こういった作家が会社員時代を回顧するエッセイは、馴染めない自分の方に問題があるんだとコンプレックスを抱いていたり批判するにしても恨みがましくならないようにするものだが、倉阪にそんな遠慮は皆無。自分はおかしい、しかしあいつらもおかしいという一貫した態度で毒を吐き散らすのがなんとも爽快。非難があまりに苛烈すぎると思う部分はあるが、それでも一会社員として勤務先の空気に辟易させられることのある身としては大いに頷くものがあった。 著者の会社員生活の凄絶な末路を見るに筆一本で食えるようになれて本当に良かったと思う。
他にも新型コロナを予見したかのような冥王斑のリアリティ、際限のないスケールとイマジネーションの拡がり、時系列を入れ替えることによって生まれる謎と大河小説的な味わいと、長丁場を苦と思わせない筆力・構成力は見事の一言。 終盤の大風呂敷の畳み方がやや性急だったり、いくらでも掘り下げられそうなキャラクターがあっさり流されたりといくばくかの不満はあるが、それらを差し引いてもSF史上に残る傑作という評価は揺らがない。
お気に入りの喫茶店でコーヒー片手に読書をするのが数少ない趣味。 ※レビューはネタバレしていることが多いのでご注意ください。
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他にも新型コロナを予見したかのような冥王斑のリアリティ、際限のないスケールとイマジネーションの拡がり、時系列を入れ替えることによって生まれる謎と大河小説的な味わいと、長丁場を苦と思わせない筆力・構成力は見事の一言。 終盤の大風呂敷の畳み方がやや性急だったり、いくらでも掘り下げられそうなキャラクターがあっさり流されたりといくばくかの不満はあるが、それらを差し引いてもSF史上に残る傑作という評価は揺らがない。