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2024年4月の読書メーターまとめ

きぬりん
読んだ本
8
読んだページ
1494ページ
感想・レビュー
8
ナイス
11ナイス

2024年4月に読んだ本
8

2024年4月にナイスが最も多かった感想・レビュー

きぬりん
個人的には近藤ようこ「極楽ミシン」が卓抜。「足踏みミシンの芸術家」を自負し、毎日気を張った生活を送っていた独居高齢女性が、ミシンの故障と自身の風邪引きが重なったのをきっかけに、急激に生きる気力を奪われていき…。他には、加齢に伴う認知機能の低下と周囲による世話を題材とした、岡野雄一、うらたじゅん、高野文子がやはり胸を打つ。水木しげるや白土三平、楠勝平につげ義春・忠男兄弟、さらには永島慎二や村野守美のように、往年のガロの系譜に連なる人選が多いのも嬉しい。そのすべてが老境に大きな照明を当てているとは言い難いが。
が「ナイス!」と言っています。

2024年4月の感想・レビュー一覧
8

きぬりん
NHKの番組の書籍化。心とは何かという問いをめぐって、爆問と野矢先生が議論を繰り広げるのだが、番組でもこの書籍でも、両者の議論の噛み合わなさばかりが露呈している。その原因は、「〇〇とは何か」という問いに対して何を答えれば答えに近づいたことになるのかという、議論の前提条件からのすれ違いにあるのだろう。番組では何が割愛されたのか(太田の性交の話など)を知れるという興味はあるものの、最終的にかすかな合意点を見出せたかのようなオチや、坐禅体験=哲学でござい風の演出など無理くり感ばかりが目立ち、とにかく残念。
きぬりん
2024/05/03 20:15

強いて言えば、あとがきの野矢先生の感想で、哲学の社会的効用がウィトゲンシュタイン流の治療的哲学観と絡めて語られているところは面白い。「哲学はそういう社会に貢献するプラスの価値を生むんじゃなくて、哲学的に困っちゃう人がいる。[…]言ってみれば、哲学者はなぜ社会に必要かといえば、哲学者みたいな人たちが世の中に結構いるから、その人たちの中で僕らは年季の入った病人として、初心者の病人にアドバイスできるというようなご利益はあるかもしれない」(133-4)。

きぬりん
2024/05/03 20:48

常識的世界に安住していた人が、あるときふと懐疑論に突き当たり、自らの常識的世界の基盤を揺るがされて元通りに立っていられなくなるという病気に陥る。その病気を治すのが哲学であるわけだが、「治った状態が普通の健康状態よりもプラスの価値があるわけじゃない」(133)。つまり、哲学によって健康を回復した人は、ただ元通りの常識的世界への帰還を無事に果たしただけのことである。おそらく番組ではこの哲学観を体感してほしかったのだろうし、なるほどほんの少しだけ触れられてはいるものの、残念ながらすれ違いの中に埋没している印象。

きぬりん
一言で言えばブログのすすめ。PVを稼げるようなブログ記事を書き、そこから多少の収益を生み出すためのノウハウを伝授する。ウェブ上の記事でよく出くわす文章技法がてんこ盛りで、なるほどPVを稼ぐにはかくあるべしと思わされる一方、この種の文章技法には流行がありそうな気も。副題の惹句では稼げる感が醸し出されているものの、まず何より継続が困難であること、たとえ継続できたとしてもブログ一本ではさほど稼げないことが、再三強調されている。参入障壁は低くても、ほとんどは勝手に脱落してくれるからこそのノウハウ伝授だろう。
が「ナイス!」と言っています。
きぬりん
ネタバレまず哲学とは何か、哲学者とはどんな人かから始まり、哲学とは新しい概念を作り出すことだというドゥルーズの定義に到着。そこから、ドゥルーズの習慣論や習慣と思考との関係を経由して、人は考えるのではなく考えさせられるのだという一見して不可解なテーゼの謎解き=習慣こそが思考の母である、が行われる。先に読んでしまったII巻が感動的なまでにスリリングであったのに比べると、こちらはそれほどではない印象だが、鼎談参加者の三人のキャラを活用して分かりやすく、かつ面白く話を転がしているのはII巻同様。TV番組的演出の光る好著。
が「ナイス!」と言っています。
きぬりん
ネタバレまずはユクスキュルの環世界の紹介を通じて、人はみなバラバラの世界を生きているという見方を提示。そこから、人それぞれ、人々は分かり合えないといった主観主義・相対主義へと傾斜することなく、ポジティヴな含意を導出。いわく、環世界は学びを通じて変化可能=われわれは理解し合うことができなくもなく、またそうして環世界を拡げることは、人生の楽しみ方を増やすことにもなりうる。つまり、学びによって人生は楽しくなりうるという点に、学びの意義を見出す。三人の鼎談形式でとても読みやすく、コンパクトながらメッセージも意義深い佳作。
きぬりん
共通テストの英語民間試験・記述式問題の導入をめぐる騒動を皮切りに、標題の問いへと迫る。1章では、英米独仏の入試制度を紹介し、学力一発試験偏重の日本の現状を相対化。2章では公平性概念の多義性・文脈依存性に注意が向けられ(ローマーの運の平等論にも一瞬言及)、受験における公平性の担保の(その概念的・技術的)難しさを確認。その後は、大学の脱エリート化や日本の研究レベルの低下など、標題の問いから見て迂遠な話題が続き、最終章では、標題とさほど密接な関係もなければ、特段の新規性もない著者自身の提言が示されて終了。ふう。
きぬりん
2024/04/21 02:25

関連する歴史的経緯を整理し、データを取りまとめて現状分析を提示するその手際のよさには敬服するものの、本書全体を貫くべき縦糸が途中で切れてしまっているため、3章以降は何のためにそれを読まされているのか皆目検討がつかず、読んでいてけっこうつらかった。

きぬりん
2024/04/21 02:30

刊行年が2021年1月ということで、共通テスト開始直前の上記のゴタゴタや、コロナ禍中に突如現れた9月新学期以降案など、当時ホットであったトピックが紹介されている。賞味期限というものを感じさせられざるを得ない。

きぬりん
前巻と同様、高柳の公民倫理の教えを振りかざす押し付けがましさは希薄となり、むしろ、高柳の与り知らぬ形で勝手に琴線に触れ、勝手に動揺し、最終的には勝手に自分で落とし前をつける生徒たちが続出。好意的に解釈すれば、教育困難校(?)から進学校へと転勤したがゆえの変化かもしれないが、個人的には高柳自身の変化・成長として受け取りたいところ。もしそうでなければ、高柳の過去の学生時代の話をちょいちょい挟む理由が薄れてしまうようにも思うのだが……どうなんかな。テーマ的には、宗教二世・売春・ルッキズムとキャッチー。
きぬりん
個人的には近藤ようこ「極楽ミシン」が卓抜。「足踏みミシンの芸術家」を自負し、毎日気を張った生活を送っていた独居高齢女性が、ミシンの故障と自身の風邪引きが重なったのをきっかけに、急激に生きる気力を奪われていき…。他には、加齢に伴う認知機能の低下と周囲による世話を題材とした、岡野雄一、うらたじゅん、高野文子がやはり胸を打つ。水木しげるや白土三平、楠勝平につげ義春・忠男兄弟、さらには永島慎二や村野守美のように、往年のガロの系譜に連なる人選が多いのも嬉しい。そのすべてが老境に大きな照明を当てているとは言い難いが。
が「ナイス!」と言っています。
きぬりん
若新雄純・水無田気流・小川仁志の三氏による、スタサプ企画の高校生向け「学問のすすめ」。三氏がそれぞれどのような経緯で学問や実践へと誘われたのかを、半自叙伝を軸として説明。ネットの記事のようにサクサクと、1時間程度で読了。アカデミズムの権威やアウラはもはや完全に失われてしまったのだな-20年前ならこの人選にはならないよな-、若者特有の背伸び意識や教養主義的な憧憬はもはや学問への動機付けにはならないのだな-今の若者を捕らえて離さないのは、もっぱら周囲や社会との違和感や馴染めなさなのだな-という感慨を残す。

ユーザーデータ

読書データ

プロフィール

登録日
2020/07/29(1393日経過)
記録初日
2020/07/29(1393日経過)
読んだ本
523冊(1日平均0.38冊)
読んだページ
121628ページ(1日平均87ページ)
感想・レビュー
314件(投稿率60.0%)
本棚
27棚
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