彼の外交の本質は彼自身の発言に最もよく表れていると思う。「イギリスには永遠の同盟国もなければ、永遠の敵対国もない。イギリスの利益こそが永遠であって、不滅なのだ」
ユビヲクワエルナマケモノさんの影響で、キャサリン・メリデール著「クレムリン上下」借りて来てしまった(°▽°)。彼女の著書は「イワンの戦争」が本棚にある。クレムリン上はモスクワ大公国からエカチェリーナ大帝まで。下はその後からプーチンまでのロシア通史。
現代も現代、プーチンまでカバーしているのは面白そうですね! 『イワンの戦争』もなかなかハードな内容で(^-^; 『クリミア戦争』でロシア側に悪名高いパーマストンに興味が出て、ちょっとそちらに寄り道中です(笑)
もう一つはロシアの西欧観と西欧のロシア観。ロシアが見ていた西欧はフランス革命前の西欧であり、「ヨーロッパの憲兵」の役割を誇らしく思っているのに対し、当の西欧は絶対王政の殻を残している国もあるとはいえ、時代は確実に革命後の市民社会へ移行した結果、「ヨーロッパの憲兵」は市民社会の敵であって本質的にロシアとは相容れない。その食い違いが本書で紹介されている西欧での反露感情につながっているのではなかろうか。ちょうど勃興期にあったジャーナリズムの売らんかなの動機だけではあの反露感情の盛り上がりにはならないだろう。→
従来この戦争は、英の海洋政策と露の南下政策の対立という要因に焦点が当てられて説明されてきたが、そうしたパワー・ゲーム的な視点からだけの説明(もちろんそういう視点も必要なのだが)では満足できなかったところへ、地理的にも(クリミアだけでなく、カフカスやバルカン地域の動向の記述も詳しい)背景の説明としても幅の広い本書は非常にありがたい。各国の軍隊の性質の違い等、軍事的な観点からの記述も興味深い。当時は仏軍の方が英軍よりも先進的だったとは。
「そのときの彼が見せる強情さは、彼が重大な決意を下すために乗り越えなければならなかった心の葛藤から、直接に引き出されているかのようだった。彼の力は、弱さから生まれ、彼の最終的な決断は、それに先立つ逡巡の結果なのである」。彼が直接手を下したわけでないにせよ、父帝パーヴェルの暗殺により即位した経緯に生涯苦悩した人間的な弱さの一方、エカテリーナ二世に授けられた帝王学、それが「強い魂と弱い性格」の何とも不可思議な人物を作り上げたのだろう。私は邦訳されているトロワイヤのツァーリ伝で本書が一番好きだ。
読書は専ら会社への行き帰りの通勤電車の中。読むのは好きですが、じっと座って読むのは苦手(笑)。従って遅読です。せいぜい月に5、6冊読めるかどうかといった塩梅。
主に世界史関係の本を中心に読みますが、気分次第で特定の時代やテーマ、著者の作品を集中的に連続で読むことがあります。
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彼の外交の本質は彼自身の発言に最もよく表れていると思う。「イギリスには永遠の同盟国もなければ、永遠の敵対国もない。イギリスの利益こそが永遠であって、不滅なのだ」