、前を向きたゆまず歩む人間性が、瑞々しい余韻の連なりで織り上げられる。抒情に溢れるサスペンス、それとも愛か。一瞬先を見るために、文字を読み続ける。
★26 - コメント(0) - 1月27日

読み進めるのに時間が掛かったが素晴らしかった。散りばめられた断章が2人の邂逅へと行き着く流れは面白く、2人の短い邂逅があまりにも尊くてその後のエピソードが蛇足に思えた。
★9 - コメント(0) - 1月27日

第二次大戦下、目の見えないフランス人の少女と孤児院で育ち工学で才能を見せるドイツ人の少年。緻密な構成と感情を抑えた筆致で描かれており、だからこそ一瞬とも言える二人の出会いが輝いてみえた。
★26 - コメント(0) - 1月24日

km
綺麗な物語でした。フレデリックとフォルクハイマーの対比、同じように優しく、自由な精神を持つ二人が、一人は破壊され、一人は破壊することを選んだこと。ある国でエントロピーを減少させるには、ある国のエントロピーを増加させる他ない。ウェルナーは戦争の不条理を前に、それを眺めることしかできない。しかし、恋が彼に一歩を踏み出させる。おまえはどこまでやれるかな?ユッテとマリー=ロール、夫人らの女の強さも印象に残った。僕はフォルクハイマーと大叔父がお気に入りです。精密に計算された、オーケストラのような美しい本です
★31 - コメント(1) - 1月22日

児童書を主として読んでいたので、チョット集中して読めなかった。けれど、どんな風に結末を迎えるのかドキドキしました。親よりチョット若いドイツ兵、しかも同じ通信に係わった少年。フランスの盲目の少女。おじや祖父が通信をしていた事もあり、見えない光が電波を通して繋がる不思議。年代が行ったり来たりで、読みづらかったが、少年少女の家族愛に救われた。ダイヤの魔力にも人間の欲望を突き付けられた。
★25 - コメント(0) - 1月21日

★★★
★1 - コメント(0) - 1月21日

読み終わってから、感想を書くまでに時間を要する本だった。本を読む時、その世界にどっぷりはまらない私がページを開く度に時空を超えてその世界の中に生きていたから。第二次世界大戦中のフランスで盲目になった少女とドイツの技術兵になった少年の聡明さ、優しさ、勇敢さで「自分の人生を生きよう」とする強さが胸を打つ。保持者は永遠の命を得るが、その欲望の業火で周りの人間を死に追いやるダイヤのモチーフは、その保持者の権力が強い程、欲望が大きい程悲劇を生む。まるで戦争のように。純粋な彼らたちの唯一の望みは、彼らの家族の幸せだけ
★16 - コメント(1) - 1月21日

これを良作と呼ばずして何と呼べば良い。美しい。1944年8月の、ドイツ占領下サン・マロをアメリカ軍が襲撃していた日を、1人の盲目の少女と若きドイツ兵の視点で描き、彼らの生い立ちなどを語り繋いでいく。時系列があちこちするがその並べ方が素晴らしいのだと思う。1944年のサン・マロに焦点を読者に合わせさせるために計算された文章だ。そして、私にはこの藤井光という訳者が、とても性に合う。思うに、下地になったのは「エリコの(城)壁」ではないだろうか。
★70 - コメント(0) - 1月17日

本当に美しくて、悲しくて、緻密な小説です。手強かったです。
★8 - コメント(0) - 1月17日

小説を読む時、私たちはある意味盲目なのではないか?勿論、文字は見えるが、記号の集合体が描き出す光景は目に映らない。見えないだけでなく、聞こえない、触れない、臭わない。読書とは、感覚全てを想像力に委ねる体験だ。盲目のフランス人少女と機械好きのナチス兵少年のあまりに細やかな交流は、読者のイメージの中で固い絆へと転じる。彼らと共にラジオに耳を澄ませ、街の模型の手触りを感じ、缶詰の桃を味わう。棘や針が細部で呼応し、想像上の肌がチクッと痛む。そして、読み終わった後も痛みは残る。描写への揺るぎない信頼が生んだ力作。
★22 - コメント(0) - 1月16日

すべての見えない光の 評価:100 感想・レビュー:148
ログイン新規登録(無料)